第2話

「ポインセチアのセチア……ですね」

セチアが少しうつむきながら、そう答える。なんて単純な名前なんだ、と言うと怒った。

クリスマスらしくて良い名前じゃないかと言い直すと。「嘘くさいです」と再び怒った。


サンタ服を着た少女、セチアとの出会いから数日が経った。今は一緒に学校へ登校中だ。

「学校というものに行くのは初めてなんです。楽しみです」

家族だけじゃなくて学校も洗脳できるものなのか。魔法とやらの力に恐ろしさを感じる。


「昨日、届いた制服というものを着るのも初めてです。どうですか、似合ってますかね」

クルリと楽しそうに回転するセチアに、似合ってるんじゃないの、と適当な拍手を送る。

処罰の第一段階とやらの『体力低下』が適用されている状態なので、身体が重くだるい。


「処罰は第三段階まであります。頑張ってくださいね」

セチアはニコリと笑った。サンタなんかいねーよ、と言い回っていた過去の自分を恨む。

本気で身体がだるい。なんていうか、風邪をひいた時のようだ。冗談じゃない、クソが。


「体力低下の状態は、あと数日で終わりますから……」

俺のだるそうな様子を見て、なぐさめようとしてるのかセチアが申し訳なさそうに話す。

だったら、すぐにでもこの状態を終わらせてくれよ。だいぶつらいんだよ、そう話すと。


「サンタクロースの命令は絶対なんです。ごめんなさい。あと数日の我慢です」

セチアは両手を合わせながら「サンタの存在を否定した罰は重いんです」と付け足した。

くそ、本当にサンタが存在したとは……。重い身体を引きずるように歩き学校に着いた。


「ではセイヤ。またあとで、です」

一緒に教室に入るものだと思っていたのだが、セチアは一人でどこかへ行ってしまった。

どこへ行ったのか。気になったが、気にしない事にする。セチアはわりと変わっている。


いくら洗脳した、とは言っても初対面の俺の家族に向かっての「ただいま!」に始まり。

一度言われたかったという理由だけで魔法で俺の弟に「お姉ちゃん」と言わせてみたり。

今朝に限っては、一度やってみたかったという事で食パンをくわえたまま家を出たりだ。


セチアの奇行には数日で慣れた。もう何が来ても、さほど驚かない自信がある。さほど。

教室に着いた俺は、特に挨拶を交わすでもなく席についた。友人がいないわけではない。

でも好んで人付き合いをしようとは思わない。昔、軽くいじめられた事も関係している。


苦かった過去を思い出していると、セチアが先生と一緒に教室に入ってきた。

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