メリークリスマス
ノブ
第1話
「セイヤさんですか」
そろそろ雪が降るかもしれない、と思える寒空の午後。唐突に後ろから声をかけられた。
後ろを振り向くと、背の低い少女が立っていた。コスプレなのか。サンタ服を着ている。
クリスマスのバイトだろうか。全く見覚えがない娘だ。なぜ俺の名前を知っているのか。
俺は確かにセイヤだけど、あんたは誰? ぶっきらぼうにそう尋ねると、少女は答えた。
「サンタの存在を否定する人間代表として、あなたを処罰しにきました」
……何て言った? ちょっとよく聞いていなかった。もう一回言ってくれ。そう頼むと。
「サンタの存在を否定する人間代表として、あなたを処罰しにきました」
サンタの存在を否定する人間代表……? 何だそれ。しかしその表情は真剣そのものだ。
ごめん、ちょっと何を言っているかわからない。正直にそう伝える。本気でわからない。
「言ったままの内容です。あなたが今までサンタクロースの存在を否定してきた回数は」
「天界からの処罰を与えられるに値してましたので、私がその役目に任命されたんです」
目はまっすぐ俺を見つめて……いや、にらんでいる。冗談を言っている雰囲気ではない。
確かに俺は「サンタはいないんだ」などと小さな子供たちに言ったことはある。何度も。
しかし何かしらの処罰されるほどのものだろうか。というか天界……? 空を見上げる。
本当に天界……とやらがあるとして、そこから来たのか。証拠はあるのかと尋ねてみる。
見た目はただのクリスマスのバイト娘だ。何かのドッキリかもしれない。信じられない。
「私の事を信じられないのも、無理はありません」
仮に天界というものがあったとして、俺はどんな罰を受けるんだ? そう少女に尋ねる。
「そうですね。例として」
少女は片手を上げた。気のせいか、自分の周りの空気が冷たくなっていく錯覚を覚えた。
いや、錯覚なんかじゃない。どんどん寒くなっていく。身体の熱が奪われていくようだ。
あまりの寒さにガチガチと歯が鳴り始める。寒い寒い。わかったから、もうやめてくれ!
「私の事を信じてくれたでしょうか」
こんな拷問みたいなのを受けるのが処罰なのか、と尋ねると「極端な例です」と答えた。
「処罰と言っても、体力を低下させるとかそんな程度ですよ。心配されないでください」
「これから一か月ほどの間、処罰を与えさせて頂きますので。よろしくお願いしますね」
『セチア』と名乗る目の前の少女は、俺に向かってほほ笑んだ。
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