第20話 寝込みを襲われる(知ってた)
よくある話だ。
森の中で迷った挙句、やっと見つけた家に入るとそこは魔女の家だったなんて。
「で、あなた達はやっぱり悪い魔女だったってわけですか」
「そんな事はないのよ」
布団に入って気持ちよく睡眠をむさぼっていた私の身に案の定その厄災は舞い降りた。
突然ガタンという地響きが起きたかと思うと無理矢理叩き起こされて今ではほらこの通り。身動きの取れない状態で拘束される羽目になってしまった。やっぱりこうなったかー!
「ただちょっと生きるための選択をしているだけ」
「だそうです、レイズ様。ほらね、やっぱり怪しかった」
「……」
「でもどうせ捕まるなら、朝までは眠らせて欲しかったですよねぇ」
「……」
返事が無い。
「レイズ様?」
「……」
死んだか? いや――
「こんな状況でまさか寝てる!?」
「黙れ」
よかった起きてた。お坊ちゃんだからてっきりこういう状況でも寝れる図太い神経でも持っているのかと思った。
それはそうとこの拘束姿、縄でグルグル巻きとか大変に恰好悪いね。煮豚でも作るみたいだ。
この人数じゃ抵抗も出来なかったからなあ。
「いやあまさかご主人がいないとばかり思っていましたが、こんなにいらっしゃるとは」
周囲には彼女の他に人相の悪い男が5~6人取り囲んでいた。いやはや何処に隠れていたのやら。
「あら主人がいないのは本当よ。みんな私のお手伝いさんだもの」
「そりゃあ屈強なお手伝いさんをお雇いで」
こりゃ拘束から抜け出せたとしても敵いそうにないな。
「おい」
「何かしら?」
「俺達は家を追い出された身だ。金目の物なんてない」
うんうん、そうだね。
「その辺は心配いらないわ」
「と言いますと?」
「お金にするのはあなた達の金品じゃない。その体だから」
「なるほど」
屋敷の外の世界はそんなに詳しくなかったけど、やっぱりその手の闇社会も存在していたか。
ん? こっちを見てにこっとしてどうした。
「あなたの方は適当なところに奴隷なりパーツのばら売りなりでお金にするとして」
なんだ、金勘定しただけか。
しかし奴隷はまだしもパーツって。ばら売りって。そんな替えの利く部品みたいな扱い。私こう見えても結構働きますよ? ……たぶん。
「彼の方は」
お、今度はレイズ様か。一体いかほどのお値段になるでしょう。出張なんでも鑑定団さんお願いします。
「そうね、見た目が綺麗だし色々な使い道がありそう。高値で取引出来そうね」
おおお、高評価。さっすが顔だけはいいもんね。それは分かる。
「良かったじゃないですか、レイズ様。人間性はカウントされないらしいですよ」
「ほんとお前、黙れ」
「まあまあ、ばら売りされちゃうかもしれない私なんかに比べたら全然……」
「ルセリナ」
「……ん、はい」
……なんだよ。びっくりしたなあ。
ま、いいけどさ。黙るよ。うん、はい、ルセリナさん黙ります。
あーあ、びっくりした。
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