約束

ありす

第1話 スイミングスクール

-キーンコーンカーンコーン


チャイムの音が鳴る。

「結衣!水泳部の見学行かない?」

「そーしよっ!」

ここ虹ケ丘学園は全国でもトップクラスを誇るほどのスポーツの強豪校で、特に水泳が1.2を争うほどに強い学校だった。

スポーツも強いが、県内でも上位に入るほどの学力の高さもある、まさに文武両道な学校だった。

結衣は勉強が苦手だった。別にこの高校に入るつもりもなかった。

けど、"あの人"に会ったから。全ては"あの人"との約束を果たすため。

これは、私の中学時代を書いた物語。









「よーい…ドンッ」

その声同時に、笛が鳴り、水の中へと飛び込む。

手を回し、足をばたつかせ、顔を水の中に入れては出し、前へ前へと水しぶきをたてながら進んでいく。

冷たい水が身体を取り巻く。ひんやりとしていて気持ちが良い。

(壁が見えた。あと少し…)

指先が壁に触れた。タイムを告げられる。

「前より速くなったけど、進級するにはあと少しか…」

タイムを教えてもらい、友達のとこへと戻る。

「結衣っ!タイムどうだった?進級出来そ?」

「ううん。あと1秒。」

「うわっ。あと少しじゃん。」

そんな会話をしていると、視界に1人の男子が映った。

(月島先輩…)

同じ学校の先輩。結衣とは、1年上で、生徒会長だった。

小学校の時からずっと想いを寄せていた。

いつか先輩に近づきたい思いで同じ西戸中学に入り、生徒会役員となった。

そんな憧れでもある先輩は、同じスイミングスクールに通っていた。

先輩の泳いでる姿が目に入る。

(速い…)

「おーい!ゆいーー!」

「えっ、あっ、み、美空ちゃん、どうしたの?」

「はぁ。ほんと好きだね。月島先輩のこと。同じ生徒会なんだし、いっその事告白すりゃいいじゃん。」

「でも…」




「じゃっ、また明日学校で!」

「うん。バイバイ。」

美空と別れ、歩いて家へ帰る。送り迎えをしてくれると親は言っていたが、毎回送り迎えをしてもらうのも申し訳なく、ひとりで歩いて帰ることにしている。

自転車でもいいのだが、何となく歩きたかった。

「あっ、結衣ちゃん?」

「は、はい?って、月島先輩!?どうしたんですか?」

先輩は普段、友人と帰っているはずだ。(誰だか知らんけど)

「それがね、友達が風邪引いて休んでるんだ。」

「そうなんですか…早く治るといいですね。」

「結衣ちゃんは優しいね。」

「そ、そんなことないですよ。」

先輩が微笑みかけてくれた。

なんだか恥ずかしかった。




女の子が一人で帰るのは危ないからと家に帰るまで先輩は着いてきてくれた。

「月島先輩、ありがとうございました。」

「いえいえ。あっ、あと苗字じゃなくて名前呼びでいいよ。じゃバイバイ!」

(えっ、名前呼び?確か先輩の名前は"晴人")



「ただいまー」

ダッダッダッと走ってくる音が聞こえる。

「おねーちゃんおかえり!」

9歳差の妹、紗希だ。

まだ5歳で、とても可愛い。最近は私のとこによく来るのだ。

キッチンからいい匂いがする。夕飯はカレーのようだ。

「おかえり。夜ご飯できるから手洗いしておいで。」

「うん。」




夕飯を食べ終え、お風呂にも入り歯磨きもし、やることなどを終わらせ、布団にダイブした。

-ピロンッ

MAIN [←某SNSのパロディだからねby.ありす] の通知だ。月島…いや、晴人先輩からだ。

『晴人です。今日はありがとう!お話楽しかったよ(*´ω`*)』

『いえいえ、こちらこそ楽しかったです!』

返信をして、画面を消す。

明日は生徒会の集まりがある。もしかしたら、晴人先輩とまた話すことができるかもしれないという、希望を少し持ちながら、目を閉じた。

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約束 ありす @Alice_yuan

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