35
反射的にイジバは懐に手を突っ込み、回転式拳銃を引き抜きエナハに突きつける。残りの6人も銃口を彼女に向ける。
が、エナハも気づけばその手に長大な得物を手にしていた。
『アラソン・ベイリー銃』80年もの前に製造され配備された元込め単発式の歩兵銃。
鋼鉄製の大口径な銃口を持つ銃身はよく磨かれ黒く底光りし、機械油や人脂、血液、体液がしみ込んだ木製の銃床は艶めかしく艶やかに輝き、装着された鉄杭状の銃剣は、店の小さな舷窓から差し込む陽光で鋭く輝く。
一瞬、たじろいだイジバらだったが、彼女の武器が旧式銃と見るや鼻で笑い。
「おいおい、奥さん、そんな自分所の商品みたいな骨董品で俺たちを追っ払えると思ってんのか、可愛いねぇ、おれ好きに・・・・・・」
一番大柄な組員がそこまで言うと、鼓膜を強かに打ち据える銃声と共に後方に向かって吹っ飛んで行った。
なにが起こったか半ば理解した別の組員があららめて狙いを定めるが、すでにそこにエナハの姿は無く、カウンターを飛び越え排莢を済ませ次弾を装填している。
その手には指の股にもう次の弾が3発挟まれていた。
2発目が放たれ、エナハに狙いを付けていた組員の頭部に命中する。
31グラムの鉛玉は完全に頭蓋骨を粉砕し、中身を辺りにぶちまける。
生き残った組員は一斉にエナハめがけ発砲するが、突然の攻撃に動揺しきり放たれた弾丸はどれも的を捉えることはない。
その間にもエナハは淡々と排莢と装填を繰り返し、次々と組員を打ち倒す。そして放たれた弾丸は胸や腹、脳天と確実に命を奪える部位に命中する。
銃弾が切れると、彼女は眼を炯炯と輝かせ銃剣を突き立て突進、長ドスを引き抜き立ち向かった組員の鳩尾を貫き、長く美しい脚をスリットから覗かせると、胸板を蹴り上げ銃剣を引き抜き、倒れ込む前に銃床を相手の鼻面に叩き込み鼻骨を粉砕する。
連れて来た手下を全滅させられたイジバは、震える手で回転式拳銃を握りしめ、エナハを狙うが、彼女は居に会することなく豊かな胸の谷間に差し込んだ銃弾を取り出すとアラソン・ベイリー銃の薬室に装填し。彼の顔面に狙いをつける。銃剣の切っ先から、倒された手下の血が滴り純白のシルクのシャツの胸元を汚した。
「お仲間はみんな居なくなりましたわよ?さぁ、お帰りなさい。ああ、お店のお掃除はこちらでしておきますので心配なさらないで、なにせ散らかしたのは私ですものね」
ホホと笑う彼女の姿に、今まで味わったことのない戦慄を覚えたイジバ。
手下の血や脳味噌、肉片で足を取られつつ彼女の前から逃げ出そうと振り返り駆け出すが。
飛び出そうとしていた扉の前には飛行帽を被り、革のフライトジャケットを身に着けた若い女の姿。
彼女の背後には西方人種の男や目つきの悪いハン人、浅黒い肌のカモシカ角の女もいた。思わず足を止める。
飛行帽の女は店内の惨状を見渡した後、アラソン・ベイリー銃を抱ええるエナハに向かって。
「お母様、これは・・・・・・。」
「あなたのお知り合いって方々がお見えに成られたのだけれど、あまりも無礼な態度をお取りに成られたものですから、仕方なくお相手しました。オトゥナー様から事前にご連絡を頂戴してたからお出迎えする支度をできましましたけど、いきなりでしたらリシニちゃんや他のお店の人にも迷惑が掛かっていました所でしたわ。交友範囲を広げるのは結構だけれども、お相手はよくよく吟味なさい、アゲハ」
イジバが銃を構え、アゲハに向かって引き金を引くその刹那。彼女は両の目に鉛色の昏い輝きを灯すと、股丈の長靴のつま先を彼の股間めがけて叩き込む。
激痛のあまり息が止まり股間を抑え前かがみに成ったところをしゃくりあげる様な拳で鼻っ柱を一撃。
今度は仰向けに成り失神したままイジバは手下の血で濡れそぼった床の上に転がることに成った。
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