雫
最近、お兄ちゃんの様子がおかしい。いや、元々おかしかったが更におかしくなった。
またアイツのせいか…と日向の顔を思い浮かべた。そういえばアイツ最近来てないな。
そんな事はどうでもいい。そういえば今日珍しい事に私の制服を借りたいとお兄ちゃんが言ってきたのだ。ついにシスコンに目覚めたの!と思い嬉しくて思わず抱きついた。
「…えっと…なんで抱きついてんだお前?」
「お兄ちゃん遂にシスコンに目覚めたんでしょ?だから両思いになった記念に抱きついたの!」
「何言ってんだよ…いいか?勘違いするなよ?俺はお前のことなんか眼中にねぇ。いや兄妹だから当たり前だけどお前には通用しなさそうだったから一応言っておく。あとこれ俺が着る用じゃないから」
「えっ…それ誰に貸すの…?」
「ややこしくなりそうだから言わねぇ。あ、そうだ。これ、制服貸してもらう礼だ。先払いしとくから文句はねぇよな」
「う…うん…」
と私はお兄ちゃんに押し切られた。
なんだかちょっと嫌だったが、お兄ちゃんが言ってきたので拒否するわけにはいかない。
私は替えの制服を出しながら考えていた。
私の中学校の女子制服と、お兄ちゃんの高校の女子制服は、少し違うが似ている。セーターを着れば全くバレる可能性はないと思う。
だが今は9月、まだまだ残暑の残る季節である。流石に暑いのでは?と思ったが、お兄ちゃん以外の人は正直どうでもいいので考えるのをやめる事にした。
15時、私は帰宅した。お兄ちゃんはまだ帰っていないようだ。
家にいるのは母のみだと思う。
思えば私の家は少し、いやとても変だ。
お兄ちゃんは女装趣味だし、私はブラコンだし、母は盗撮をよくしているらしい。母に至っては本当に犯罪である。いつか捕まりそうだから何度も止めたが全くやめようとしなかった。父に関してはこれといって変な性癖ないであろう。少なくとも私は知らない。一家で1番まともだと思う。
17時
お兄ちゃんが帰ってきたのだろう。扉が開く音が聞こえた。私は本を読んでいたので、降りて行く気にはならなかった。
すると、母に呼ばれた。(制服を貸した子が来たのかな?)と思いながら降りていった。
…兄の隣にとても可愛い子がいた。女の私でも惚れてしまいそうな、この子は美人というより美少女の方が正しい気がする。なんて考えていたら母が
「ひなくんよ!」と言うので私は驚いた。日向は男だった筈だ。いや、少なくとも私が今まで見てきた日向は男の子だった。数多のお兄ちゃんからの求愛も避け続け、女装も拒んだような日向が女装?!いや、そんな筈はない。そう言えば昨日お兄ちゃんと両親が女体化云々話していた気がする。もしかしてコイツが…
女体化したやつなの?!
なんでよりにもよってコイツが…私は舌打ちをした。なんでコイツはいつも私の邪魔をしてくるのだろう。
私はまたアイツと口喧嘩をしてしまった。
アイツが家に来るといつもしてしまう自分に飽き飽きしている。私はアイツに対して嫉妬しているのだろう。好意なんて一切ない。私はお兄ちゃんがいればいい。本当にそう思っている。私は自分の部屋は戻った
「そういえば制服…ま、あとでお兄ちゃんが持ってくるしいっか」と独り言を言いながら読書を再開した。
読書をしていると悲鳴が聞こえてきた。またお兄ちゃんが何かやったのだろう。何故か最近お兄ちゃんにもうんざりするようになってきてしまった気がする。まず女装して学校行くってどう言うことなの?そこから意味が分からない。それで許している学校も意味が分からないけど。それと日向の事。お兄ちゃんはなんで同性が好きなんだ?私も大概だけど私より酷い。最近、私は気づいたことがある。もう昔のカッコいいお兄ちゃんはいないんだなって。私ももう14歳だし、そろそろお兄ちゃん離れかな?いや多分他に比べたら遅いけど。
日向が帰って数分後、
今の私はもうブラコンではない。
もう無理だこの家族。兄は母と協力して日向の着替えを盗撮していたのだ。
しかも次は失敗しないとか言ってるし。
一応私は警告した。だが聞かなかった。私は日向に初めて同情した。そして初めて…
「本っ当最低ね!アンタたちは!」と兄と母に言った。紛れもない本心だった。兄と母は驚いた顔をしていた。私はすぐ自分の部屋へ戻った。
もう私はブラコンではない。自己暗示とかじゃなく、本当にだ。何故私は今まで気づかなかったのだろう。最低な兄であることに。
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