第31話
「に、似合ってますか…ね?」
「いい!すっごくいい!」
…いつも勉強を頑張っているからと、突然髪飾りをプレゼントしてくれたフォルツァ。藍色の、小さな蝶々をモチーフにしているそれは、私には宝石のようにさえ見えた。
「…」
「…」
ど、どうするのこの空気!!二人とも顔が赤くなってしまって、黙り込んでしまう。たがいに視線をちらっと合わせては…そらすの繰り返し。私がなんとか話題を変えようとした時、突然レブルさんがフォルツァの部屋に押しかけてきた。
「おい二人とも、まずいことになった!!!」
その迫真の表情から、ただ事ではないという事を私たち二人は瞬時に察する。
「どうした?何があった?」
さっきまでの表情から一転、フォルツァは非常に冷静に言葉を返す。
「マリアチ皇室長が緊急の皇室会議を開くことが決まって、お前たちもお呼びだ。…その議題は…」
私たちは固唾をのんで、レブルの言葉を待つ。
「次期皇帝の妃候補、に関する議題…!」
「!?」
驚愕する私とは対照的に、あくまで冷静なフォルツァ。
「ついに仕掛けてきたか。マリアチの性格からして、僕たちの関係をすんなり認めてくれるとは思っていなかったが…」
マリアチ皇室長は確か、前に隣国のメキサ連邦が帝国に侵攻してきたとき、攻撃するか防戦するかでフォルツァと対立した人…間違いなくフォルツァの事を、快くは思っていないであろう人…
「で、でも会議なら、私たちは堂々としていればいいんじゃ…」
私の言葉に理解を示しつつも、少しだけくぎを刺すフォルツァ。
「…確かに会議という名目ではあるものの、その実態はおそらく僕たちの関係に難儀をつけるものだろう…それで、会議はいつだ?」
間髪を入れず、レブルさんが返答する。
「3日後だ」
「そ、そんな…3日後って…」
「…準備をするには、短すぎるな…」
皇室長のそのあまりにも用意周到な奇襲攻撃に、一瞬言葉を失う私たち。しかしこんな状況にあっても、フォルツァは冷静に行動した。
「レブル、急ぎ馬を用意してくれ。時間がない、それとこれから3日間の間、屋敷内での僕の商談や会議は、すべて先延ばしにするよう手配を頼む」
「承知した」
レブルさんは急ぎこの場を後にする。彼はきっとこれらの指示を事前に予想していたのだろう。外にはすでに馬の姿が見えるし、部下たちへの指示もスムーズだ。
…こんな時、私は自身の無力さを痛感する。
「フォ、フォルツァ…私は、何をすればいいかな…」
そんなこともわからないのか!…と怒られることを覚悟した質問だったけれど、その予想とは一転、フォルツァは笑みを浮かべながら私に言葉をかけてくれる。
「そうだね。シンシアには、僕のそばを離れず一緒にいていてほしい。お願いできる?」
フォルツァの言葉に力強くうなずき、返事をする。
「おいフォルツァ、馬の準備ができたぞ!」
…あまりにも早い。さすがはレブルさんだ。
「さぁ、行こうシンシア」
「行くって…どこへ?」
「中央貴族にも顔の利く、あの人のところさ!」
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