第13話

「ねぇレブルさん、フォルツァとマリアチさんって、あんまり仲が良くないのかな…?」


 今は、フォルツァは屋敷に不在だ。私はそのタイミングを見計らって、レブルさんに食事会での事を相談してみることにした。


「…」


 レブルさんは腕を組んだまま、黙ってしまっている。…やっぱり、聞くのはまずかったかな…そう考え話題を変えてしまおうとした時、重々しくレブルさんが口を開いた。


「…まぁ、仲が良いかと聞かれれば、仲良しではないな」


 私の疑問に、レブルさんは答えてくれた。彼はそのまま続ける。


「…昔、隣国のメキサ連邦が、突然帝国に攻撃を仕掛けてきたことがあったのは知ってるか?」


「はい、もちろんです」


 それは当時、かなり騒ぎになった出来事だ。隣国のメキサ連邦が、予告もなしに突然、帝国に武力による攻撃を仕掛けてきたのだ。私は一応は貴族の身分であったから、相応の情報は当時も手に入れられた。


「でもあれは確か、メキサ連邦内の一部の好戦派将校達が、独断で勝手にやったものだったんですよね…?」


「ああ、その通りなんだが…」


 それゆえに、連邦が早々に帝国へ謝罪をしてきた事で、死傷者などもなく穏便に終わった事のはずだけれど。


「実はあの時、連邦へ反撃する派と、帝國の守りを固める派に上層部は割れてしまってな。そして攻撃派のトップがマリアチ、防戦派のトップがフォルツァだったんだ」


「そ、そんなことが…」


 全く知らなかった。当時帝國は公に、帝國は連邦を攻撃する意思などないって発表していたのに…


「結果はシンシアも知っての通り、帝國は防戦という選択肢を取った。そしてそれが功を奏して、向こうがすぐに謝罪の言葉を送ってきたことで、事態は収束した。だが…」


 そこから先は聞くまでもないかもしれないけど、私はレブルさんの言葉を待った。


「フォルツァはその功績で、次期皇帝の立場を確かなものとした。しかしマリアチの方は反対に、一気に評判を大きく落とすことになった。皇室長を追われるのも時間の問題だ、なんて声もある」


 隣国が攻めてきたなら、帝國を守るために攻撃の意志を示すことは至極当然のことだ。しかしそれゆえに、結果がこのようになってしまった事が快く受け入れられない、という事なんだろうか…

 考え込む私の顔を見て、レブルさんが補足説明を加える。


「まぁただ、二人が本当にお互いをどう思ってるかなんて事は、周りには分からない。二人とも、絶対そんなことは口にしないだろうしな」


「確かに、そうですよね…」


 神妙な面持ちで話していた私たちのもとに、一人の人物が馬で向かってくる。…私の最愛の人だ。


「ああそれと、この話を俺がしたって事は」


「大丈夫です。私からお聞きしたんですから」


 会話を終えた頃、フォルツァは無事屋敷に到着した。

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