第13話


「──執事たちとは馴染めそう?」


 イェナの部屋、ベッドの上。座って足を組むイェナの隣に促され、言われるがままに腰かける。そして彼から出た言葉が、私を心配するようなものでまた驚かされた。


「はい、ジャムさんはとても優しいですし、ロールさんはフレンドリーな方なので仲良くなれそうです!」

 真っ黒な瞳に見つめられるのも、少しずつ慣れてきた。イェナの目を見ると、何故か逸らせなくて吸い込まれてしまいそうになるけれど、居心地の悪いものではない。


「アンとは会った?」

「いいえ、まだです」


 この世界に来て、思ったことがある。原作でのイメージとは違って、イェナは饒舌だ。作中ではダークなキャラクターだったためもっと寡黙なのかと思っていた。


「うちにはナツを除いて15人の使用人がいるんだけど、その中でも特に優秀な3人の執事が取り仕切ってる。仕事面でも、戦闘面でもね」


 暗殺一家なだけあって、懸賞金目的のハンターや興味本位の侵入者が後を絶たないらしい。そんな人たちも屋敷には絶対に足を踏み入れることはできない。その理由が大きく分けて3つある。

 まずはこの屋敷自体が広い森の中にあるため見つけ出すことが困難であること。森の中に佇む屋敷を見つけ出せたとしても、行く手を阻むのは高く頑丈な門。


 そして──ある程度力がある者が門を突破したとしても、その敷地に許可なく足を踏み入れた瞬間、使用人の容赦ない攻撃が侵入者を襲う。屋敷にたどり着くまでにほとんどの者が命を落としてしまうのだそう。

 つまり、ここの使用人はそれだけ強大な力を持っているということ。そしてそんな彼らの雇い主であるマヴロス家は──どれだけの力を秘めているのだろうか。



「……やっぱり皆さんお強いんですね」

 話を聞きながら改めて思ったことを溢せば、イェナは自慢げな様子もなく当たり前だというようにコクリと頷いた。


「それぞれ役割なんかはあるんですか?」


「うん。ジャムは指導者としては適任なんだ。元暗殺者だから身のこなしも軽い。ロールは子どもっぽいというか、ちょっと馬鹿。でもすばしっこくて戦闘になれば誰よりも冷酷になれる分、一番強いかもね。ちなみに、敷地内に侵入した奴を排除するのはロールの仕事」


 ジャムについては思い当たる節ばかりで深く頷いたが、普段は明るくにこやかなロールの意外な一面に驚く。敵意を向けた相手に対しては残酷なのだというから、彼を敵に回してはいけないと悟った。

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