魔の潜む街を舞台に、シャベルを武器に戦う〝逢魔狩り〟の青年、曽兌カナタの活躍を描いた物語。
少年漫画のようなシンプルさと疾走感が魅力の、異能バトルものの現代ファンタジーです。いやもう、ほんと単純にうまい。なんでしょうこのまとまりの良さ?
すごく単純な話のようでいて(実際お話の筋そのものはシンプル)、でも練りに練られた設定が全体を下支えしており、でもきっと本当は複雑なはずのその設定の、わかりやすく飲み込みやすいことといったら!
見せ方や語り方が巧みで、作中の世界や場面場面の光景を想像するのに、ほとんどエネルギーを使わない。物語を追ううちに勝手に想起されていくそれらが、ものすごく自然でしかも格好いいんです。
例えば主人公のカナタくんの、黒ずくめの服装に制帽に眼帯に風変わりな得物という、それらの設定がでも生き生きと、彼のキャラクターや物語にしっかり根付いている。この感じはもう本文を見てもらわないと伝わらないというか、逆に言うと読めば一発で理解できると思います。いわゆる厨二的な要素に、でもてらいや気取りが一切なく、ただ普通に魅力的なところ。なかなかすごいことですよこれは!?
カナタくんが好きです。ちょっとおバカっぽいというか、シンプルさを求める真っ直ぐな性格の、でもそこに理由のあるところ。主人公のコンセプトがはっきりしていて、それがそのまま物語を形作るかのような、読んでいてとても気持ちのいいお話でした。