フェアズール ~異世界転生したら世界を救う事になりました~

シン

prologue:プロローグ


ハル、って知ってる?━━


そんな言葉を聞いたのは数日前、夏休みを謳歌中の私の家を訪ねた

オタク友達の里美から聞いたある話だった。


ハル「?」


里美「そう、この世界とは次元軸が違って、普通は行けない世界。

   そこにはドラゴンだったり魔法使いだったり、魔王なんかがいるんだって」


正直、異世界なんてばかばかしい。

アニメやゲームの世界じゃないし、童話のお話でもない。


ありえない、と返す私。

里美は話を続けた。


里美「ハルは慎重派だなぁ、

   話を戻して......異世界に行くっていくつかあるみたいなの」


里美「有名なのは事故にあうって事、あとは意識が朦朧としてたり、神社とかで

   神隠しにあう.......とかね?」


私も神社いってみようかなぁ、と里美がつぶやく。

神様もこんな参拝客なんてお断りだろう。


ハル「里美は授業中意識朦朧としてるじゃない、異世界に行っちゃうよ」


里美「あはは......あれは夢の世界に旅立ってるから」


里美のボケは授業開始のチャイムにかき消された。



                   *



ハル「やばっ、遅くなっちゃった」


放課後の委員会活動が長引いてしまい、家に着いた頃には

バイトの時刻が迫っていた。


家からバイト先まではのんびり行っても20分程度で着くため、

急げばなんとか間に合いそうだ。


自転車を一生懸命漕ぎ、バイト先に向かう。

目の前の交差点は赤信号だったが、私の焦る気持ちでルールを破ってしまった。


ハル「あっ」


・・・


気づいた時には既に私の体は宙を舞い、地面に激突した。

車に撥ねられたと気づいたのはその数秒後だった。


重く、頭の奥から響くような痛みが走る。

遠のく意識の中で、私は死ぬのだと悟る。


ハル「ぁ...ぅ......」


声にならない痛みをあげながら、暗い意識の底に私は沈んでいった。



......はずだった。



                   * 



ハル「あれ......ここは......」


見渡すかぎり真っ白な世界が広がっている。

不思議な事に眩しくは感じなかった。


??「目覚めましたか、ハル」


声のする方向に思わず振り返ると、そこには女性が立っていた。

モデルや女優さんのようなきれいな顔立ちをしていて、透き通るような肌からは

まるでこの世の存在ではないような印象を受けた。


ハル「あ、あなたは誰でしょうか、どうして私の名前を......?」


クラリス「私はクラリス。

     あなたにもたらされた「クラリス」の魂の存在です」


一瞬、何を言っているのかが上手く呑み込めなかった。

事故の拍子に頭でも打って気がおかしくなっているのではないかと錯覚する。


クラリス「混乱するのも無理はないでしょう。

     ハル、あなたは転生をしたのです。」


ハル「......転生?」


クラリス「今は時間がありません。行きましょう」


女性がそういったのと同時に、私はとてつもない力で空に開いた穴に

引き込まれていった。


クラリス「ハル。あなたなら、この世界を救ってくれると信じています......」


                   *


こうして、私の異世界生活は幕を開けたのだった。

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フェアズール ~異世界転生したら世界を救う事になりました~ シン @Shint07

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