第13話愉快なメンバーと野外演習
アベルとの決闘から2月が経つと、俺とメイを馬鹿にする奴は少なくなった。
俺は毎朝チャーティー教官長との訓練を行い、メイも弓の腕は言わずもがな。2匹の犬との連携、更には剣の腕も少しずつではあるものの上がってきているからだ。
ちなみに言うと。チャーティー教官長に決闘を申し込んだカールは事情聴取で、アベルから俺を陥れる為に協力をして欲しいと持ちかけられたらしい。
元々、俺とアベルが行った決闘の結果に納得いかなかった事、自分なら勝てる自信があった為アベルに協力したと述べた。
この事についてアベルは「自分は無関係だ」「アイツが勝手にやった事」と反論したらしいが。
カールは裏切りを避ける為、魔術的な契約をアベルに施しており2人の因果関係が認められた、結果としてアベルとカールの2人は冒険者資格の取り消しとフスロからの追放が決まった。
ちなみに、選民思想と自尊心の塊であったカールが何故ここまで素直になったのか?
自分より弱いと考えていたチャーティー教官長に負けた後、再び再戦。と言うより夜襲当然で襲ったらしいが返り討ちにされたらしい。
そして、この事が原因でカールには犯罪奴隷の印がつけられた。それが原因で完全に心が折られたカールは素直に自白したと言う。
この件はそこまで話題にはならなかった。何故ならこの頃になると、正式な冒険者資格の試験が近くなってきている為。訓練場内は独特な緊張感が漂っていたからだ。
5日後には、試験の一環である野外で7日間の遠征が行われる。
この試験では、ランダムで6人1組のクランを組み、7日間生活をすると言うものだ。
この7日間と言う日程、一見すると簡単そうに思えるがそうでもない。
先ず1日目でフスロを出発して生活拠点を選定、野営テントを設営。2日目は生活に必要な物資を確保(食糧、水分、薪などの消耗品)。3〜6日目は教官から定められた物を見つける為に遠征。7日目には夜までにフスロへ帰還しなくてはならない。
ただでさえ慣れない生活を強要され。その上、知らないメンバーと否応にも力を合わせないといけなくなり、様々な状況に対応しなくてはならない。
無理だと判断した時には、狼煙を上げる事で帰還及び救助の為に救出隊を派遣するがそうすると試験に大きく響く。
その為この試験は。仲間との協力、いかにストレスを溜めない様にするか、運と言ったあらゆる要素が必要となってくる。
そしてこの日は俺が組む事となるメンバーのくじ引きが行われる。
そうして決まったメンバーは、俺とメイの2人にナギと言う少女に従者のノアとフランク、ピピンの6人だ。
それぞれの構成を見てみると。
名前 職業 武装
ロベルト 重装戦士兼斥候 剣と長弓
メイ 猟師兼斥候 弓と短剣
ナギ 魔術師 長杖
ノア 軽装剣士 双剣
フランク 重装戦士 短槍と盾
ピピン 重装戦士 斧と槌
バランスが良いのか悪いのか分からない。ただ俺としてはメイと同じメンバーである事と、ナギと言う少女には従者と一緒にと決めていたらしく、そこは運が良かった。
後はピピンがどうなるかだ。
試験が始まると先ずは誰がリーダーを行うかで揉めた。
ナギが「自分が取り仕切る」と言ったのにノアとフランクが賛成したが、俺が反対したからだ。
なぜ反対したのか?それは彼女の考案した編成が今回の遠征に向いてなかったからだ。
彼女は斥候を出さず、前衛に俺とフランクを置き。中衛を自分と従者のノア。後衛にメイとピピンと言う編成を提案した。(荷物は各個で持つとの事)
それに対し俺は、斥候として俺とメイの2人を出し、前衛ノア、中衛ピピン、ナギ、後衛フランクの編成を提案した。荷物は訓練場で荷駄車を貸し出すと言うので、大変だがピピンとフランクの2人で交代しながらの遠征を提案。
この提案にメイとピピンが賛成したので3対3での議論が続いた。
ノアはナギのイエスマンだった為、最後まで賛同しなかったが。フランクの方は中立を保ってくれたおかげで、ナギの説得をしてもらった上で嫌々ながら俺の編成を採用。俺がリーダーをする流れになった。
そうなると次は物資だが、荷物を最低限にするか最大限持っていくかでも揉めた。
必ず持っていく物資として、設営の天幕と備品、円匙や槌などの土木工具。ランプと燃料もしくは薪や食料などの必需品などを詰め込むが。荷駄車も物にもよるが、1番軽い物で大体12ゲム(24Kg)、最大でも20ゲム位(40Kg)程の積載量しかないのだ(無理して乗せようとすれば出来るが)。
物資が少なければ移動の時間は掛からないが、もしもの時に物が無い状況となりある事があり。逆に多ければ物に困る事は少なくなるが移動に時間が掛かり、逃走時にも足手纏いになる。
そう言う事を考えると何を持つか、何を捨てるかなどを考えなければならない。
考えた結果、天幕道具一式に土木道具。軟膏などの薬品類、水割り葡萄酒に干し肉などの乾物。予備の矢や砥石などの手入れ道具など合わせて17ゲム(34Kg)を準備した。
薪は最低限にして現地での調達することにした。
野外遠征当日
「では、改めて各人の自己紹介をしたいと思う。
俺はロベルト。職業は重装戦士そして斥候だ、武器は主に剣と弓を使うが、他にも槍や斧と言った武器も一通りは扱える
リーダーとなったからには必ず皆を演習で脱落させない様に頑張る」
「メイです。職業は猟師ですがギルドには斥候も付けるようにと言われました。武器は主に弓ですが短剣も使えます。そして、私の足下にいる子達は相棒のトルフとフングです
私もロベルトさんと同じクランの為、リーダーのサポートを主にしますが皆さんと無事に生き残りたいと思ってます」
さてここからが肝心だ。他の4人はどう言ったものか。
「ナギよ‼︎職業は魔術師。魔術は1日に2回使えるわ‼︎」
印象としては活発なお嬢様って感じだ。だけどこれで終わりか?コレは補足してもらわないとな。
「ナギさん。1日の使用回数は分かりました。だけど、何の魔術を使えるかも教えてもらえますか?」
「そんなの必要?まぁ良いわ。私の使う魔術はファイヤボルトにファイヤウェーブよ‼︎」
簡潔すぎるが聞けて良かった。攻撃手段が増えるのは良いが、森の中で火の魔術は使い勝手が悪い、森林火災になったら最悪の場合縛り首だな。使い所が肝心になってくる。
「私はノア。畏れ多くもナギさまの従者をしている。武器は双剣だ」
この子もそれだけで終わり⁉︎そう思って質問を投げかけたが「貴様に話すことなど無い」と言われた。
多分、主であるナギの意見に反対した事と、俺がリーダーになった事が許せないんだろう。
「僕はフランク、ノアと同じくナギ様の従者です。武器は短槍と盾です」
こちらも簡潔に自己紹介して終わったよ‼︎
なに?この人たち⁉︎この人たちの国は簡潔に物事を言う事が美徳なの?
「ピピンです、重装戦士をしています。得物は斧と槌になります。1つを両手で扱ったりもしますが、片手で1つを操る持つことも出来ます。
後は飯炊きが得意なので料理については任せて下さい」
最後にピピンだが。彼が1番覚えやすい、と言うのも顔が特徴的だ。
のっぺり、とにかく顔がのっぺりとしているのだ。大きくて潰れた鼻に太い眉そして糸目。俺はそんな特徴的な顔がとても気に入った。
そして彼の紹介で分かった事は力持ちである事だ。腕の太さも俺よりある、背も俺より頭一つ高い(ロベルトの身長は180cm位)。試しに水の入った樽(ここではランスロット180を参考に容量180L、重さ50Kgとなる)を持ってもらったがコレを頭の上まで持ち上げた。
その後メイと相談して彼をクランに誘うか相談し演習を見て決める事にした。
こうして俺たちの初めての野外遠征が始まった。
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