第8話メイは初めてに困惑する

  私は暗黒大陸に向かうためにユノー村から1番近い町であるトリスを経由して港町スクトに向かう事にしました。向かう途中の村で1匹の犬を見つけてその子にはフングと言う名前を付けました。


 町では人が多くにぎわっていて祭りの日なのかと思ったら全く違うようです。

 町を見ていると、今まで私はとても小さな世界で過ごしていたんだなぁと始めて知る事が出来ました。それと同時にそんな世界にたった1人で挑んでいく事に不安を覚えてしまいました。


 それでもお父に別れを告げ、外の世界で自分の力がどこまで通用するか確かめるため村を出たんだ。こんな所で私は絶対に諦めない。


 そう思っているとトルフが私の手を舐めてきました。そんなトルフの目を見ると真っ直ぐ私を見つめまるで(僕も一緒だよ)と言ってくれている様に思えました。

 フングは周りの景色に興味があるのかあちこち見つめたり鼻で嗅いだりしてます。


 そうだ、私は1人じゃない。私には相棒のトルフが居るんだ、狩りだって力を合わせてやって来たんだ、私とトルフなら何だって出来る。それにまだ完璧に懐いて無いけどフングだっている。そう自分に言い聞かせて暗黒大陸行きの船に乗り込みました。






 暗黒大陸に意気揚々と渡ってきたにも関わらず、私は先ず何をすれば良いのか自体が分からず船着場で1人ポツンと立ち尽くしていました。

 困っていると親切な船乗りの人が冒険者ギルドに行って登録する必要がある事と冒険者ギルドへの行き道まで教えてくれました、来て早々に当てもなく彷徨って、夜を路地裏で寝ることを避ける事が出来ました。


 言われた通りに行くとまるでお城の様な建物に到着しました。周りを見ると色々な武器な防具に身を包んだ人たちが往来していてここが目的の冒険者ギルドだと思いました。


 受付の人に仮登録をしてもらってこれでお仕事が出来ると思ってたら。最初は訓練所に行かないといけないらしく、訓練所を卒業して初めて冒険者として扱われるらしいです。


 訓練所に行くと私と同じで荷物を持っている人たちで溢れかえっていました。

 訓練所の受付に登録して待っていると部屋に入る様に言われて、そこで教官の挨拶があり今日は部屋に荷物を入れて顔合わせをして、明日から訓練が始まるらしいです。


 一緒の部屋に住む事になる人は男性が4人で女性は私を含めて2人でした。

 男性はアベルさん、レーニンさん、ロベルトさん、ローランドさん。女性はユリアナさんと言う名前です。

 そしてユリアナさんは魔法が使えるらしいです!とても凄いです。野営の時なんかに簡単に火を点ける事が出来るなんて羨ましいです。


 男の人と一緒に寝るのは村で狩りを行う時には、お父やお兄と一緒の場所で寝てたりしてたからあまり抵抗はありませんでしたが、アベルさんは私とユリアナさんの事を変な目で見てきて少し嫌な気分です。


 例えるなら、弱った獣にトドメを刺さずに嬲っている外道の様な目をしていました。念のためにトルフとフングの2匹を部屋に住まわせ、一緒に寝る事にしました。






 朝になって鐘の音が聞こえると外に集まる様にと言っていて、部屋の人たちも着替えてたのにアベルさんだけがまだ寝てました。他の人は素早く着替えて出ていたけど、流石に起こすべきかなと思って起きる様に言いましたが。


 「アー、悪いけど直ぐ起きるから先に行っていてくれないか?」


 と言ってきたので取り敢えずアベルさんをそのままにして、トルフとフングの2匹を連れて外に行く事にしました。


 外に行くとアベルさん以外の部屋の人たちは集まっていました。

 集まってからしばらく待っていたけどアベルさんが来ません。不安になって部屋に呼びに戻ろうとしたら教官の人に「勝手な行動をするな‼︎」と怒鳴られてしまいそのまま待つ事にしました。


 そうして待っていると、教官の人が何かを見てから。全員が集まった所は先に帰って良いと言ってましたが、私たちの所はアベルさんがまだ来てなくてその場で待つ事になりました。

 しばらく待っていたら扉の方から、ぽつぽつと先程の集合に集まってなかった人たちがやって来ました。しかも、遅れて来た事に対して何にも悪いと思ってないのか?走らずゆっくりと歩いて来ているのがあり得ないと思ったら突然、奇声が上がったかと思ったら教官の人たちが突然私たちを殴ってきました‼︎


 突然の出来事に何も出来ず殴り倒されたりしている中、私を庇おうとトルフとフングは私の前に立って唸り声を上げ教官を威嚇してくれたおかげで殴られずにすみました。

 一通り殴り終えた後に教官が言いました。


 「いきなり殴られてあり得ないと思うだろ?理不尽だろう?だがなぁダンジョンとはそう言った理不尽が当たり前の様におこる場所だぞ⁉︎たった一つの身勝手な行動が仲間を死に追いやる危険な場所だ‼︎

 訓練はもう始まっている。その事をよく理解した上で次から行動を考える事だ」


 そんな風に言われたら私はどう答えるべきか分からないので取り敢えずは従う事にしました。






 その後は朝の食事を済ませて、最初の訓練として講義なる物を受ける事になるらしいです。

 村に居た頃には、人から言葉だけで物事を教わるなんて全くありませんでした。そう言うことは見て覚えるか、実際にやっていって覚えるのが普通だと思ってたから変な気持ちで講義とやらを受けました。


 最初の講義が終わって休憩中、教官の人が言っていた事を紙に書いていると後ろから声をかけられました。


 「メイさん」


 「あひゃあ⁉︎」

 突然の事で変な声を出してしまって。誰なのかと振り向いたら、同じ部屋のロベルトくんが立っていて、どうやら彼が声を掛けたんだと分かりました。


 「ロ、ロベルトくん?一体如何したのですか⁇」


 「あっあぁ、メイさんと少し話したいと思ったんだけど良いかな?」


 わざわざ私とお話ししたいなんて何なんだろう?と思って聞いてみると、お互いの狩りについて話したいって言ってきた。

 そう言った狩りなんかの技術は秘伝とされていて。下手に教えたりしたら、私たちが食べていけなくなったり。独占の為に殺される事が多々あったから絶対に教えてはいけないって教わって来た。


 そう思ってるとロベルトくんは何か、私に都合の良い言い回しをして来てよく言えば私を持ち上げてきてる感じがしました。


 残念だけど昨日会ったばかりで、そこまで親しくないロベルトくんに私の秘伝を教える事は出来ないし、教えるとなるとそれなりの覚悟をしてもらう必要があるからなぁ。

 それが嫌なら私に関わらない様にしてもらうか、最悪は命を貰うしか無いのかなぁ?


 そう思って講義が終わった後に話す約束をしてから、また講義を受ける事にしました。






 講義を終えて軽く食事を済ませて、約束していた通りに談話室に向かうと。私より先にロベルトくんが到着していて扉の前で待っていました。


 「メイさん、来てくれたんだね。談話室の使用許可は貰ったから入ってくれ」


 そう言うと扉に使用中と言う立札をかけて、私とロベルトくんは部屋に入りました。


 部屋に入ってから先ずロベルトくんに伝える事を伝えた。


 「ロベルトくん。休憩時の話しなんだけど、残念だけど私の秘伝を会ったばかりのロベルトくんに教える事は出来ないよ。

 教える事は構わないけど、その時は私と結婚してもらう位の覚悟をしてもらうけどそれでも良いかな?」


 私は嘘をつきたくないから教える事は出来ないと言った。


 「若しくは、このまま何も無かった事にして同じ部屋の人としていくか。無理やりすると言うのなら、私は此処で差し違える覚悟でロベルトくんの命を貰う事になるけどどっちが良い?」


 私の問いに迷うのなら私の中での答えは決めている。命は取らないけど全くの赤の他人として接するつもりだ。

 そう思ってたんだけどロベルトくんは即決で答えて来た。


 「うん。流石にすぐに教えてくれる訳はないかぁ。

 それなら私とクランを設立しませんか?結婚までとは行かなくとも、ギルドで契約書を交わし。一緒に依頼をこなして、無理なら解散を、お互いに教えても良いと思った時にお互いに教えるのは如何ですか?」


 この人は何を言っているのか、それが分からなかった?

 私の提案が無理だから。妥協で言っているだけなのかな?そうだとしたら如何したら良いんだろうか?


 「多分だけど?メイさんが1番懸念しているのは。自分のこれまでの技術が他人に盗まれることが怖いんですよね?

 それなら俺としては冒険者として生きていくのなら、結婚じゃなくてクランを組んだ方がいいと思う。もちろん直ぐには納得できないと思うけどクランを組むのはお互いを知るためにも必要だと思う」


 確かに私の技を盗まれるのは怖い。それに何だかんだ言って、私は此処で私の技がどこまで通用するのかを確かめたくて来たんだ。来て直ぐに身を固めるなんてしたくない。


 それならば私もロベルトくんの技を盗んでやる意気込みで言ってきた提案に乗ろうと思う。

 そうして私とロベルトくんでクランを組む事になった。

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