第7話狩人の娘は新たな決心をする
こんにちは、私の名前はメイ。ユノー村のメイです。
元々はマスタ王国と言う王国の片田舎でお父とお兄、そして私の3人で一緒に狩りをしてお母や弟と妹、そして村を支えていました。
お父は村1番の狩人でした。弓も上手だったんだけど、それ以上に罠を仕掛けた狩りが得意でした。
小さな獲物なら一角兎、大きな獲物だと手長熊なんかを難なく仕留めていました、私にとってのお父は危険な獣や魔物も1人で仕留める事が出来る自慢のお父だったんです。
お兄も私にとって自慢のお兄でした。弓の腕ならお父以上で特製の強弓を使っていました、その腕力から放たれる矢は熊の硬い頭蓋骨を貫いて仕留める怪力と技術を持ち合わせていました。(だけどお兄は真正面から熊とやり合う状況なんて2度とやりたくないって言ってましたけどね)
私もお父みたいに罠を仕掛けることが出来ても、獲物を上手く誘導する事が出来なかったし。お兄の様な怪力で弓が引ける訳でも無かった。だからこそ私は私なりの狩りのやり方を考える事にしました。
そうして見つけた方法が獣の使役した狩りでした。とは言っても私にとって初めての方法だったから試行錯誤の連続でした。
先ず、使役するにあたって適切な獣は何かを考えました?獣の匂いを追いかけるのなら狼や犬?それとも猪が良いのかな?それとももっと別の方法で獣を見つけるべきなのかな?だとしたら空を飛ぶ鳥が良いのかな?
大きな獣を狩った時なんかだと、今の私だと川まで運ぶのに苦労してるから猿も考えるべきなのかな?一体どの獣を使役するべきなのかな?
考えに考えた結果、最初は失敗を覚悟でやってみる事にしました。お父に頼んで村に居候している野犬の子犬を貰いその子を育てていくことにしました。
お父から子犬を貰う時に私に対してこう言ってきました。
「いいか?獣は決して人には懐かない。もし獣が人に従うのなら、それは獣が人を自分の主として付いていくべきだと認めているから襲わないだけだ。
だから、決して自分の弱い所を獣に見せるな。自分の弱さを見せた瞬間、獣は人を主からただの餌と判断し殺しにかかると覚悟して育てていく事だ」
お父がとても怖い言葉を私に投げかけてきました。
もしかしたらお父は私にとって初めての試みである使役を受け入れてはいるけど、それがどんな結果になるのかわからない、だからこそ怖い事を言って失敗はしても最悪の結果にはならない様に言ってくれたのかも。
子犬の世話は色々と大変でした。先ずは狼の群れを観察し、リーダーがどの様に群れを率いているのかを観察から始めました。
そうして観察して得た記録を元に子犬を育てていくことにしました。もちろん失敗もあったりしたけど、何とか子犬との関係を築いて猟犬として使役する事ができる様になりました。
その記録を詳しく記していく事が後の冒険者活動に活用する事が出来たなんて夢にも思っていませんでしたけどね。
使役を初めて一年が経った頃には狩りに連れて行くことになりましたが、最初の頃はお互いに足を引っ張りあってしまったりしたけれど、そこから半年経つ頃には力を合わせれば何とか鹿を狩ることができる様になりました。
ちなみに、お父から貰った子犬にはトルフと言う名前をつけてあげました。
トルフとはマスタ王国の言葉で『喧しい声』と言う意味です。
どうしてそんな名前かと言うと、育て始めた時に昼夜問わずよく遠吠えなんかを繰り返して村の人たちから『うるさい』と家に苦情がありそこからこの名前になりました。
今では躾をして、狩りの時以外は大きな声はしないけど最初の遠吠えから村の人たちからは未だに他の野犬が吠えた声をトルフがうるさく吠えてると言われます。
最初の頃はその事を聞くたび、文句を言ってきた人たちを殴ってやろうかと思っていました。
家族は吠えているのはトルフで無い事を分かってくれてはいる、お父とお兄に関してはトルフを庇ってくれていたがお母はトルフを鬱陶しく思っているのか私に対し少し小言を言う様になってきた。
その頃になると私はこれ以上お父やお兄はともかく、お母や弟たちに迷惑をかけたくないからと村を出ようかと考えていた。
その事をお父とお兄に相談した結果、もう少しだけ様子を見るか、それとも村長にも相談してから判断しようとお父が決めて私はそれに従う事にした。
ちなみに言うとその村長はトルフを見かける度に石を投げつけるほどトルフのことを嫌っており。
お父から私がトルフと一緒に村を出るかもしれないと相談した所、口では悲しんでる風に言っていたもののその目は全く笑っておらず、村長は私に対してさっさと居なくなってくれと言ってる様なものだとお父は感じたらしい。
お父の考えではこれから村で何か問題が起きる度、その矛先を私とトルフの所為にするだろう。と言っていた。
その事を聞いた私はもう村に居られないと思ってしまった。だからお父に言って早々に村を出ると答えた。お父もその事に賛成してくれて必要な物を準備するのを手伝ってくれると言ってくれた。
だけど私はこんな形で村を出るだなんて思ってもいなかった。
お父やお兄にもっと認められたくて、私は村の皆んなが幸せに過ごせるように頑張ってきたのに。そんな努力が逆にお父たちに迷惑をかけるだなんて思わなかった。
それからの私はできる限り早く村から出るため、せっせと準備をしていく事にした。
最初は近くの町で何かしらの仕事を見つけようかと思ったのだけど、お父がそれ考えに反対した。
お父の考えだと、近くの町だと村長の手が届く可能性があると考えていてそれならば王都に行くか暗黒大陸に行くのが望ましいと言っていた。
王都は分かるけど暗黒大陸?私は暗黒大陸と言う言葉が分からずにいた。
お父曰く暗黒大陸は30年前に見つかった大陸であり、そこでは色んな国が人を集めていて。男であれ女であれ何かしらの仕事が見つかるし、力があれば今みたいに狩人としてもやっていけると思うし、海を挟んだ国であればいくら村長でも手を出すことが出来ないと考えているらしい。
私は最初は村の近くでと思ったけど村長が何かしてくると言う言葉に否定する事が出来なかった。それに私は私とトルフの力を確かめたいと言う願望があった。
私の狩りがどこまで通用するのか?通用しなかったとして、それに対してどうやったら通用出来る様になるか、そんな事を考えると何か分からないけど胸の奥でゾワゾワする感覚がありました。
私は二つ返事で暗黒大陸に行く事を決めました。
お父の話を聞いてから私は家族に、もしかしたらもう帰って来ないかもと告げ、準備していた荷物を纏めて村から出る事にした。
と言っても私の荷物は弓などの狩猟道具以外だと宿営品と鍋などの日用品や、トルフの服と餌だけだからそこまで準備に時間はかけなかった。
こうして17年、家族と過ごしてきた村と別れる事となり、一から私の力を試すため暗黒大陸へと向かう事にしました。
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