3
「こんにちはー」
「どうしてぇぇぇ!! 五万も注ぎ込んだのにぃぃぃ!! 推しが来ないぃぃぃ!!」
……ご覧の通り、米倉はスマホのアプリゲームに熱中しており、好きなキャラを引くためには高額の課金をもいとわない。しかし、別に引きが良いというわけでもないので、こうやってのたうち回っていることが多い。
「まあまあ、元気出してよー」
米倉の横で慰めの言葉を掛けているのは、彼女と同い年の八条だ。典型的な大和撫子で、今日も上品なワンピースに身を包んでいる。……が、何故かやたらと鼻水をかんでいる。
「八条先輩、風邪ですか?」
見かねた
「それがね、花粉症っぽいのよ。昨日まで何ともなかったのに」
そう言いながら、彼女は懐から何かを取り出した。じっと見てみると、それは木の枝。緑の葉も、小さい花も、そのままそっくりついている。
「……何ですか、それ?」
「日光杉並木の枝よ。今が旬なの」
……意味不明だが、これは彼女の趣味だ。何故か栃木県への愛が強い彼女。だが強すぎるがゆえに、頻繁に謎行動を起こしている。ちなみに、彼女の地元は埼玉県だ。「今が旬……って、花粉出てるじゃないですか!! 絶対原因それでしょう!!」
木の枝から零れる、モヤモヤとした白い気配。恐れるべき、花粉症の敵だ。
「とにかく、先輩方!! 部長が呼んでいるので、早く着替えてください!! あと、その枝は捨ててください!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます