2
言語学の授業を終えた
大学の隅にある、年季の入った弓道場。
きれいな黒髪を後ろで一つに結び、黒い袴を着た大井。その姿は、まさに弓道女子といった感じで実に凛々しい。彼女はしっかりと会を取り、そして矢を放った。
――中り。真っ直ぐな軌道を描いたその矢は、星的のど真ん中に命中した。
大井の実力はかなりのもので、鷺宮が入部したときに聞いた話だと、弓道の個人大会で何回も優勝したことがあるらしい。鷺宮は大学から弓道を始めた初心者なので、いまいち実感が湧かないのだが、それでも彼女がすごいということはよく分かっている。
「決まったな…」
大井はそう言うと、静かに弓倒しをした。その姿も、様になっていて美しい……のだが。
「私のシャイニングアロー!!」
……困ったことに、これが彼女の癖なのだ。自分の射にいちいち必殺技をつけ、それを恥じらいもなく口に出す。
これを初めて聞いたとき、鷺宮は本当に驚いた。「行き遅れの厨二病か?」とさえ思ったほどだ。が、練習の際には決まってやるルーティーンなので、流石にもう慣れた。
「うーむ……。アトミックブラストの方が良かったか……?」
「いや、それは物騒すぎませんか?」
大井のつぶやきに、
「おっ、
「こんにちは、部長。ちょうど良かったって、どういうことですか?」
「
そう言うと、彼女は後ろのドアを指差した。すりガラスの向こう側で、影が二つ動いている。
「あー……。これは、いつものパターンですか……?」
「おそらくな。すまないが、頼んだぞ」
大井は
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます