虫取り大会~甲虫編~

 「ただいまから、虫取り大会を始めるのじゃ!」

ダイナモジャングルに集められたヒビキたちは、カメじいの説明を聞く。

「今回のテーマは、甲虫こうちゅうなのじゃ!制限時間内にどれだけつかまえたのかを競うのじゃ!」

こうして、虫取り大会が始まった。

「甲虫は、木のみきに止まっている」

「そっと…」

ヒビキとチララは虫取りあみを構えて、

「ちゅぴ!」

「オオクワガタを捕まえた!」

「オオクワガタは、飼育下しいくかでの繁殖法はんしょくほうが確立されているが、乱獲らんかく丘陵地きゅうりょうちの開発や森林しんりん伐採ばっさいなどで野生個体の生息が危ぶまれており、二〇〇七年には準絶滅じゅんぜつめつ危惧きぐしゅから絶滅危惧II類に引き上げられた。体長は、野外ではオス五十ミリメートル、メス三十ミリメートル程度である。二〇一九年現在、飼育個体ではオス九十二ミリメートル、メス六十ミリメートルの記録がある。野生下における最大個体の記録は山梨県やまなしけん北巨摩郡きたこまぐん須玉町すたまちょう田平だひらで一九八一年七月二十五日に採集した七十六ミリメートルの♂成虫で、昆虫こんちゅう飼育しいく採集さいしゅう用品ようひんはんばい昆虫こんちゅう関連かんれん書籍しょせき雑誌ざっし販売はんばい手掛てがける会社が確認した二〇一九年十一月時点における飼育下の最大個体は、二〇一九年十一月に発表された九十一ミリメートルの♂成虫である。オスは大きな内歯一対と、先端せんたん部分ぶぶんに小歯を一対備えた太く内側に湾入わんにゅうした大顎おおあごを持つ。体色は全身黒色だが上翅うえはね黒褐色こっかしょくを帯びることがある。オスの小型個体やメスの鞘翅さやはね上面うわつらには明瞭めいりょうな点刻列がある。えん突起とっきは眼をふちどり後方でわずかに切れている。オスの小型個体では大顎おおあご先端せんたんの小歯は消失するが、中央の内歯は かなり小型の個体でも見られこの種群の特徴となっている。内歯の位置は体長によって変化し、大型個体から順に、第一内歯が大顎の中央部分から前方に向かって生える大歯型、第一内歯が大顎の中央部分から ほぼ直角に内側に向いて生える中歯型、第一内歯が大顎の基部に生える小歯型という個体変異へんいがあるが、他のクワガタムシと比べ変異は連続的であるため、ちがいは目立たない。生息域は局所的で移動が少ないため生息地による遺伝的形質に変異が生ずる。それらの中で特徴的な多産地の形質が愛好家あいこうかの間で優良ゆうりょう血統けっとうととらえられ研究の対象となっている。日本産オオクワガタの成虫は、ゴールデンウイークから梅雨明つゆあけ頃に活動を始め、ほとんど夜行性で、昼間はクヌギ・アベマキ・ナラ類・カシ類・ニレ類・ヤナギ類などの樹液が出る大木の樹洞などに隠れている。性質は臆病おくびょうで、危険を感じると、すぐにほらに隠れる。飛ぶことも滅多になく、住処を変える際か灯火に引き寄せられる場合を除いて限定的なものと推測されている。どうを縄張りとしたオスの元にメスが次々と訪れる生活を夏季に送り、交尾の後、受精したメスは大木の立ちれなどに飛来し、産座を築いたり、トンネルをって、その内壁ないへき産卵さんらんする。産卵中のメスは肉食傾向にくしょくけいこうが強くなり、他の昆虫を捕食したり、また同種の死骸しがいを食べることもある。飼育下で、他種の幼虫ようちゅうさなぎなどを与えると捕食することが知られている。九月末から十月くらいになると、成虫は越冬えっとう態勢たいせいに入り、翌年の五月頃まで活動休止する。野生個体の生活環は生息域で異なる。甲信越こうしんえつや関東では、二年一化一越年で、孵化ふかから三年目の初夏に活動を開始し、成虫は繁殖活動後かつどうごも越冬を繰り返す。非常にタフなことで知られており、飼育下で五年生きる個体もめずらしくない。幼虫はかための白色はくしょく腐朽材ふきゅうざいに見られ、ニクウスバタケ・カワラタケがついたクヌギ・エノキ・カシ類のかたい大木やち木の地上部に多い。コクワガタとの間に、俗にオオコクワガタと呼ばれる雑種ざっしゅができることが知られており、自然下でもごくまれに採集される。人工飼育で作出することもできるが、幼虫での死亡率が非常に高く、性別が極端にオスにかたよる。オオコクワガタは、主にオオクワガタ♀と、コクワガタ♂が交配して生まれ、逆の場合もある。大きさと形はオオクワガタに近いが、やや細身で脚部きゃくぶとうがコクワガタに似るという特徴がある」

と、オオクワガタを捕まえた。

「僕も!」

「負けたくないよ!」

ケンタとナツは、

「カブトムシだ!」

「カブトムシは、大型の甲虫で成虫は夏に発生し、とりわけ子供達の人気の的となる。和名の由来は、頭部によく発達した大きな角を持つため、日本のかぶとのように見えることによる。昆虫こんちゅうの王様とも呼ばれ、クワガタムシと並び人気の高い昆虫である。体長はオス四十センチメートル、メス四十センチメートルほどである。かつては日本最大の甲虫とされていたが、一九八三年に沖縄おきなわ本島ほんとうでヤンバルテナガコガネが発見され、その座をゆずった。オスの頭部には大きな角があり、胸部にも小さな角がある。この角は外骨格がいこっかくの一部が発達したもので、餌場やメスのうばい合いの際に使用されるが、角の大きさには個体差があり、体格に比例して連続変化を示す。角は長いほどオス同士の闘争とうそうの際に有利になる反面、タヌキやハシブトガラスといった天敵に捕食されるのをけるには短い方が有利であることが研究で明らかになっている。角の大きさは、幼虫時の栄養えいよう状態じょうたい優劣ゆうれつと、遺伝で決定される。クワガタムシの一部の種のような非連続変異やコーカサスオオカブトのような体格に比例しない長短変異は示さない。カブトムシはおもに広葉樹こうようじゅ樹幹じゅかんすい直面ちょくめんで活動し、付節先端のつめが樹皮上での占位に使用される。闘争に際しては、専ら相手をテコの原理で樹皮からがして投げ飛ばす戦法を用い、執拗しつよう追跡ついせきや殺傷を行わない。対照的に東南アジアのコーカサスオオカブトや南米のヘラクレスオオカブト等は、比較的ひかくてき水平すいへいに伸びた太枝や大型草本上で活動し、コーカサスオオカブトは闘争においてしばしば他昆虫や交尾を拒否きょひしためすを殺害する。カブトムシの勝敗決定は飼育環境下でも明解である。なお温和なカブトムシの種でもせまい飼育ケース内でのオス同士の格闘では前胸部と中胸部の間に角をこじ入れられ、一瞬いっしゅんにして切断されてしまうことがあるので注意が必要である」

と、カブトムシを捕まえた。

「これは…」

「ミヤマクワガタ!」

「ミヤマクワガタは、普通種で、いかにもクワガタムシらしい風貌から、ノコギリクワガタとともに古来からクワガタムシの代表として親しまれてきた。南西なんせい諸島しょとうや一部の離島を除く、ほぼ日本全土に分布し、旧環境庁で指標昆虫に指定されている。オスの体長は五十ミリメートル、飼育下七十八ミリメートルで、メスの体長は三十五ミリメートルである。野外における最大個体は大阪府おおさかふみょう見山けんざんにて採集された七十八ミリメートルの♂成虫である。なお、同名の植物にゴマノハグサ科ルリトラノオ属のミヤマクワガタがある。頭部に冠状かんじょう突起とっき・耳状突起を有する。これはミヤマクワガタの最大の特徴である。これは小型個体では目立たないが、大型個体では発達する。耳状突起は大アゴを閉じる筋肉の付着面を限られた頭部の中で広げるのに役立っている。繁殖飼育方法の知見を初めて発表した学者によると、頭部のサイズと耳状突起は、幼虫期の頭部の幅の影響を受け、前蛹ぜんようの時に寒冷な気候で過ごしたオスほど大きくなる傾向が見られる。オスでは体表には細かい毛が生えており、金色から褐色かっしょくに見えるが、微毛は身体がきり降雨こうう湿しめると黒くなり、木の幹に擬態した保護色の効果と、熱線吸収率を調整するのに役立っている。老齢ろうれい個体こたいはしばしばこれらのが脱落し失われている。頭の突起はオスにある。オスもメスも脚で踏ん張る力も強く、樹皮や人の身体にしがみついた時には、脚の爪部分から少しずつ離していかないと引き剥がせない程である。メスは背側から見るとツヤのある黒色で他のクワガタムシのメスと似ているが、腹側にはオスと同じく微毛を備え、学名の元になった長楕円ちょうだえん黄色きいろもんももぶしに部分持つため、他種のメスと簡単に見分けることができる。メスの大顎は他のクワガタムシのメスに比べ、アゴが太くて厳つく、ニッパーのような形となっており、はさまれると大変痛く、これで樹皮に傷を付けて、樹液の出を良くしたり、身を守ったりする。オスの大アゴには、エゾ型・ヤマ型・サト型と言う三つの型がある。それぞれの型は大アゴの第一内歯と第三内歯の長さと、大型個体では先端の二叉の大きさで見分ける事ができるが中間型も見られる。三つの型は、野生ではおおむね標高と緯度でみ分けており、標高千メートル前後の山地や北海道ではエゾ型が多く、伊豆半島からはサト型のみが知られるが、筑波山つくばやま塩山しおやまの様に、三つの型が同所的に見られる場所もある。飼育下では、幼虫期に十六度前後で飼育された個体からエゾ型が多く得られ、二十三以上ではサト型しか羽化しない。しかし二十度の飼育では三つの型が発現することもあり、明確ではないが、低温飼育ではエゾ型が割合的には多くなる。普段見られるオスは六十ミリメートル程度だが、七十ミリメートルを越える大型個体が得られることがある。地中で蛹化する生態の為、オオクワガタ類などに比べてオスが大顎ではさむ力は強くないと思われがちだが、実際にはかなり強く、特に大顎先端の二叉に分かれた部分は闘争の際に威力を発揮はっきし、同種間や、他種との闘争だけではなく、大型の個体がカブトムシと戦った時、この二叉部分でカブトムシの胸部の後ろを締め付けてカブトムシの身体に穴を開けて深傷や致命傷ちめいしょうを負わせる事もある。人間でも二叉部分に指を挟まれ、猛烈もうれつめ付けられると出血だけではなく、爪部分を鋏まれた場合、そこを貫通されてしまう事すらある。飼育・人工繁殖は難しく大型個体は中々作出されないとされていたが、繁殖方法が確立し、その後、メスが二十五度以下でないと産卵しない事が公表されてから、繁殖飼育は比較的容易になった。なおはやし長閑のどかは十八度の恒温器こうおんきで幼虫を飼い、成虫まで四年かかったと発表しているが、一年で羽化に至る個体がほとんどと思われる。酷暑こくしょ乾燥かんそうに弱いため、地球全体の温暖化や都市周辺のヒートアイランド現象などで、激減か絶滅する可能性が相対的に高いクワガタムシであり、生息地域の環境調査などから指標昆虫となった。他の多くのクワガタムシと同じく、振動しんどうを足の毛で察知し、付いている木に衝撃しょうげきを与えると落下してくるが、ノコギリクワガタやオオクワガタのようなクワガタムシが落下すると脚を縮めて硬直し、擬死状態になって動かなくなる事があるのに対し、本種はそういった擬死体型は採らず、脚を伸ばしたまま硬直するか、動き出して逃走とうそうする他種と異なる特徴もある。深山とは山奥やまおくの意味である。このように、ミヤマクワガタは標高の高い山間部によく見られる。これは冷涼れいりょう湿潤しつじゅんな環境を好むためで、成虫の飼育の際には温度や湿度の管理に注意を要する。温暖湿潤な環境を好むために低地で生息密度の高いノコギリクワガタと対照的である。この両者は他にも様々な点で生態の違いがあり、ニッチそのものが微妙に異なっていて生活資源の競合関係はないと考えられるため、単純にこの生息環境の違いを住み分けと見なすのは困難だが、人為的な里山の環境を好むノコギリクワガタに比べ、ミヤマクワガタの方が人間の手つかずの自然が残る環境を好む傾向がある。両種が山間部や冷涼地域の平地など同所に混棲するケースもあるが、ミヤマクワガタが多い地域には、ノコギリクワガタが少ないなど生息数に偏りが見られる。また、ノコギリクワガタに比べ、全般的に体が大きめの為に、両者の体格と力の差から、闘争ではミヤマクワガタが圧倒するケースもままある。クワガタムシの大型種は夜行性であるものが多いが、ミヤマクワガタの場合は生息地や環境で昼間にも活動することが知られている。灯火やトラップにも飛来し、採集は容易で、大型のクワガタムシの中では飛翔性ひしょうせいが高い種である。通常他のクワガタムシと同様にクヌギ、ナラ、ヤナギ、ハルニレなどの各種広葉樹の樹液に集まるが、樹液を出す樹木自体が少ない高標高地域などでは、メスが強力な大顎で樹皮をかじり、傷つけて樹液を出すこともある。オスはそうした樹液とメスに引き寄せられたり、樹液とメスを守ったりする。その際オス同士の闘争も起こるが、勝ったオスがメスを独占したり、体格が小柄なオスが、大型オス同士が闘争中の隙を突いてメスを獲得したりといろいろな光景が展開される。オオクワガタ属とは違い、幼虫は腐植質の多い地中や、朽木の中でも腐朽が進んで腐植化の進んだところに生息し、腐植土状になった部分を食物としている。秋に羽化した成虫は土中の蛹室内で越冬し翌年夏に活動を開始するが、活動開始後の寿命は短く、再越冬はしない。この点はノコギリクワガタ等と同様である。野生下と異なり、飼育下において大型個体を羽化させることが難しく、幼虫期間も長めで希少性もないため採算性がないと判断され、累代飼育はあまりなされなかったものの、その飼育方法も徐々に解明されつつある。七十ミリメートルを超す大型個体については天然、飼育限らず、繁殖が進み、値がこなれたオオクワガタをも上回る場合が多々ある」

サクラとラビカは、ミヤマクワガタを捕まえた。

 そして、

「タイムアップじゃ!」

ついに制限時間を迎えた。

「今回の優勝者は、十匹捕まえたヒビキなのじゃ!」

「やったね!」

今回の虫取り大会の優勝者は、ヒビキ。

「これを受け取るのじゃ!」

「おめでとう!」

ヒビキは、カメじいから金メダルを受け取ったのであった。

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