19 襲撃
「石田さーん、帰りましたー」
「あぁ.......おかえり守。少し話があるんだ」
かえって早々石田さんは深刻そうな顔をしていた。
「なんすか?そんな顔して。暗い話なら聞きなれてますよ?」
「最近の連続失踪事件の犯人......つまり奴らの正体がわかったかもしれない」
「えっ.......」
連続失踪事件。深夜とはいえあんなに大胆な犯行は世間の目を誤魔化すことは出来ずこの町を騒がせる事件となっていた。
「どっ、どういう事ですか石田さん。何かわかった事が?」
「ゲッコーっていう連中、知ってるか?」
「げ......ゲッコー?」
聞いたことの無い名前だった。
「この辺でヤクザまがいの事をしている半グレ集団だよ。まさかあいつらがこの事件の首謀者だったとはな」
暗い顔をして話を続ける。
「それで....どうするんですか?こんなオカルトまがいな話を警察に?」
「それじゃ埒が明かない。連中の頭に話を聞きに行く」
「それってつまり.......」
「いわゆるカチコミってやつだな。決行は明後日だ」
「えぇ........」
「急で悪いとは思っているがこっちは顔も割れてるし、浅田は住所もバレてる。このまま待っていれば逆に危ないかもしれない」
「彼に連絡出来るか?頭数は多い方がいい」
「わかりました.....言ってみます」
不安の混じった返事を投げかけた。浅田さんに連絡をすると案の定軽い返事が届いた。事態を軽く見ていそうな彼も彼だが、一般人を躊躇なく巻き込む石田さんからは隠しきれない焦りを感じた。翌日は街で買い物をした。不審がられたくなかったので物騒な物は避けた。日が暮れると学校の近くへ行き、部活終わりの浅田さんと話をした。
「浅田さん......本当に来るんですか?」
「なんだよ?止めに来たのか?」
「そういうんじゃ........いや、そうなるかもしれないです」
「ほーん、そうか。せっかく来てくれて悪いけど答えは変わんねぇ。明日は行くぜ」
「人の命を奪う事になるかもしれないんですよ!?遊びじゃないんです!」
人の命。最近この言葉を発する度に目の前で死んだ彼の事が頭をよぎる。
「だろうな」
つい熱くなってしまった自分とは裏腹に浅田さんは冷静さを崩さなかった。
「実際そうなった事なんて無いから本当に覚悟が決まってるかどうかなんて確かめられねぇ。けどさ、俺はそいつらのせいで家族や友人が危険な目に合うんなら躊躇はしねぇつもりだぜ?」
「お前がどういう理由でこんな事やってんのか知らねぇけどさ、度胸がねぇならお前こそやめといた方がいいんじゃね?」
彼の言葉が胸に突き刺さった。何故自分はこんな事をしているのか。父親の復讐。
街を守るため。とっくに決めていた事だった。なのに自分は今更怯えて.......
「俺だって......覚悟、決めてますよ」
迷いを振り払うよう言葉を投げかける。
「そっか.........わかった。あと、お前の心臓動きすぎ」
笑みを浮かべながら彼は去っていった。
朝、3人で車に乗り込み、浅田さんが知っているという連中のアジトへ向かった。
「首謀者が半グレ集団って.......そんな連中が誘拐とか人体実験だとか大層な事やるんですかね?」
「わからない。まぁ連中に話を聞けば全てわかるだろう」
車内での会話はそれくらいで、それ以来3人ともほとんど黙っていた。
「着いたぞ」
適当な所へ車を停め、車の外へ出る。そこはいたって普通のありきたりな、強いて言えば周りより一回り大きいビルだった。
「守は物体を止める能力。浅田は相手の心臓を透視できる能力。自分の手札を頭に入れて常に冷静でいてほしい。わかったな?」
「はい」
「うっす」
「正面は無理だ。地下駐車場から入る」
車両専用の通路を下って行った。
「石田さんストップ!二人来てる!」
浅田さんの声で立ち止まる。咄嗟に物陰に隠れ、ビルの入り口を覗き見ると確かにスーツ姿の男が二人出て来た。
「来い。ネズミ共。相手をしてやる」
片方が声を響かせた。
「なんだよ上から目線でよぉ。コソコソ人の家まで調べ上げやがって。やってる事はそっちの方がネズミっぽいぜぇ?」
浅田さんに引き続き自分と石田さんも物陰から出る。
「真正面から相手すんなら命の保証は出来ないぞ」
もう片方がそう言うとこちらに手をかざす。
「何ィ?超能力者多すぎねぇ?お前ら流星群の日何してたんだよぉ!?ここは天体観測クラブかぁ!?」
浅田さんの声が駐車場に響いた。
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