18 力
勢いよく開くドアの音で目が覚めた。
「そうか.......家についてすぐ寝ちまったのか.......」
昨晩は本当に色々とありすぎてよく覚えていなかったが、すぐ横で死んだように寝ている浅田さんを見て疲れ切った後眠ってしまったということを思い出した。
「石田さん!」
玄関から入って来る石田さんはボロボロで、擦り傷や切り傷であふれていた。
「大丈夫でしたか石田さ........」
言葉を投げかけようとした瞬間、横から飛び起きた彼が石田さんに飛び掛かった。
「誰だお前!何しに来やがった!お前もあいつの仲間か?えぇ!」
石田さんの胸倉を掴みながら大声で叫ぶ。
「ちょ.....ちょっと待ってくださいよ!てかここその人の家だし!」
「あ?」
「色々事情があって..........」
そう言うと浅田さんは面食らった表情で石田さんを見た。
「腕、離してもらえると助かるかな........」
「あーっと........札森から聞いてると思いますけど俺が浅田っす。さっきはすいませんでした」
申し訳なさそうな表情で恐る恐る石田さんの表情を伺いながら浅田さんはそう言った
「いや、いいんだよ。確かにどう見ても怪しいしな。俺」
「はは........」
浅田さんの苦笑いが部屋に響き、空気が更に冷たくなっていく気がした。
「それより本題に入ろう。君が流星群の日に体験した事、君を狙っていた連中の事。そして君の「力」の事」
「ちょ、いいんですか?」
「ここまで関わられたらな.........」
案外すんなりと話すのかと拍子抜けしてしまった。俺には結構もったいぶった癖に。
それからしばらく話が続き、やがて粗方話し終わるとなぜか浅田さんは目を輝かせていた。
「それってつまり俺、超能力者って事っすよね!?すげ~」
「あのなぁ.......一応言っておくがくれぐれもこの事は」
「わかってますって!大丈夫!俺、口は堅いっすから!」
言葉を遮り元気のよい返事をする彼とは対照的に石田さんは頭を抱えていた。
「とりあえず、人前で力を使わない。このことを誰にも話さない。この二つを約束出来るな?」
「うっす!」
重い話につくづく軽い相槌を打つ浅田さんには呆れ、というよりある意味尊敬のような気持ちを抱いていた。
「なぁ札森、朝飯まだだろ?食いに行かねぇか?」
「あっ......はい。行きます。」
「それじゃまた。ありがとうございました。札森借りてきますね~」
どこかやるせないような石田さん表情を後に、家を出る。
(あの人のあんな表情初めてかもな.........)
「なぁ~札森~超能力ってさぁ..........もっとこう、派手なもんじゃねぇの?」
ハンバーガーショップのテーブル席、どこか落ち込んだような表情で話しかけ来る。
「いやぁ....そんな事言われても........」
「なんだよ「相手の心臓が見える」って。もっとこうさぁ、テレポートとか、空飛べるとか、火を出せるとか、なんならあの男の電気ってのも十分かっけぇじゃん。それに比べて俺はさぁ........」
「しょうがないっすよ,,,,,,,分かんない事だらけだし.........」
適当な慰めをかけてハンバーガーに齧りつく。
「お前は?なんだっけ。物を止める.....だったっけ?それでも十分実用性ありそうじゃん。いいよなぁ......」
「んな事言われても........」
いまいち反応に困る話題を振られてどう返せばわからなかった。
「まぁいいや。腐っても俺は超能力者だ!せいぜい活用してやるぜ!この力!」
落ち込んでいたかと思えば急に立ち直った。
「うっし。そんじゃまぁお前とは秘密を打ち解けあった中だし、何かあったら連絡してくれ。スッ飛んでくぜ。ヒマな時は」
そういうと彼はトレーを片付け、店を後にした。
「読めない人だなぁ..........」
「ヤモリのタトゥー........やはり連中が絡んでるのか......?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます