14 浅田良治

浅田良治。別に自分の事を内気だと思う事はあまりなかったが全く接点のない人間と接触するというのはやはりどこか怖いところがあった。

「なるほど。その浅田という学生がコメットと接触したと」

「はい。友人に頼んで明日会う約束を取り付けてもらいました。俺、明日話してきます」

「いや守だけだと不安だろう。俺もついて」

「結構です」





「この先の公園か.......」

学生同士での話に中年男を混ぜてどうするってんだ。なんて事を考えながら学校から少し遠くの公園へ向かっていた。信号を渡り、角を曲がり。数十分かけて約束の公園へたどり着き、そこには確かに学生服の男が居た。

「あのぉ...........」

バスケ部だったか。自分より身長も少しだけ高く、体格も大きい。そんな相手にはついつい下手に出てしまう。

「お、君が例の」

「はい。2年の札森です。今は色々あって休学してるけど.......」

見た目に反して、なんて言ってしまうと失礼かもしれないがなかなかいい人そうだった。

「しっかし珍しい奴もいたもんだなぁ俺の話を聞きたいだなんて。周りはホラ話だってマトモに聞いてくれる奴なんて一人もいなかったぜ?」

「信じますよ。聞かせてください」

「一週間ぐらい前だったかなぁ......部活の中でちょっとしたゲームしててよ。負けた奴が例の流星群を見に行って写真を撮る、って罰ゲームだったんだけど丁度俺は負けて夜流星群を見に行ったんだ。約束通り写真は撮ったんだが驚いたのはその後だ。

何十個にも枝分かれした流星群の一つが俺の近くに落ちたんだよ。更にもっと驚くのはその後だ。見に行ったらその落ちてた星はカプセルみたいに表面が滑らかだったんだ。しかも割れ目みたいなのがあって開けてみたら中から変な空気が出てきた。それを吸っちまったら今度はめまいがしてそのままそこで寝ちまった。目が覚めたら数時間も経ってました、って話なんだけどよ。まぁ誰も信じてくれねぇわ」

(大当たりだ!)

心の中でそう叫び、そのまま次へと質問が口から出て来た。

「その後.......何か変な事とか身の回りで起きませんでした?」

「変な事って?」

「いやなんていうか........物が止まったり、手が急に熱くなったり.....」

「なんだよそれ、変な奴だとは思ってたけど予想以上だな」

彼の笑い声が公園に響き渡り、羞恥心で体が火照って焼けそうだった。

「そうだ、もう一つ。その事を聞いてきた人っていました?」

「いや.......あ。そういえば知り合いに一人そんなような事を下校中に聞かれたって奴がいたな........それがどうした?」

「もしその事を聞いてくる奴がいたらそいつの特徴を教えてください。そして聞かれてもその事は絶対に話さないで」

「お......おうわかった。聞きたい事ってのはそれだけか?」

「えぇ。ありがとうございました」

いきなりこんな事を話されて訳が分からないっていうのはだろうとは思ったが、どこか内心焦りを感じていて駆け足で話を進めてしまった。

「なるほど。つまり君と全く同じって訳か」

「はい。でもまだ能力には目覚めてはいないようです」

夜、彼の事を石田さんに報告していた

「まぁ個人差って奴だろう。それより奴らは学生達を嗅ぎまわっているんだろう?なら学校付近で張り込めば奴らを.......」

石田さんは食い気味に聞いてきた。

「いや、俺が質問をされたのは学校から遠くだったし時間も不定期。可能性は低いでしょう。」

「そうだな......」

石田さんの残念そうな顔の瞳の奥には憎しみ、恨みのような感情が宿っている。




数日間、彼には内緒で後をつける事は石田さんと違いあまりやる事の無い自分の日課になっていた。部活上がり、集団で帰る彼が仲間と別れ、一人になるのを確認し、それから家までつける。やっている事は完全に不審者だったが少しの可能性に賭け、数日その行為を続けていた。

(今日もダメか.......)

その日も彼が自宅へ入るのを確認し尾行を切り上げ家に帰った。が、その日の夜だった。

「電話........浅田さんからだ!」

すぐに応答し話しかける。

「浅田さん?どうしたんですか?」

応答は無い、だが何か音が聞こえる。

「どうしたんだ守」

「彼からです!」

石田さんと一緒に携帯から微かに流れて来る音を必死に聞き取る。音量を最大まで上げると少し音が鮮明に聞き取れた。

「君、少し前の流星群の日さ、外にいたっしょ?」

聞いたことの無い男の声だった。

「いやぁそんな事無いっすよ。ていうか誰なんですか?あなた。こんなうちの前の近くまで」

彼が今どんな状況にあるのか自分と石田さんにはすぐに理解できた。

「石田さんこれって......!」

「彼は今自分の居場所を伝えようとしているんだ!相手にバレないように通話だけを繋いで!」

続いて音声が流れて来る。

「君の友達が言ってたよ?君が変な話してたって。初対面の相手に嘘はよくないよ?」

「誰ですかそいつ?俺の友達って冗談で嘘つく奴多いんです。名前教えてくれればそいつ問い詰めてやりますよ?とにかくそこの角を曲がって十字路を右、交差点を渡れば学校なんで明日放課後学校来てください。話はそこで頼みます」

「聞こえたな守。心当たりは?」

例の不審者ごっこのおかげで彼の家の付近の構造は大体把握していた。

「えぇわかります。石田さんはこのまま通話を聞いててください。俺は一刻も早く行かないと」

「だがそれじゃ俺が........」

「迷ってる暇ないでしょう!とにかく石田さんは通話を最後まで聞いてその後車で俺の事探してください!それじゃ!」

急いで支度をし、石田さんの家を飛び出した。













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