9 融解
「家を知られた以上いつ襲撃されるかわからない。俺の家に住んでもらう。奴らに見つかるとまずいから君はなるべく外に出るな」
男二人の奇妙な同居生活が始まって一週間が過ぎ、石田さんに言われた通りに一日中俺の能力とやらを練習していた。なんて言ってもそんなすぐにコツなんて掴めるはずもなく家事をしたり本を読んだりして過ごしていた。ふと手に持っていた本をいつかやったみたいに意識を集中させて空中に置く。
「お!?おぉ!」
本は空中でピッタリと止まった。
「あ」
......なんてはしゃいでると本はすぐに地面へと落ちる。そんな一喜一憂をしていると玄関が開いた。
「おかえりなさい石田さん。なんか進展ありました?」
「ああ。」
「俺の雇った探偵が面白い情報を掴んだ」
「情報って?」
「最近近場であった連続怪死事件だよ。警察はまだ関係者以外に公表していない。」
「怪死事件?」
「高校生3人。それと女性、その隣人が殺されている。被害者に共通しているのは........」
「全員"溶かされてた"らしい」
急に話がホラーになってきた。溶かす?人間を?どうやって?
「被害者全員に共通するのは体の一部が溶かされていた。その女性も顔がグチャグチャになっていたらしい。しかもどこかに連れ込まれたとかじゃなく犯行現場は全て道端。通り魔的な殺され方だ。」
「まさか.....!」
「おそらくコメットの能力者だろう」
薄々していた嫌な予感は的中した。
「俺の家を襲ったあいつみたいに.....やっぱり連中の仕業ですかね?」
「いや、奴らはコメットを使用した人を連れて行こうとするはずだ。優先的に殺害を試みるとは考えにくい」
「それってつまり.........」
「君と同じ偶然拾った人間と考えるのが普通だろうな。だが組織とつながっていないとも言い切れないし、どちらにせよ能力者なんて警察には手に負えないだろう。俺たちで探し出して倒す」
「探すって.......どうやって?」
「さっき言った被害者女性の息子が4日前から行方が分からないらしい。これは丁度最初の殺人と重なる。母親を殺しその目撃者を殺害。逃走中に更に3人を手にかけたって事で筋は通る。今そいつの行方を探偵に追わせてる。俺たちも行こう。」
「あぁそうだ。その少年の名前は..........」
「ダメだ......見つからねぇ。」
暗い夜道、壁にもたれて男が呟く。
「ていうか捜査対象はまだ15だろ?そんな夜道をフラフラ歩いてるわけも無いか.....家には帰れるはずないし.......ネカフェとか?」
「吉田仁15歳。ホントに見つかるのかなぁ..........」
「おい。なんでお前俺の名前知ってるんだよ」
夜の静寂な住宅街に男の後方から野太い声が響く。男が振り向くと顔をしかめた少年が立っていた。
「君........!依頼主が探してた!」
「どうせお前も俺の事笑いに来たんだ。そうに違いない。殺す。殺してやる。俺の俺の事を笑った奴全員」
少年は男の腕を力強く掴んだ。
「ちょっとまっ........離せ!俺はただ君と話を......」
「熱ッ!なんだ!?こいつの手、だんだん熱くなって.....!」
男の腕はシチューのように溶け、弾けとんだ。
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