8 決意
車に揺られて30分程が経ち、石田さんの家に着いた。
「着いたぞ。ここが俺の家だ。とりあえず今から君に話さないといけない事がいくつかある。」
石田さんはそう言うと俺を家の中へ案内した。中は少し散らかっていて、カップ麺の残骸だとか、かなり性能のよさそうなパソコンなど如何にも独身男性の部屋という感じが漂っていた。
「まぁ座りな。すまないがお茶は出ないぜ」
俺を椅子に座らせ石田さん自身は目の前に立っていた。
「聞きたい事は山ほどあるんですけど.....」
「そうだな。一つずつ行こう。」
口から出る不安を遮って石田さんは言った。
「まず改めて話していこう。俺は石田礼二。今は無職.......いや、フリーターって言うのか。をやっているよ。」
こんな厳つい顔したフリーターがどこにいるって言うんだ。
「君は三日前、「コメット」を開けてガスを吸い、能力者になった」
「だからそのコメットって何なんですか?いい加減教えてください」
コメットだの能力者だの専門用語使い過ぎだ。痺れを切らし食い気味に尋ねた。
「実を言うと俺も詳しい事はあまりわかっていないんだ。現在俺の情報で確定している事は、三日前の流星群で地上に落ちたカプセル........「コメット」。奴らはそう呼んでいた。コメットを開けて中から出てきたガスを吸うとたちまち気を失い3~5時間程の眠りにつく。目を覚ますと激しい頭痛に襲われるがその痛みはどういうわけか直ぐに治る。そしてその過程の後に「能力」に目覚める。君も体験しただろう?あの男のスローにする能力。君の物を止める能力。人間に新たな力を授ける。それがあのコメットの力だ」
「そしてそのコメットの力を狙う組織があるらしい........追いかけ続けてもう8年になる。だが未だに尻尾すら掴めていない」
なんだかだんだん壮大な話になってきた。話の整理をつけようと思ったがそこで一つの疑問が頭に浮かんだ。
「石田さんは何でこの件に関わっているんですか?それに7年ってそんなに長い年月......」
石田さんの顔が一気に暗くなった。地雷を踏んでしまっただろうか。そんな考えに返って来たのは衝撃の返答だった。
「娘を....殺されたよ。」
喉が固まってしまったみたいに声が出なかった。
「あの流星群は10年に一度地球へやって来る。10年前の流星群で奴らは動きだした。その時俺は君と同じで偶然拾ったコメットを開けて能力を手にした。だがそのせいで俺の一家は奴らに狙われる事になった」
「7年前までは刑事をやっていたんだ。君と同じくコメットを拾った事がバレて組織の使者が俺を迎えに来た。だが俺はその時刑事という立場を利用し逆に奴らそのものを摘発してやろうかと脅した。だがそれがまずかった。俺の事を危険視した奴らは俺の家に火を放ち、「火事」ってことで俺を消すつもりだったらしいがその時偶然俺は家にいなかった。代わりに娘が焼け死んで、その遺体をコネで調べたんだよ。」
石田さんの眼付が変わるのがわかった。
「胸に数か所の刺し傷があったよ。しかも奴らは裏金でも渡したのか上は事件性は無いと判断しこの事をうやむやにした。それに我慢ができず独断で組織を追ってるうちにクビになったよ」
「俺の目的は三つある。娘の死の真相を明らかにする事。これ以上俺みたいな人間を増やさない事。そして奴らの組織そのものを潰す事だ。」
「まずはここら一帯に落ちたコメットで能力に目覚めた人間がいるかもしれない。そいつらを探そう。」
「娘の死」........俺にそんな大層な理由は無い。だが手段を選ばず家族共々巻き込むようなゲスを許すわけにもいかない。石田さんに協力することを今一度心のなかで決意した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます