第28話 やっぱり高品質って難しいです

「それにしても、万が一書籍化されることまで夢想して、それが初版のみで続刊がないだろうと想像するのは滑稽だな」

「誰だって、宝くじを買えばその当選金額に夢を見ます。私の場合、最高当選額を夢見ないだけです。5万円くらいでいいのです」

「その程度の希望であれば、外れた場合のダメージも少ないというやつだな。前に言っていた、作品を応募して、最終選考まで行ってダメだった場合、キツイのは確かだからな」

「それに、そこまで行った場合、その作品を今後どうしようというのはあるでしょうね。別のコンテストに出すか、大幅に改変するか、選評でもいただければいいのですが、選者によって評価の差はあるでしょうから」

「でも、世間には満場一致や、シンクロニシティ的な評価を得る作品もあるのだぞ?」

「そうですね、本屋大賞なんてたぶんすごく嬉しいと思います」

「ただあれは、すでに商業価値を見出されて書籍化されているからな」

「ハードルは高く、何段階もあるのですね」

「ただ、そこまで辿り着いた作品は、確かに素晴らしいものだ」

「それが高品質?」

「そこは好き嫌いもあるからな、ただ間違いなく売れているし、メディアミックスも期待できる。書籍を読まない層に対する認知が果たせる作品は、総合力で強いのだ」

「戦える、作品ですか?」

「よく言われる例えで、SF好きな宇宙人に地球最高の本を差し出すように言われ、それに満足できなかった場合皆殺しだ!と言われたら何を提示するね?」

「世界の命運を決めるのですから、地球人全員による投票がいいのでは?」

「この世界で、そもそもSF小説を読んだことのない人の方が多いだろうがな。しかも過去に1万冊を読んだ人と、10冊程度しか読んでない人、同じ価値の票と見るのかね?」

「不公平であり、公平である、どちらとも言えますね」

「他にも、識者と呼ばれる人が優れているとは限らんが、識者は識者である理由があるからな」

「識者だって、いろんな人がたくさんいますよね?評価できる選者になるための資格でも取得させるとか」

「今度は、その資格試験の設問を作る人の資質が問われるがな」

「堂々巡りなんですね」

「限られたコミュニティの中でやるならいいのだがな、世界中の作品を壇上に並べて、となると、宗教やイデオロギー、人種といった対立は避けられん」

「じゃあ誰がSF大好き宇宙人に作品を差し出すんです?」

「儂だったら、各国の政府に、SFに造詣の深い識者を10人程度他薦で決めさせて、各員に100冊程度選ばせて、単純に上位50冊程度決め、それを国連参加国全部から出させ、上位100冊を決める」

「それなりの収束結果になりそうですね」

「その100冊をカクヨムに載せる」

「いきなりすごいとこに持ってきましたね」

「星とレビューとフォロー、要はカクヨムの運営がいつもやっている読者選考で上位10冊くらいまで選べば、後は国家元首による投票でいいだろう。トーナメント戦でも良い」

「一大イベントになりますね」

「うむ、結果として宇宙人を間抜けな方法で退治する作品が選ばれたら痛快だな」

「宇宙人に満足してもらった後に皆殺しにされそうですけどね」

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