第6話 勇者、働く
翌日からケインは仕事に就いた。なんてことのない会社の清掃だ。しかしケインは掃除機の使い方も知らなかったし、エレベーターにすら一人では乗れないくらいこの世界に慣れていなかった。見かねたマオがケインは留学生だからあまり日本の機械に詳しくないと他の清掃員に言ってくれた。そのおかげかケインは優しい人たちに囲まれて仕事に励んでいった。日本語が上手だね、飲み込みが早いねと褒められながらも暖かい日々が続いていった。
不慣れな仕事も覚え、気が付けば1か月経っていた。お給料も貰えた。だがまだマオの家に居候という形で住んでいた。マオ曰く邪魔じゃないし、気にしないから気が済むまでいればいいと言ってくれた。この仕事にもこの世界にも慣れてきた夜、ケインとマオは共に夕食を取っていた。
『この番組は国内の面白い人や不思議な人に会ってみる番組です!』
仕事での他愛ない話を2人でしながら冷凍のハンバーグを食べる。テレビでは謎の占い師が登場というシーンだった。その番組におれはくぎ付けになった。
「ミネルヴァ...」
登場した占い師は共に旅をしていたミネルヴァそのものだった。
「ケイン、知り合いなの?もしかして、お仲間さん?」
ミネルヴァは別に占い師ではなかった。おれと共に戦ってくれた魔導士だったはずだ。ただ、この世界では少し先の未来が見えたり人のオーラで敵かどうかを判断することは当たり前ではないのだろう。だから彼女は占い師と呼ばれているのだとおれは思った。
「ねぇ、ケイン。知り合いなの?」
「あ、あぁそうだ。返答が遅れて申し訳ない。」
「いや、驚いて頭の中整理してたんでしょ?別にいいよ。この後も他の仲間が出てきたりしてね。」
マオは笑いながらおれの方を見た。
「いやいや、あり得ないって...」
『しかし、彼女だけではない!なんと10月31日頃に現れた謎多き人物がまだいるというのだ!』
というナレーションが流れCMに入る。10月31日はおれがこの世界に落ちてきた日だ。仲間がまだこのテレビに映るのではと期待した。食い入るように見ていたがミネルヴァの姿しか見ることはできなかった。
天才勇者が魔王を倒そうとしたら渋谷にいた件 のざらしのあざらあし @momo1231
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。天才勇者が魔王を倒そうとしたら渋谷にいた件の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます