第2話 勇者、魔王城に着く。

「とうとうここまで来たか...」

町を立ってから約半年。勇者ケインとその一行は暗雲立ち込める魔王城の前に立っていた。10年前、自身の村が燃やされたあの日からケインはこの日を待ち望んでいた。そう、この世界の絶対悪である魔王を倒せるところまで来たのだ。ケガをして思うように戦えない日もあった、仲間割れした日もあった。しかし、今となれば全て良い思い出だ。

「ケインさま、進みましょう。おれが前に立ちますからね。」

「あぁ、前は任せたよピーター。」

ピーターは前衛を担当してくれている。立派な盾を持ち、ガタイも良く、そして優しい好青年だ。後ろには回復もできて、みんなをしっかりまとめてくれる魔術師のミネルヴァ、そしていつも明るいムードメーカーの旅芸人のアーノルドがいる。4人でいれば魔王にも立ち向かえる。

「さぁ、行こう。」

重々しい音を立て魔王城の扉はゆっくり開いた。


冷たい廊下を進んでいくとミネルヴァが呟く。

「おかしい、おかしいわ。なんでモンスターが出ないのかしら。」

「もう全員倒しちゃったりしてねー」

アーノルドは能天気に返す。確かに、おかしい。ふと廊下の明かりがすべて消え恐ろしい声が城中を震わせた。

「遅かったじゃないか、勇者よ。だが、お前らにはここでこの世界から消えてもらう。」

さすがのアーノルドもナイフを投げる構えをしている。全員身構えていた。

「そう身構えても意味はない。この魔法で、お前たちは別の世界に飛ばされてしまうからなァ。」

そう言い終わるか終わらないか、まばゆい光が勇者達を包み込んだ。


そしてふと気が付くと...10月31日の渋谷のスクランブル交差点のド真ん中に立っていた。

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