第11話
「さて!話も一段落したことですし、坊っちゃまを綺麗にしますよ!!」
話が終わり、程よく喉を潤した時、メイド長がパンパンと手を叩いた。
「えっ?ちょっ!」
ズラッと現れたメイド達が、困惑した俺の声を気にもとめずにどこかへ連れていく。
連れていかれた先は、風呂場だった。
「ちょっと、自分で脱げるから···!」
「いいえ、これからは貴族の生活になれていただくためにも、しっかりお世話させていただきますよ!」
抵抗したが、数人がかりで全て脱がされてしまった。
「······」
「「「······」」」
「旦那様ぁー??!!」
1時間後
「うん、綺麗になったね。君の髪は、綺麗な銀髪だったんだね」
「えぇ、ちゃんと立派な貴族の“子息”に見えるわ」
そう言っている2人の目はどこか遠くを見ていた。
「···女の子だったなんって、気づかなかった···!!!」
共に膝を着いたが、意味はそれぞれ違った。
「どうしましょ?!ドレスは用意してないわ!!」
「父上に、男子と言ってしまった!!」
ギルバートさんの方が、深刻かもしれないよな。
「ねぇ、ギルバートさん?もしも性別が違ったら、何か言われるの?」
「い、いや。言われない、と思うが···」
「じゃあ、······」
俺の性別を言っている人の範囲、違った場合の不利益を聞いていく。
「···なら、特別に性別についてを国に報告したりはないし、後継とかも問題ないから、関係ないと」
「ああ、そうだが?」
「···そのまんまでもいいんじゃないかな?
身内内だけに、間違いだったって言えば。それに、俺が男だと勘違いさせておく方が、俺も動きやすいし」
今は少ないが、男尊女卑の家もあると言うし、俺が女だと何かと文句をつけてくるだろう。
「···ううん〜?でも、···んー??いい、のか?」
「あ、でも、どうしてもドレスとか着てお嬢様みたいな事をしなきゃいけないって言うのなら、するけど···」
そう言うと、ギルバートさんは顎に手を当て、唸る。
「···う〜ん···いや、でも···」
「ギ、ギルバートさん···?」
「···よし、決めた。どんな姿で過ごすかは、ユウが決めなさい。正式な場では令嬢として出てもらうことになると思うが、それ以外は君の好きなようにするといい」
「···!うん、分かった」
努力はしようと思ったけど、お嬢様みたいにお淑やかに出来るかって言われると不安だったんだよね。
「ただ、どうするにしろ、貴族としての振る舞いは学んで貰わないといけないけどね」
トホホ···
やっぱり、そうか···
「あぁぁ···!暇だ···」
ギルバートさんの家族になって数ヶ月、午前中に貴族としてのマナー講座や、魔法の講義を受けて、午後からは暇になるという日が多く、屋敷の図書室に入り浸っていた。
「なんかないかな···ん?」
文字をちゃんと知らなかった俺が習った範囲で読める、初歩的な本も、ほぼ読み終えてしまったので、その日は図書室の奥の方まで来ていた。
「何コレ···?『古代魔法の門』?門ってことは、入門編みたいなものかな?」
パラパラと捲り、近くの窓辺に腰かける。
「·········」
入門編だと思って侮っていたのだろう。
読めない文字も多く、頭を抱えそうになったが、読める文字を繋ぎ合わせていくうちに古代魔法の世界に引き込まれていた。
「そうか、ココがこう繋がって···コレをこっちの併合したら···!」
簡易浄化魔法に関する所をみつけ、ワクワクしながら読み進めるうちに、ふと気づいてしまった。
「···これ、応用して色んなとこ浄化したら、あそこまで世界が壊れなくてすむんじゃ···」
そう呟いた途端、そうなんじゃないか?という気持ちが膨らむ。
そうだ、聖女を浄化の旅に出るように説得するまでの被害も減らせるだろうし、聖女1人で回りきれないところもカバー出来るし···!
「···よーし、決めた!!」
誰に聞かれることも無く、決意が口から溢れ出る。
「世界を守るために、魔法を使って、平和に世界征服するぞ···!!!」
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