猫憑き
「にやぁあ。。
相変わらず、君は臭いねえ?」
日の当たる境内で。悪口を言われながらも、
俺は懐かしい顔と言葉を交わしていた。
「うっせえ。」
こいつは鼻が利く。
懐かしい顔「それで。
最近、どおよ?」
「どおよ?って、、
んな、大した事はねえけど。」
懐かしい顔「隠し事をしても無駄さぁ。
君からは臭ってくるんだから、、」
んな、臭えかねぇ。
自分の服を嗅いでみる。
「ちゃんと風呂入ってんだけどねぇ、、」
懐かしい顔「にゃははっ。
体臭の事じゃあ、ないよ。
それよりも。さぁ??
最近。大元のちょっかいがウザくてねえ、、
本当に。そろそろにゃあの堪忍袋も切れそうだよ。」
「まあまぁ。
分からなくはねえけど、
ほら。
土産物だ。」
前に頼まれていたのを渡す。
懐かしい顔「にゃああ。
ちゃんと買ってきてくれたんかぁ?」
「約束は守らなきゃな。」
懐かしい顔「ふふふぅ、」
ガサガサッ、
手渡した袋から瓶を取り出し。
キュポッン。
颯爽と、盃に酒を酌む。
彼女はこの神社の巫女をやっている。
まぁ、腐れ縁ってやつだ。
いつもなら猫で溢れてるこの場所も。
俺を警戒してか、近寄ってすら来ない。
今日は、聞きたい事があって来た。
「巫女が昼間っから呑んだくれてて良いんかよ?」
巫女「今日は人が来ない様にしてあるにゃっ。
ひっく、、」
「んで。
情報は??」
巫女「んぅ。。
にゃんでも、
近々、"干支が変わる"らしい。」
「っ!??」
遠くで見ていた猫達が一斉に逃げて行く。
巫女「そう、殺気立つな。
君の気持ちは、痛い程。分かるよ、、」
『干支が変わる』
本来なら、年が変わると言う意味で用いられるが。
この世界では、"所有者が変わる事"を意味する。
干支。
十二支の力は、その名の通りに強い。
その力を我が物にしようと、
大元は手を回して来る。
邪魔をされない様に"警告"もしながら。
勿論。力を狙う本家やその他の組織も、だ。
巫女「弟子はどうした。」
「ん。まぁ、まあ。」
巫女「そうか。
にゃあはまだ会った事ないにゃ。
主人の子供。
いつか逢って見たいにぁあ、、
君は。所帯を持たないのかい?
もう、良い歳だろうに。」
「持たないってかいきなりだな。
そっちは?」
恋愛と呼ばれるモノとは無縁だった。
そんなものよりも。
俺には、やる事があったから。
巫女「にゃはは、
にゃあは巫女だからさぁ?
それに、皆が居るから。寂しくはないよっ。
そろそろ。
主人が大好きだった、桜の季節だね。」
「だな、、」
あの人「お前ら。
本当に仲が悪いなぁ?」
巫女幼少期「にゃあは、こいつ嫌いにゃ!」
「俺だって、大嫌いだ!」
あの人「ったく。
どうしようもねえなぁ、、
似た者同士なんだから。
互いに助け合わなきゃ。
なっ?」
俺達をくっ付ける様に肩を抱き寄せる。
巫女幼少期「にゃぁ、、」
「はぃ、、」
俺達は、あの人が大好きだった。
俺達は、あの人に救われた。
なのに、、
何もする事が出来なかった。
ただ泣く事しか、出来なかったんだ。
干支が変わる時。
あの人は、大元に。組織に。
"殺された"
巫女「主人を忘れた事は無いにゃぁ。
もっと私が強かっ、」
「言うなっ!」
巫女「、、。
悪かったにゃ。」
「いや、、
わりい。」
まともに人と付き合って来なかったから。
こういう時。
どうすりゃあ良いのか分からねえ。
静かな空に。
鳥の鳴き声だけが響く。
「お前は、、
死ぬなよ?」
巫女「にゃぁ。
それは、君の方こそだよ、、」
「俺は適当に。
上手くやるさね。」
巫女「上手くやる、、ね。
それが出来れば良いんだけどねぇ。
大元が動いてる。
組織を使って、上手くやってるつもりでも。
臭いのが彷徨けば、誰から見ても分かるにゃ。
従順に従ってるフリをしても、組織は血眼にゃ。
いつまでも本家のおつかいはごめん。ってね。
本家は本家で。
干支を守るのに必死だし、、
皆。大変にゃ。
よくもまあ、同業者殺しに精が出るにゃ。
だからきっと。どさくさに紛れて。
君の弟子の所にも、客人が来るにゃ。」
『干支の争奪戦』を表に。
裏では同業者殺しが始まる。
「あぁ。
だから手は打ってある。」
巫女「君も。気を付けると良いよ。」
「あぁ。
お前もな?
めんどくせえのは、嫌いだ。」
巫女「でた。
そのめんどくせえ。」
「うっせえ。」
『ハハハハハ』
懐かしい友との再会。
その顔に。少しだけ心が和らいだが。
状況は、決して良くは無かった。
何をする訳でもなく。
その場所に、2人で居た。
日は寂しくなる程に。
いつもよりも早く。落ちて、行った。
「悪かったな??
色々。」
友「いや。こちらこそにゃ。
また、買って。来て?」
「そんな、頻繁には行けねえよ。」
友「絶対。。
絶対買って。来るにゃ、、」
今まで逃げて来た問題に。
真正面から向き合う時が来た。
その覚悟を。
友は知っていた。
御自慢の長いヒゲと目で。
見透かしていたのだ。
抱き付いた身体を優しく抱き締める。
「臭かったんじゃねえのか??」
友「臭いにゃ。。」
「お前も、酒くせえぞ。」
友「うるさいっ。。」
あの頃よりも少しだけ大きくなった身体。
最後にこうしたのは、あの人を失った時だ。
あれから時は過ぎたが。
空いた傷口は塞がらなかった。
それでも。互いに傷を舐め合って。
こうして生きて来た。
もう。あの時の俺じゃない。
時間も、労力も。能力も。
惜しまず溶かして来た。
借りを。返す。
絶対に。
お前らを赦さない。
例え、この身が滅び様とも。
死霊となって。
お前達を呪い殺してやる。
「花ちゃん、
出番です。」
「悪い子?」
「ええ。
とっても。」
「じゃあ、退治しないとねっ」
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