梟の番
ここへは、普通の人間は入れないんだが。。
稀にこういう場合もある。
ここは、ただの骨董品屋。
私はここの店主。
「いらっしゃい??
何かお探しで??」
歳は中学生くらいだろうか。。
この店には珍しい。可愛らしいお客さんだ。
女の子「あの、、
夜になると、
誰かが玄関を開けようとしてくるんです。」
普通の何処にでも居る様な優しいお爺ちゃん、、
さっきの人には正直に話せば大丈夫って言われたけど。
本当に、大丈夫なのだろうか。
お爺ちゃん「そうかい、、
ひとつ確認しておきたいんだが。。
それは、"人では無い"んだね?
」
女の子「はい。。」
何だか会話が不思議だった。
お爺ちゃん「ここへはどうやって??」
大した物は無いが、お菓子ぐらい出さんとな、、
お爺ちゃん「どうぞ。
まあ、座って、、」
「ありがとうございます、、
えと、、どうって。
普通に、、
あのっ!
教えて貰ったんです。」
質問の意味が分からなかった。
古いお店の扉を開けただけなんだけど、、
お爺ちゃん「誰にだい??」
女の子「おじさんに、、」
「クシシャン、、
あぁ。
誰かが噂してるのか、、」
弟子「師匠。
何か悪さしたんですか?」
「いや、、。」
お爺ちゃん「そうかい。
アイツがねぇ。
お嬢ちゃんには、
何か宝物はあるかな?」
きっとアイツだろう。
まったく。どんな気紛れなんだか、、
相手によっちゃあ。後で請求するぞ?
女の子「宝物。ですか?」
お爺ちゃん「あぁ。
とても大切にしているモノ。
人形とかキーホルダーとか。
何でも良いんだけども。」
女の子「梟の、人形が。あります。」
思春期の良い所だ。
綺麗な感情を恥ずかしがる。
純粋で無垢で、、
だからきっとそれで大丈夫だろう。
お爺ちゃん「そうかいそうかい。
モノを大切にする事は恥ずかしい事じゃあない。
この紙をその人形に付けたまま。
"御守りください"
と3回唱えて。
その紙を玄関の入り口に貼るんだ。
そうしてきちんと護って貰えたら、
ありがとうを言うんだよ?」
お爺ちゃんは古そうな棚を漁ると。そこから、
何かのマークが画かれた紙の様な物を出して、
私の手に優しく置いた。
女の子「それだけ、、ですか?」
お爺ちゃん「そうさ。
、、やっぱり煎餅は口に合わないかね?」
女の子「いえいえ、
い、頂きます。」
よっぽど怖かったんだろうか、、
いや。本当に退治出来るのか疑っているのだろうか。
あまり、家庭内が良く無いんだろう。。
お爺ちゃん「この煎餅は旨くて。
つい、止まらなくなっちゃうんだよね、
モノってのは、大切にされりゃ。
それだけ大切にされた側も。
何かしら応えてくれるんだよ。
人間と一緒さね、、?
ボリボリッ、」
女の子「はい、、
バリッ、」
少し世間話をしてから。
私はお礼を言って帰った。
おじさんにお金は要らないと言われたが、
これが幾らなのか分からないからお財布からお札を出した。
お爺ちゃん「そんな大切なお金は頂けないよ。
帰りにお母さんに花でも買ってあげなさい。」
花を買い。
お母さんに渡すとお母さんは喜んでくれた。
最近疲れてたみたいだから、、
もう少し私がしっかりしなきゃ!
帰った後直ぐに言われた通りに。
梟の人形に紙を付け、
『おまもり下さい』
と言い、玄関に貼った。
その夜は、不思議な夢を見た。
玄関に私は立って居た。
何故か玄関には鍵は掛かって無くて、
ゆっくりと、玄関の扉が開いた。
「駄目!!」
必死にロックに手を伸ばすも遅く。
扉は開いた。
怖くて瞑った目をゆっくりと開けると、
目の前には、大きな梟が立って居た。
「ぷくぷく??」
ぷくぷくが羽を広げ、首を横にかしげると、
白くて柔らかそうな羽は、私の周りを舞った。
『うぎゃあああ!!!』
悲鳴の様な声がしたのは、私の家の中からだった。
視線を外に戻すと、鍵は掛かって居て、
扉はきちんと閉まって居た。
ふと見た足元には、綺麗な白い羽が落ちていた。
そんなリアルな夢だった。
その朝は久しぶりに気持ち良く迎えられた。
背伸びをする私の手には、綺麗な羽があった。
私はぷくぷくを優しく持ち。抱き締めながら、
「ありがとう」
と言った。
何だかぷくぷくは少しだけ細くなった気がした。
あの後、御礼を言いに行こうとしたけど、
あったハズのあの御店は何処にも見付からなかった。
そして、あの公園に居たおじさんも。
玄関の紙もいつの間にか消えていた。
「ケシャン、、
風邪引いたかな??」
お爺ちゃん「きっと、あの娘さんが。
お前さんを探してるんだろうよ。
ここに人を入れるなんて珍しいじゃないか?
それにしても。だ、、
全部ワシに任せおって。」
「だからそれを買ってきただろう??」
お爺ちゃん「まあ、良いか。。」
他人に関心すら持たなかった者が。
こうしてお節介まで焼くようになったんだ。
これも弟子を持ったからかの、、
お爺ちゃん「それで弟子はどうじゃ。」
「まあ、婆さん所で色々聞いたみたいで。
飼ってるみたいだぜ?」
お爺ちゃん「婆さんも物好きだなあ。。
それにしても。"飼う"とは、まあ。
これからが楽しみじゃないか。」
「んー、、まあまあかね??」
団子を旨そうに食う。
お爺ちゃん「そのうち抜かされるんじゃないかい??」
「何を。」
モノには、魂が宿ると言われている。
ここにあるモノ全てに。
例外無く。それは、ある。
何かしらの生き物を象ったモノの場合。
手、耳、口、鼻、目、脚と言った、
それぞれのパーツが付いている。
だが。
その人形には、ひとつだけパーツが無かった。
いや。元々はあったのだろうが、、
呪物のひとつとして。
欠けたモノを扱う事があるが。
それをあえて、使う者達が居た。
人形は、それを嫌がった。
考えてもみたらどうだろうか??
元々あったのを無理矢理取られ、
今まであった感覚を奪われる苦痛を。
そして、他人を忌ましめる様な怨みの詞を。
永遠と投げ掛けられるのと、
愛のある言葉と共に愛されるのと。
どちらが良いか、、
呪物として扱うにはそれなりに力があったが。
不憫に思った今の持ち主が、欠けたモノを付けてやった。
すると、どうだろうか?
表情は優しくなり。
それどころか持ち主の災いを流す様になった。
モノにも魂があり。
持ち主がそれを望めば。
モノはそれに応えようとする。
何故なら、モノも愛されたいからだ。
モノに元々その様な能力が無くとも。
望まれれば。
その様になる場合がある。
人間の力。と言う者の方が多いが。私は、
モノが愛されたいが為に興す。と考えて居る。
だから嘗ての呪物は、今や呪物でなくなり。
持ち主を護る人形として。
今日も持ち主を見守って居るのであった。
それは、優しい持ち主が。
元気で生きられる様にと。
その人形が想ったからである。
持ち主もまた、より一層。
人形の事を可愛がったそうだ、、
「、、またな?
じゃあ。壺は貰って行くぞ??」
お爺ちゃん「花瓶じゃ馬鹿たれ。
割らない様にな。
身体に気を付けてな?」
「そっちもな?」
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