左手[後編]



私は、その禍々しさ故に身構えた。



その淀みは、恐怖すらも連想させた。




左手「ヤメトイタホウガイイゼ?




コイツノタメダ。」



「どういう事ですか?」



思わず。唾を飲み込んだ。




左手「オレノキオクハ、トギレトギレデシカナイガ、



ダイダイオレハコイツラノカラダニ、ヤドッテイル。




アタラシイシソンガデキルタビニ、



コウシテキョウセイテキニ、マモルヨウニサレテルンダ。




ソシテ、"サイアク"ガオトズレルトキ。




アルジサマニツタエテイルノサ。」




とてつもない『怨念』なのだろう、、



深い闇が彼から発せられる度に、



煙は逃げるようにして、空中を彷徨う。



「さいあく、、



とは?」



左手「ソレハ、ナッテミナイトワカラネエ。




ダガ、コウシテオマエノマエニ、



"ミチビカレタ"トイウコトハ、



オマエサンニモ、ナンカシラ。



カンケイシテイルンダト、オモウゼ?」




身体は"逃げろと"言わんばかりに、



拒絶反応を惹き起こしている。



私が彼だったら、、。



簡単に左手に喰われてしまっているのだろう、




「彼には何と、、?」 



左手「ベツニ。ドウトデモイエバイイサ。




ヒトツダケメイカクナコトハ、



"ナントカシヨウ"



トハ、カンガエナイコトダ。




コイツカラ、オレヲヒキハガソウトシタリ、



マンガイチニデモ、オレガコノカラダカラハナレタラ。




オレガコイツヲコロスカ、コイツノカラダガクチル。





「、、それで、アナタ様は。



良いのですか?」




とても長い間。



一族の為に。生かされ続けて来た。



自由等無く、そこに、ただ。縛り続けられる。




正直。不憫にすら思った。



私は多分。どちらかと言えば、妖寄りなのだろう。




左手「ハハッハッハ!



オマエ、、オモシロイナ?




ダイタイ。オレノコトヲニクンダリ、



オレヲムリニデモハガソウトシタリスルモンダ。



ソレガ、イイカワルイカダナンテノヲキカレルトハナ、。




カンガエモシナカッタサ、、。





左手はしばらく黙った。



「大丈夫ですか?」



きっと嫌な思いを。沢山。してきたのだろう、




役目というなの拘束を。




一族には強力な"留める力"がある。



私にはそれを解く事が出来ない、、




左手「ハハッハッハ。



ダイジョウブダ。




ナンカ、ナツカシイキガシテナ、、。




キットマタ、オマエトハアウヨウナキガスルヨ。




ジャアナ。ジュツシサンヨ、」



そう言うと、左手は黙ってしまった。



左手の正体が何なのか。



それすらも分からず、聞き出す事も出来なかった。




「はぁ~。」



大きな背伸びをして、眼を擦る。



爽やかな青年「何か、、わかりましたか?」



「すいません、、とくには、、」



顔が上がらない。



爽やかな青年「情報が少ないですしね、、」



彼は少し。残念そうな顔をした。



「ただ。ひとつだけ、言われた事があります。」



爽やかな青年「ほぉ!



なんでしょう。」



覗き込む様に、純粋な目は私を見つめる。




「干渉しない方がいいみたいです。」




目が点になる。



「あぁ、、。そうなんですね、」



変な空気になってしまった。



彼が知りたかった内容では無かったのだ。



そんなの調べなくとも分かる。




今回は失敗ばかりだ。




「左手の方はあなたの先祖から、ずっと。



そうして、護ってくれているみたいです。




だから、左手を。



大切にされてくださいね?」



爽やかな青年「そうだったんだ、、。



てっきり、何か悪さをするのかと。




ごめんなさい。」



そう言うと、左手に謝った。



彼等にとっては、"ワカラナイモノ"



そこをきちんと伝えなくてはならない事を。



改めて思い知らされた。




爽やかな青年「本当に、



本日はありがとうございました。」



「いえいえ。



また。何かありましたら連絡下さい。」



爽やかな青年「はいっ。




でわ。」




帰る姿は少し。



左手に敬意を払っているようだった。



不思議な力と共に向き合っていくのは、



そう。簡単な事ではない。




彼が帰ってしばらくして、師匠に電話をかけた。



「もしもし、、」



師匠「あぁ。どうした?」



「左手の彼の件なんですが、、。」



師匠「どうだった?」



「私の実力不足で、何も出来ませんでした。」



師匠「はははは。



ドンマイドンマイ笑



"アレ"がなんなのかは分かったのか?」



「いえ、、。私には、オーラしか。」



師匠「そうか。



まだまだ修行だな?」



「えぇ。すいません、、。」



師匠「そう落ち込むなって笑。



アレはな。




『邪眼』




だ。」



「邪眼、、。



ですか?」



師匠「そうだ。後はまあ?



自分で勉強しなさい。




また近いうちにでも。」



忙しいのか、そう。電話を切られてしまった。




「はあ。」



深いため息。それは、自分の無力さ故。



一服し、湯のみを洗う。




左手「ナツカシイヨウナ、アノカンカク。




カオスラモオモイダセナイ、ナンテナ、、」




ダイヲツグゴトニ、



コイツラノチカラハヨワマッテイル。



ハナシテモ、キコエナイヤツ。



ムリニハガソウトスルヤツ。




コイツハ、マダ。"マシ"ナホウカ。




ニンゲンニモ、イロンナヤツガイルンダナ。




爽やかな青年「護ってくれて、



ありがとうございます。」



見えないハズの何かを、ただ。撫でる。



左手「キモチワリイヤツダ、」




確かに存在はしているが、



交わる事の無い世界。



きっと。互いに分かり合うなんて事は、



この先にも、無いのかも知れない。




でも。そこには見えない"ナニカ"が。




きっとある。




言葉だけでは説明しようのない。




ナニカが。




















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