赤ん坊[前編]



基本的には、自ら手を差し伸べ、




困っている人や、救いを求める人達を




優先的に助けるが、憑いている理由や、




状況。その人の学びとなるモノは、




祓わず、成仏もさせずに、




離れさせるだけの場合がある。






その日はジメジメとしていた。




来訪者により、気候や天候等の状態は




あまり関係性のない事の方が多いが、




場合により、その様になる事もある。






それは、今から来る者が、




あまり良く無いからである。






「ったく、めんどくせーな、、」




遥々こんな糞田舎まで来て、




何で祓われなきゃならねんだか、、




金持ちそうな家しやがって、、




糞、。




「ん、ちゃぁー、」






あまり、よくない方が来られたかな、、




「どうぞ、、」




入ってきたのは俗にチャラチャラとした、




あまり好青年ではない様な方だった。




お茶菓子を出し、早速、内容を伺う。






んな、わけえやつだな、、




こんなんにやってもらうのか、、




本当に出来んかよ。




チャラ「えーと、、この間、




女が死んで、その前にも子供が死んで、、




それからなんか調子悪くて、だから来ました。




祓うってのやって貰っていっすか、」






たまに、こうゆう輩が来る。




祓って貰えば何でもいいと考えてる奴が。




実際問題。自分を変えられない奴は、




私が変えようとした所でまた元に戻るのが、




関の山ってものだ。




まあ、ボランティアとしてやってるから、




この人には少し懲りて頂くか。




「では、連絡させて頂いた通り、




煙草を扱わせて頂きますが、宜しいでしょうか、」






チャラ「勝手に、、




あ、俺もいいっすか。」




「すいません。終わってからでもいいですか?




それか、待ってますので門外でお願いします。」




チャラ「チェ、、だる。




始めて。」




「では手を合わせ、目を瞑り下さい。」






私は煙草に火を付ける。




「では、始めます。」




煙草を吸い、ゆっくりと吐く。







『我、汝を祓う者なり、




汝、彼から離れたまい、




我の元に姿を表したまえ、』







ゆっくりと、煙は流れる様に、場を侵略する。




男はめんどくさそうに、崩して座る。




5本目に入りかけた時、男が急に倒れ始めた。




バタン、、






すると、何処からか、音がする。




リンリン、リンリン。




天井の隅の方からゆっくりと、赤ん坊らしき子が




ハイハイしながら空間を自由に動き回る。




リンリンリンリン、






「まだ、憑いているな、、」




煙草に火を灯そうとした瞬間、




「やめろおわ!!」




低く、重い声が響く。




崩れた男性の背中から顔が半分だけ、




女性の惨たらしい容姿が私を睨む。




「貴女はどなたですか、、」






祓う前には大概、皆、祓われる理由がある。




だから、大抵は憑いている者らしき人の、




物や、写真等を持ってきて貰うようにするが、




中には持ってこない者もいる。




それは何故か、






単に忘れたと言う場合もあるが、




"知られたくない事があるから"




と、言うのが一番型にハマる。






先日のおじいさんの場合は、




手紙で郵送されたモノがあったので、




スムーズに出来た。




だが、今回は少し厄介だ。






女性「やめろおわ、、」




リンリンリンリン、




赤子は私の周りを回る。




リンリンリンリン、




女性は顔の下からそれ以上は、




出て来ようとはしない。




「何故彼に憑く。」




そう言うと、鬼の様に睨みを効かせる。




女性「憎い、、憎い!!」




リン、リン、リン、リン、、




赤子はゆっくりと、女の前に座る。




「貴女の子か?」




女性は我に返る様にふと、思い出す。




リンリン。




その瞬間、彼女達の記憶が流れてくる。






私は生れた環境があまり良くなかった。




酒癖の悪い父親と、産んだだけの母親。




父親がパチンコに行ってる時だけが、




とても幸せだった。




毎日喧嘩が絶えず、小学校を卒業する頃には、




私を置いて母親は出ていった。




食べ物はろくに与えられず、




着るものも母親のぶかぶかのを着た。




何度も、児相が来るも、ただ、




形だけの仕事をするだけで、




その度に暴力を振るわれた。






母親の次は私だった。






中学生になり、それなりに身体が発達すると、




父親は私の体を触る様になった。




最初の時、一度だけ反発した。




「やめて!!」




そう。それをしなければ良かった。




「んだ、てめえ!!!




食わせてやってんのは誰だ!?




あん?」




死ぬかと思った。




口の中は血の味しかせず、




引っ張られた髪は音を立てて、




父親の手の中へとおさまる。






そのまま私はレイプされた。






それからは毎日それの繰り返し。




酒が切れると暴れ、終いには、




売春をさせられ、中学を卒業間近になり、




ホテルに入る所をPTAにバレて、捕まった。






私はもう家には帰れなかった。




何をされるか分からない。






余計な事をしてくれた。






迷惑だった。






皆。知らない。






見せ掛けの正義は、時に




寝ている獰猛な獣を、




叩き起こしてしまう事を。






児相や、PTA、学校、警察、近所の者まで、




私を汚い者を見るかの様に見てくる。




「女の子なんだから!そうゆうことはやめなさい!」




別にやりたくてやった訳じゃなかった。




「どうしてこうなっちゃったかね、」




どうしてこうなったのだろう、




「男に体を売るなんて、、そんな子だったなんて、」




別に売ってた訳じゃない。




売られただけ。




そんな子ってどんな子、、




「男が全面的に悪いけど、君もしっかりしなきゃね、」




しっかりする?、しっかりしてたから、こうなった。






「嫌だ、あの子よ、売春の。」




見て見ぬ振りをしていた人達が次は私の悪口ですか、、






父親は捕まり、私は施設へと入れられた。




こうして、薬付けの日々が始まり、




その中ではそれがただ繰り返されるだけだった。
























































  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る