第3話 異世界に転移したら即チートスキル発動してゴブリン相手に無双しました

美少女を巡る決闘

「お〜いおいオオタっち」

「誰がオオタっちじゃ、なれなれしいんだよっ!」

今、俺の住んでるゴブリン家には、何故か勇者ゴンスがやって来ていた。

「そもそも何でいるんだよ」  

「いやー何か色々と誤解してたみたいだし、そのお詫びを」 

「嘘つけ」

つーかお前の誤解は解けたかもしれないが既に広がった噂はどうする事もできないんだよっ!

「あ〜あ、早く帰って来ないかなー。ナタージャって人、すごい美少女なんだろ?」

「人じゃなくてゴブリン。つかそれが目的か」

「いやいやそうじゃないって。……果物とか肉とかいっぱい持って来たろ、お詫びお詫び」

「……まぁいいけど」

……くそっ、うまそうだっ、思わず涎が出ちまう。

〈ただいまああぁあぁぁぁあ!!!〉

「う、うるせぇ!」

ゴンスと俺は反射的に耳を塞ぐ。

こ、これは……恐らくナタージャさんの叫び声か?

「やべ、そういえば何もしてねぇ」

現世にいた頃は典型的な陰キャだったから、久しぶりに会う人へのサプライズとか解らねぇ!

「ただいまー」

と思っていたら速攻でナタージャさんが玄関の方まで来ていた。

「おー懐かしき我が家……ん?何ですかその人間」

「あ、この人はまぁ……友達っていうか」

「ども!勇者のゴンスですっ」

「へー!友達できたんですかぁ。良かったてすね」

そう言ってナタージャさんは満面の笑みを浮かべる。何て良い娘なんだろうか。

「そういえばおばばさんは?」

「ばっちゃなら村の人達と談笑してますよー。……ん、おーベロ。寂しかったかー?」

大興奮したベロがナタージャさんに飛び掛かる。いやー良かった良かった。

「おい……ちょっと」

ゴンスがちょいちょいと俺を部屋の隅に手招く。 

「え?何?」

「すげぇ美少女ゴブリンだな。あの娘を狙ってるんだろ?」

「なっ!狙ってるっていうか……。まぁ、すげぇ美人だと思うけど」

「良し、お詫びの第2フェーズだ。俺に任せなっ!」

「は?」 

「俺は今からナタージャちゃんに結婚を申し込む」

「はぁっ!?」

あまりに唐突な発言に反射的に声を上げてしまい、ナタージャさんが不思議そうにこっちを見る。

「静かにしろって!……とにかく、俺が結婚を申し込んだ後、お前も即プロポーズしろっ」

「え、えぇ?」

「そこから決闘→俺がワザと負ける→ナタージャとお前が婚約→妊娠→結婚の流れだ」

「いや、そんな上手くいくかぁ?しかも結局

デキ婚だし」

「いーからやれってーの!わかったか?」

「お……おぅっ!」

ゴンスの気迫に負けて思わず返事をしてしまう。だが俺のためにここまでしてくれるなんて、はじめはチャラチャラした印象だったが、もしかしてすごく良い奴かもしれない。

「あの、ナタージャさんっ。俺、ゴンスって言いますっ!」

「え?さっき聞いたけど」

「俺と結婚してくださいっ!!!」

「却下。散歩行こっかベロ!」

「ちょっと待った〜その結婚っ」

俺は颯爽と二人の前に現れる。

「いや、してないですけど」

「ナタージャさん、そんな奴より俺と結婚して下さい!」

「え……///」

ナタージャさんの顔が真っ赤になる。よし、この勢いでもうひと押しだ。

「よぉ〜し勇者ゴンスよ、ナタージャさんを賭けて決闘だっ!」

「望むところだああぁぁぁっ!」

ゴンスと俺は激しく睨み合う。

「あ〜待て待て」

「え?」

部屋の奥から俺達に声が掛けられた。

振り返ると、サイジャ君が頭を搔きながらこっちを見ている。

「あれ、サイジャ君寝てたんじゃ?」

「アネキの声で起きちまった……。それよりアニキ!その決闘俺も交ざるぜっ」

「えぇ!?」

「いずれゴブリンの王になるアニキには、もっと知性のある女がふさわしいはずだ」

「も〜邪魔しないでよサイジャ!私とオオタさんは運命の赤い糸で結ばれてるんだからっ」

「一目惚れしただけだろーが、薄っぺらいんだよ」

「な、それを言うならサイジャだって」

「俺はアニキとコイツ(ゴンス)を退治した思い出があるもんね〜」

「むむむ……」

「おいおいクソガキ、俺がいつお前に退治されたよ、調子に乗をじゃねぇっ!」

「あぁ!表でろこのクソ勇者っ」

「上等だ、ボコボコにしてやらぜオオタ!」

「え〜……」

「頑張って下さいね、オオタさんっ!」

「は、はいっ!」

……いや、勝機はある!

ゴンスとサイジャ君が戦ってる隙に漁夫の利を得るか、もしくは俺を慕ってるサイジャ君を丸め込んで……。

「よし、行くぞっ!」

俺は意気込んで家を飛び出した。

         ┋

         ┋

         ┋

「めちゃめちゃ普通に殴ってくるじゃん……サイジャ君」

「すまねぇアニキ……。これもアニキのためだ」

俺とゴンスは地面に大の字に倒れていた。

「まぁというわけで婚約はナシの方向で」

「しょ、しょんな」

ナタージャさんが膝から崩れ落ちる。

クソ、俺が不甲斐ないせいで…。

「な〜にやっとんじゃお前ら」

遠くの方で一部始終を見ていたおばばさんが近づいて来て、呆れ顔で俺達の顔を覗き込む。

「ま、ナタージャが欲しかったらゴブリンの王になるくらいの気概を持たんとな」

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ザ ゴブリンキング ざきお @peaper-lover

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