リザードマン

「逃げて下さい!ゾンビがっ!」

「え?ゾンビぃ〜?」

俺はのんびり農作業を続けてるおばあさんに迫りくる危機を知らせる。

だがおばあさんは農作業を全く止めず、その間もゾンビは涎を垂らしながらどんどんこっちに向かってくる。

「ちょ、だからぁ!ゾンビが来てますって!」

「ん〜?」

遂にゾンビはおばあさんの眼前まで迫り、今にも襲いかかろうとする。

しかし逆におばあさんはゾンビの方に歩いていき…。

「フンッ!!」

ゾンビの頭を一撃で吹き飛ばした。  「え…」

ブシャアアアト返り血がこっちまで飛んでくる。

そ…そうか。のほほんとした雰囲気に騙されていたが、ゴブリンはゴブリン…。

だ…だが。

「ウ゛ア゛ー」

後ろから更なるゴブリンが大量に発生する。クソッ、マイ○クラフトかよっ!

「ちっ、これはちとワシの手に余るかねぇ」

「ふ、増えすぎでしょ!」

いつの間にか俺達の後方からもゾンビが迫りくる。

「か、囲まれたぁ!」

クソ…!異世界だってのに、何のチートスキルも持たない俺はこんな所で死ぬのか…。それは嫌だ!目覚めろ俺の主人公補正っ!

「キタキタキタァ!!」

「グォラァァァ!」

「え?」

突然後ろからドシンドシン!と音がして、地面が揺れる。振り向くと、ベロちゃんに乗ったサイジャ君がこっちに突っ込んできていた。

「死ねぇ〜!…もう死んでるか」

そしてベロちゃんから飛び降りたサイジャ君はゾンビを次々と捻り潰していく。

しかもベロちゃんはゾンビの踊り食いまで始めた。

「あ、まじか…」

これもうスキルとかいらねーな。つか俺が異世界に来た意味あんのかな…。

「よーしワシらも久しぶりに運動しよかねぇ」

いつの間にかゴブリンのおじいさん達がゴキゴキと腕を鳴らしながらこっちに来ていた。

「よっしゃー!暴れるぜぇ〜!」

そこからは一瞬だった。ゾンビ達の血祭りが開催され、のんきな田舎町は死屍累々たる有様に変わる。

「ん〜うまい」

サイジャ君がゾンビの腕をバリバリと食う。

「って、何してんのっ!!」

「ん〜?まぁ、俺らにとっちゃ唯一人肉、もといゾンビ肉が食える機会だからなぁ」

「あ、そっすか」

「どれ、アンタもやってみるかい、ほれっ左足」

「おいおいおばさん〜アニキは人間だって〜」

「ありゃ、こりゃうっかりしてたね〜」

「HAHAHAHAHA!」

「はは…は…」

皆、楽しそうに笑っているが…。

それと同時にゾンビの死体解体ショーが進行する。

「これがゾンビ茸のいい苗床になるんだね〜」

「へ、へぇ〜エコロジーですねぇ〜」

俺、この村でやっていけるだろうか…。

         ┋

         ┋

         ┋

それから数日経った。まぁ色々と不慣れな事や驚く事もあるけれど、何とかこの村に馴染んできた。基本的にゴブリンのおじさん·おばさんは良い人達だし、農業素人の俺にも根気よく教えてくれる。

「ふあ〜あ」

欠伸しながら体を伸ばすと、体の節々が痛んだ。つか結構運動してるのに一向に痩せないな…。

「よ〜し、今日もやりますか…ん?」

顔を洗って一日の準備をしようとすると、玄関の方に黒い影が佇んでるのが見えた。

「サイジャ君…か?」

恐る恐る話し掛けてみるも、返事はない。黒い影は蹲まっている様に見える。…具合悪いのかな?

「おーい、大丈夫?」

よく見ると、黒い影は明らかにサイジャ君より大きく、硬そうな鱗肌に、人間ではありえない、伸びた大きな口を持っていた。

「これは…リザードマンっ!?」

よくRPGのザコ敵として出てくるあの有名な…!まぁ有名でもないけど、そこそこ知られてるリザードマンが目の前に!

俺はおっかなびっくり近づいてみる。だがリザードマンはぴくりとも動かない。

「え…死んでんの…?起きてますかー?」

安否確認のためにつんつんと突っついてみるも、無反応のままだ。もしかして喋れるないのか?

はっはーん、さてはナタージャさんのもう一匹のペットかな?家出したのが帰ってきたとか…。

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