第2話
とある大学の講義室では、眠くなるような声で講師が説明をしている。周りは、恐らくであるが、1/3くらいは寝ているだろう。時々イビキのような音も耳に入ってきていた。
少しばかり喧しいとも感じたが、"私"はさほど気にならない。ある事に集中しているからだ。
「それじゃあ今日はここまで」
少しの後、ようやく講義が終わったのか、周りの人間が席を立ち始める音が耳に入って来た。
「青菜、もう講義終わったよ?」
「え?もう?」
友人の声に反応して。私はやっと講義が終わった事を理解する。声を掛けた女性の友人は、足早にこっちへと向かってくる。
「アンタ、またスマホ弄って…どうせまた大好きなweb小説でも読んでいたんでしょう?」
「何で決めつけるのよ。…まあ、そうなんだけど」
"青菜"と友人から呼ばれているが、これは私のあだ名だ。
本名は青葉 菜月 (あおば なつき)と言う。苗字と名前の頭文字を取って、"青菜"と呼ばれているのだ。決して野菜ではない。
「講師にバレなかったからいいものを…それより、これから合コンに行くんだけど、青菜も来る?」
合コンと言う言葉を聞いて私は顔を顰める。
「…行くと思う?」
「いいや全く。一応聞いてみただけ。はあ…せっかくの花の大学2年生なのに遊ばなくてどうするのよ…」
友人がこめかみを指で押さえながらそう言う。…こっちとしては余計なお世話だ。
「…別に、興味ないだけだし」
本当に興味が無いのだから仕方がない。知らない人同士でいったい何を会話すればいいのだろうか?
「あんた、素材はかなり良いんだからもっとオシャレしなさいよ。何よその大きい黒縁メガネに全身黒色の服は。肌色が殆ど見えてないじゃない」
「いいの。ほっといてよ。私は別にモテなくても良いんだし…」
私がそう言うと、友人は一層困った顔になる。
「全く…それで、授業中ずっと見てた様だけど何か面白い作品でもあったの?」
友人にそう聞かれ、私は不機嫌な顔から少し顔がニヤけ顔になりながら頷く。
最近、掘り出し物を見つけた。いつものように新着欄を漁っていたら、興味深い作品を見つけたのだ。
「うん、まだ全然有名じゃ無いんだけど、中々面白かったよ?」
その作家さんはどうも小説を書き始めたばかりな様だったが、読んでいてとても心が躍った。様々なweb小説を今まで読んで来たが、私が毎話ごとに感想を返すなんて初めての事だった。
すると、友人が驚いた顔をする。
「ほー、じゃあアタシも、読んでみよっかな」
友人は茶化す様にそう言う。それを見て私は深い溜息をついた。
「はぁ…優里香、小説読まないじゃない……」
友人こと優里香は、文字が苦手な子だった。
僕の小説に、初めて感想をくれた人 浅井誠 @kingkongman
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