第1話


 感想が付いたとなると、更に筆が乗った。単純な話だが、誰かも分からないユーザーに褒められた事でモチベーションが上がったのである。

 暇潰しで始めた小説活動だが、これが案外に楽しい。自分で考えた設定に沿って、自分の妄想を曝け出す。言葉は悪いかもしれないが、そんな自分の世界を認められたような気がしてやる気は有頂天に達する。

 数多の小説があるこのwebサイトで、沢山の人が小説を書き続ける理由はそこなのだろう。

 自分でも驚くくらい執筆活動にハマってしまっていた。

 5話を執筆したが、件の"チンゲン斎"さんは毎話ごとに感想をくれた。

 "展開のテンポが良くて楽しいです"

 とか、

 "予想外の展開でびっくりしました"

 とか。

 ただ作品を褒めるだけで無く、この話の、何処が良かったのかなどを的確に教えてくれた。

 「小説に詳しい人なのかな……」

 そんな独り言が出る。この人は一体何者なのだろうかと気になって来た。


 このweb小説サイトではお気に入り登録と言うシステムがある。自分が気に入った小説をお気に入り登録する事で、作者を応援すると言うシステムだ。

 今のところ、このお気に入り登録人数は3人。チンゲン斎さんを入れて3人だ。別に趣味で始めた事なので、そこまで気にならないが、もっと伸びて欲しいと思う事もある。

 小説を書くと言うことは、結構な労力を使っているのだ。

 「もっと、伸びないもんかねえ」

 そんな事を言いながら6話目を投稿する。モチベーションはあるのだが、もっと自分の物語を多くの人に見て欲しいと言うのが正直なところだった。

 

 

 「お、また感想書いてくれてる」

 翌朝、自分のページをチェックしていると、やはりチンゲン斎さんから感想が来ていた。

 "今回は落ち着いた感じの話でしたね。今まで激しい展開だったので逆に新鮮でした。次も期待しています!"

 いつも通りの具体的な感想を貰う。

 「あー、ちょっと温度差が激しすぎたかな?」

 自分で意識してやったつもりは無く、こうやってチンゲン斎さんに指摘されてから気づく事もある。

 本当に僕の作品を好いてくれているのが嬉しい。ニヤける顔を隠そうともせず、感想を返す。

 "いつも感想ありがとうございます。自分では意識していなかったのですが、指摘されて今気づきました!今後の参考になるアドバイスをありがとうございます!!"

 そうパソコンに打って、送信ボタンを押す。いつものやり取りだ。これだけでも小説を書き続ける甲斐があると、僕は感じていた。


____ピロンッ____

 

 すると、パソコンからそんな音がする。いつも使っているSNSやメールの着信音では無かった。

 パソコンの画面を確認してみると、お知らせのアイコンの場所に、何やら通知が来ている。

 「……なんだ?これ?」

 開いてみると、"チンゲン斎さんから、DMが届きました"との文字が書いてあった。DMとはダイレクトメールの略で、個人的な連絡に使うものだ。

 チンゲン斎さんからのDMは初めてで。少し驚く。早速開いてみると、こんな内容が記されていた。


 "いきなりのDMすみません。チンゲン斎です。私からしのっちさんに提案があるのですが、投稿時間を変えてみてはいかがでしょうか?"


 投稿時間?今まで余り気にしていなかった単語が出てきた。


 

 

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