かどまるくん(文房具)
文房具で一番好きなの「かどまるくん」なんですよね、だって角を取ってくれるんですよ最高じゃないですか?佐野さんが言った瞬間、文具博の話題で盛り上がっていた空気がシュッと冷えた。
「名前もかわいいですよね、でも“くん”なんですよね、男の子なのかな、いまどきジェンダーって感じじゃないですか?」
そのころにはもう、向かいの席の羽島くんはキーボードを高速で叩き、その隣の主任は、係長この資料これでよかったですかと大きめの声で言い、隣の西尾さんはプリンターの方へ向かっていた。洗おっと、と言って佐野さんがマグカップを持ち出て行くのと同時に、誰かが小さな失笑を漏らした。
廊下の角を曲がったところに共有の文具置き場がある。壁にくっつけて置かれた背の低いキャビネット。佐野さんはカップを持ったままそこに佇んでいて、ああ、知っているんだと思った。「かどまるくん」が正しい名前じゃないことも、部署の中で自分がどう思われているのかも。黙ったまま通り過ぎた背後から、ばちん、とかどまるくんがなにかの角を取る音がした。
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