兄妹VS魔物マグリース

「夜那!」


 そこへ、夜斗が駆けつけた。夜那はすぐさま、魔物の情報を伝える。


「にぃ! 弱点は火で物理も有効。でも外殻は固いよ。それと、前足の鎌は素早いから気をつけて!」

「りょーかい」


 夜斗は走りながら銃のグリップに火の魔晶石をはめ込み、銃口を向けた。


「フレイム・ショット!」


 マグリースは夜那の攻撃から、体制を直そうともがいていた。そんな無防備な状態であったため、夜斗の放った炎の弾丸は、残りの前足の鎌を難なく撃ち落とした。


「ギエェェェ!!」


 マグリースは痛みで、さらにのたうつ。

 夜斗は続けざまに引き金を引くが、最初の一発以降、すべて外殻に弾かれてしまう。


「固すぎだろ」

「だから言ったじゃん」


 夜那の隣に並んだ夜斗が、背後の荷馬車を一瞬だけ確認する。


「イザナさんは?」

「荷台の中で、怯えてるよ」

「声はかけてやったか?」

「なんで?」

「……いや、いい」


 不思議そうに首を傾げる夜那に、夜斗は追求をやめた。


(中に避難させただけマシか)

「ジャア! ギジャアアア!!」


 ようやく起きあがったマグリースは、ひときわ鋭く叫ぶと、深く息を吸い込む。


「にぃ、避けて!」


 夜那の声に、夜斗は左へ、夜那自身は右へと飛んだ。


 ブシュウゥゥ!


 二人がいたところに、マグリースは勢いよく、濃い緑色の液体を吐き出した。液体がついた地面からは煙が上がる。


「毒か」


 夜斗は冷静に、分析する。


「飛距離はそんなにないね。鎌がなくなったことで、攻撃手段を変えてくるかも。早めに片そう」

「だな。俺が引きつける」

「ん」


 夜那の返事を聞いて、夜斗はマグリースに向かって走り出す。魔物も、自分に向かってきた夜斗に標的を定め、攻撃を仕掛けてくる。


「てめぇは、これでもくらっとけ。フレイム・バレット!」


 炎の散弾が、マグリースを襲う。外殻で弾かれるも、一発が顔に直撃し、動きを怯ませる。


「残りの足も、削ぎ落としてやるよ。焼き尽くせ。業炎波ごうえんは!」


 夜斗が縦に放った炎の衝撃波が、魔物の四本あるうちの二本を焼き斬る。


「ギエェェ!」

「夜那!」


 夜斗の声に応えるように、夜那の足元が赤く光る。


「赤き花を咲かせましょう。火岸花ひがんばな!」


 真下から高く火柱が上がり、マグリースを包む。


「キシャアアァァ……」


 マグリースはか細い悲鳴を上げながら、小さな光の玉となって霧散していった。

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