夜斗VS盗賊 2

 夜斗は襲ってくる盗賊たちを見て、ため息をついた。


「動きに無駄がありすぎる。所詮しょせんは小者の集まりだな」


 夜斗は体の重心を下げ、剣の柄に手をかける。そして目の前に迫っていた四人が並んだ一瞬の時に、勢いよく鞘から抜き放つ。

 空に四つの首が飛んだ。

 そのまま流れるように、夜斗は体を反転させ、背後から襲ってくる男たち三人に魔晶銃ましょうじゅうの銃口を向ける。


「ウィンド・バレット!」


 風の散弾が、三人の眉間を撃ち抜き、血しぶきをあげて地面に倒れた。


「「っっ!?」」


 血を流して動かなくなる仲間たちを見て、残りの盗賊たちは思わず足を止める。


「ま、マジかよっ」

「一瞬で、七人も……!」

「お、おい、剣と銃で戦う男。こいつ、まさか……!?」


 心当たりがあるのか、盗賊の彼らは一歩、また一歩と後退る。

 恐怖に顔を歪ませる盗賊たちを見て、夜斗はニヤリと不敵な笑みを浮かべた。


「へぇ。俺のこと、知ってるんだ。やっぱ二つ名のほうが有名なんだな」


 夜斗は手の中で銃を遊ばせる。

 大剣を持っていた男は、冷や汗を大量に流しながら、武器を投げ捨て、夜斗に命乞いをした。


「ま、待ってくれ! もう、街道を通る奴らを襲ったりしねぇ! 盗賊業からも足を洗う!! だから、だから命だけは!!」


 夜斗は眉をあげ、顔をひそめる。


「おいおい。俺が命乞いをしても許さねぇんだろ? なのに自分はするなんて、都合良すぎじゃねぇか? それに言っただろ。俺はお前らを潰しにきたってよ。さあ、次はどいつだ?」

「ヒィィィ!!」


 夜斗の放つ殺気に、リーダーは情けない悲鳴をあげて、真っ先に逃げ出した。


「お、おい! 置いてかないでくれ!」

「待ってくれよ!」


 リーダーを追うように、手下たちも逃げていく。


「逃げるなら、最初から来るなっての」


 夜斗は悪態をつきながら、剣についた血を、殺した盗賊の服で拭い、鞘に納めた。そのまま、七人の死体の腰袋を取る。袋を逆さにすると、銅貨が落ちてきた。


「チッ。シケてんな。七人合わせて二千五百ギルかよ」


 文句を言いつつも、夜斗は自分の財布である袋に、ざらざらと入れる。


「ん?」


 夜斗は、盗賊たちの袖口から見え隠れする刺青に気づいた。


「二匹の蛇と、これは十字か? なんか趣味わる」


 夜斗が見つけたのは、十字に二匹の蛇が絡みついた独特な刺青だった。それは全員の二の腕に、彫られていた。


「セプスクルクス、だったか? もしかして、それのシンボルかもしれねぇな。ま、とっとと片づけるか」


 夜斗は死体を、通行の邪魔にならないように、脇の草むらに押し込む。

 その時、夜斗はこめかみに、ピリッとした痛みを感じた。


 夜斗と夜那は双子。そのため、どれだけ離れていても、互いの状況をうっすらとだが感知することができた。いわゆる、精神感応現象せいしんかんのうげんしょうだ。


(夜那のほうで、なにかあったか?)


 夜斗はすぐさま、来た道を引き返した。

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