夜斗VS盗賊 1

 夜斗は盗賊を探して走り続けていたが、殺気を感じて足を止めた。剣の柄に手をかけながら、周囲を見回す。


(気配的に、十人くらいか。夜那の言う通り、この近くを縄張りにしてる盗賊だろうな)


 夜斗は声を張り上げる。


「出てこい、盗賊ども! 姿を隠していても、気配がダダ漏れだぜ?」

「ほぅ。ずいぶんと生意気な口を聞くじゃねぇか」


 夜斗の挑発に乗って、隠れていた盗賊たちが現れた。服は汚れており、彼らの手にある剣や斧などの武器は、手入れをされている様子もない。夜斗は注意深く、彼らを見つめる。


「俺たちにわざわざ声をかけてくるなんざ、てめぇはよほど、腕に自信があるみてぇだな?」


 大剣を担いだリーダーと思わしき男が笑いながら言うと、周りの仲間もニヤニヤと笑う。


「当然だろ? ま、小物しか狙えない弱いおまえらなんて、俺が本気をだすまでもないけどな」


 夜斗は不敵な笑みを浮かべる。


「んだと!?」

「ナメてんじゃねぇ!!」

「てめぇ一人で、俺たちを相手にするってのか!?」


 手下たちが怒鳴が、夜斗は鼻で笑った。


「そんな自信たっぷりなおまえだが、どうやらオレたちが誰だか、わからねぇらしいな」

「あ?」


 夜斗はリーダーに、胡散臭そうな視線を向ける。


「俺たちはエルマーのお頭率いる、セプスクルクスだ!」

「……いや。知らねぇ」


 夜斗はしばし考え込むが、きっぱりと断言した。


「お、オレたちを知らねぇってのか!」

「どこの田舎もんだ!」


 盗賊たちがわめく。


「うるせぇな。てめぇらの知名度が低いだけだろうが。そんなに名前を広めたいんなら、もっとでかい獲物を狙えよ雑魚」


 夜斗は耳をふさいで煩さをアピールする。そんな彼の態度に、男は怒りと羞恥しゅうちで顔を真っ赤に染め上げる。


「オレたちはお頭に、金目の物さえ奪えばいいといわれているが、ここまで馬鹿にされて黙ってられるか! 命乞いをしても許さねぇ。殺してやる!!」

「ところで、賞金首だったら〝暁〟のこと、うわさ程度でも聞いたことあるか?」

「あ?」

「暁だ? 聞いたこともねぇな」


 手下たちの反応に、夜斗は苦笑する。


「知名度が低いのは、こいつらとどっこいか。まぁ最近、そう名乗りだしただけだから仕方ねぇか」

「ごちゃごちゃと、意味わからねぇことばっかり言ってんじゃねぇ! おめえら、殺っちまえ!!」

「「おおぅぅ!!」」


 リーダーの命令で、手下たちが夜斗に襲いかかる。

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