兄妹の過去 3
夜斗は転売され続けた結果、デュー山脈を越えた先にあるカザル帝国の貴族に買われ、手酷い扱いを受けながら
夜那は甘えるように、顔を夜斗の首筋にすりつける。
「ねぇにぃ。私は脱走に失敗して、生贄にされちゃったけど、キベリアスに丸呑みされる前に、にぃが助けてくれたでしょ」
剣闘士として力をつけた夜斗は主人を殺し、五年かけて村へ戻った。そして両親をキベリアスに与え、その隙に夜那を救い出したのだった。
「だが、夜那の体は、変わっちまった」
「でも、すぐに再生する体になったから、魔力保持量が
夜那はぎゅっと夜斗を抱きしめた。
「すべては必然。起こるべくして起こったこと。それに、あの過去があるから、今の私たちがあるんだよ」
「……あぁ。その通り、だな」
夜斗が腕を解いたので、夜那も力を緩めた。すると夜斗は、両手で夜那の顔を包み込んで、額同士をくっつける。
「もう、あんな思いはしたくない。なにがあっても、相手が誰であっても、必ず助けるから」
「わかってるよ。私だって、にぃと同じ気持ち。なにより、今はなにもできない子供じゃないんだからさ」
「そうだな」
ようやく、夜斗は小さな笑みを見せた。
その時、夜那の前に小さな赤い玉が現れた。
『この先に、殺意を持ったやつがいるぞ』
「うん、わかった。ありがとう」
夜那が礼を言うと、すぅっと消えた。
「
「うん」
小精霊とは、
本来、
今、夜那の前に現れたのは、火の大精霊イフリートの眷属、小精霊フエゴである。
「それで、小精霊はなんて?」
夜斗は精霊の声が聞こえない。なので、夜那がいつも仲介をしてやるのだ。
「敵だって」
「そうか」
夜斗は夜那を下ろして、立ち上がった。脇に置いてあったバスターソードの鍔に赤色の結晶はめて腰に差し、銃のグリップに緑色の結晶をはめ込み、ホルスターにしまう。
夜斗の銃は通常の弾丸ではなく、大気中に存在する魔力が年月を重ねて結晶化した魔力結晶体、
魔晶石はそれぞれ色で属性が決まっている。火は赤。水は青。風は緑。土は橙。光は黄。闇は紫。補助の防御系のものは無色。力が強いものは虹色の輝きを放つ。
ほとんどの人間は、一つまたは二つの魔晶石しか使えないが、夜斗は全属性の魔晶石を扱うことができた。そのため夜斗は剣のほうにも、魔晶石をはめられるようにしている。
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