第121話 密かなる再会
~笠間 潤輝side
「――ふむ。思いの外、抵抗が激しくね? なんか妙な流れだな」
ボクは単独で塀に昇り、上から戦況を眺めている。
司令塔の『赤鬼』であるボク自らが戦う理由もないからね。
これぞ高みの見物ってやつだな。
あれから。
上級国民である飯田達と取りき日をし、ボクらは夜まで待つことにした。
『青鬼』の
そして打合せ通り、上級国民達がこっそりと正門の施錠ロックを解除する。
何でも、この屋敷に招かれる際に『
まさか、カイル様は最初っから全て見越して連中を避難させていたのか?
だとしたら、目的は偽物である自分の痕跡を消すのではなく……。
――なるほど、そういうことか。
ボクは与えられた任務の意図と思惑を理解するも、それ以上考えるのを止める。
深入りすると、また『白鬼ミク』に悟られブチギレられてしまうからな。
それに連中がどうなろうと、ボクには一切関係のないこと。
好きにやっちって~♪
って感じ。
翔太と穂花は30体ほどの『青鬼』達を引き連れて、予定通りシェルターへと向かった。
内部から攻め込み屋敷内を陥落させようとする作戦だ。
今朝、上級国民達が出入りしていた別館駐車場からエレベーターで侵入できるらしい。
その施錠やパスコードも、わざわざ奴らが解除してくれていた。
シェルターへ入り込み使用人達を襲いつつ、そのまま屋敷内を襲い崩壊させる。
まんまと人間達を取り込み協力させることに成功した。
全てボクの手柄だ。
同じ『赤鬼』でも戦闘狂の脳筋である、翔太と穂花ではあり得ないだろ?
学年カースト一位は伊達じゃないっつーの!
だからミクちゃん、頼むからボクを評価してくれよ~。
そういや、今回手柄を立てたら、ボクに何かしてくれるんだっけ?
あまり変なことを考えると怒られるから楽しみに待っておくか。
そんな感じで、ボクは予定通りに『青鬼』達に指示して雪崩れ込む形で攻め込んだってわけだ。
けど。
――やっぱり妙だな。
襲ってきた時は、ボクら側が圧倒して攻め込んでいたのに、あれから状況が進展しない。
気付けば膠着状態、下手をしたら着実に数を減らされてないか?
一応、空腹の『青鬼』達には「使用人達が感染しても、構わず食らうように」と指示を与えておいた。
それも与えられた任務に含まれているからだ。
きっと、西園寺家に関わる者を全て抹殺する計画なのだろう。
そう考えれば、さっき考えるのを止めた『上級国民達』がどうなるか想像もできる。
しかし、確実に『青鬼』が斃され数を減らしているが、『赤鬼』であるボクにはわかるんだ。
それに銃撃音が変わった。
散弾銃や猟銃の単発音だけでなく、美ヶ月学園で聴いた
――何者かが関与している。
おそらく上級国民達が言っていた、唯織が連れてきた『仲間』だろうか?
ボクは塀の上から目を凝らす。
特に身体が強化された『赤鬼』なら、人間よりも視力も向上している。
思った通りだ。
使用人達は武器を持ち換えていた。
日本じゃ、まず手に入らないだろう
例の『仲間』が手配したってわけか。
しかも何だ?
やたらすばしっこく、ツィンテールの小さな女の子が歪な形をした
背負っている
したがって使用人達も弾切れを起こすことなく、
「一体なんなんだ、あのガキは!? おや? あれは――」
ボクはさらに奥側で
一瞬、夜陰で誰かわからなかったが、銃口から発砲する際の火花と、そのシルエットですぐピーンときた。
特にあの見栄えする二つの見事な巨乳……。
「間違いない! ボクの幼馴染――イオネェこと、西園寺 唯織だ!」
感動の再会に、ボクは思わず喜悦の声を発する。
でもあれ? 何か変じゃね?
唯織の奴、あんなに強かったか?
それに何やら奇声を発して笑いながら、二丁の
確かに空手の有段者でおっかない女だったけど……。
あんなサイコパスなキャラだっけ?
そしてもう一人、妙な女がいる――。
形状が異なった二丁の拳銃を両手で掲げ、まるで
長い髪を優雅に靡かせ、美ヶ月学園制服を着た女子高生だ。
しかもスタイルも抜群じゃないか。
「何者だ、あの女……どかで見たことがあるような……クソッ、月明かりの逆光が影になって顔がわからないぞ」
ボクは愚痴りながら集中力を上げ、釘入るよう女子高生の顔を見据える。
もう少しで輪郭が判明するだろうと思った。
その時だ。
――バシュ
額、いや頭頂部だろうか。
不意にボクの頭部が抉れて穴が空いた。
「なっ――!?」
一瞬で身体の力が抜け落ちる。
体勢が仰け反ってしまい、そのまま塀から敷地の外側へと落ちてしまう。
高所から落下し、受け身も取れず地面に激突した。
首の骨を含む、肩やら背中の骨が何本か折れるのを実感する。
幸い
だが脳の一部が破損したのか、思うように身体に力が入らない。
「……な、何だ、クソッ!? 何が起こった!? まさか……ボクは撃たれたのか!?」
バカな!? このボクが!?
そう考えながら、ボクは頭部を確認する。
額と頭頂部の間辺りが損傷し、脳内で前頭葉の一部が破損していた。
ボクは傷穴に指先を突っ込み、
――ライフル弾だ。
「チ、チクショウ! 狙撃されたのか!? 一体どこから……まさか屋敷からか!?」
ボクは瞬時に判断し、制服のポケットから手足をへし折ったまま生かしていた野鼠を取り出た。
それを口に頬張り体内へと取り込む。
若干だが損傷部が回復し、意識を繋ぐことができた。
ボク達、
食べるのは別に人間である必要はない。
哺乳類でも鳥類や魚類、また虫だろうと生命が宿していたモノであればなんでもいいのだ。
にしても危なかったぞ。
意識があるうちに手を施さなければ、完全に斃されていたじゃないか!?
クソッ! なんてこった!
しかしも屋敷から塀までって……かなりの距離があるぞ!
「
だ、駄目だ……身体を動かすことはできない。
辛うじて命を繋いだが、相当なダメージだ。
『青鬼』に指示して、生きている人間か身体の大きい動物を食らうしか回復する術はない。
クソッタレ! なんて日だ――!
**********
「――殺ったのか?」
僕は
この一ヵ月近い訓練で課題であった880ヤードまで狙い撃つことができるようになった。
一応、ヒットこそしたが、致命傷になったかまではわからない。
だがあの高さ、通常なら間違いなく即死レベルだが……。
「あの姿……笠間 潤輝だったよな? 見た目は間違いなかったけど……でも何か異常だったぞ」
一見してただ塀の上で立っているだけにも思ったが、あまりにも不自然さで思わず撃ってしまった。
奴は高みの見物をしているみたいに不敵に微笑み、ずっと戦況を確認しているように見えた。
まるで
それにあの塀は人間が単独で登れる高さではない。
ましてや悠々と立っていられる場所ではないと思った。
――あからさまに人間離れしている敵、即撃つべきだ。
そう直感し、僕は
あとは、有栖の件もあり許せない気持ちもあったと思う……そこは否定しない。
彼女が涙を流しながら、僕に話してくれた姿が脳裏に浮かんだのもある。
しかし
「――奴は『変種』だったのか? けど知性というか、人間と変わらないようにも見えた。そもそも『笠間 潤輝』本人だったのか……竜史郎さんじゃないけど、今回は特に状況が可笑しいぞ」
僕は思考を巡らせて
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