第100話 白鬼の指令
時系列上、99話の後日談となります。
谷蜂も『黄鬼』として生きている状況です。
~笠間 潤輝side
その日の夜。
ボクが根城とする『笠間病院』にて。
新たな『赤鬼』候補として、二体の『青鬼』を迎え入れていた。
「
ボクは地下にある裏の理事長室でディスクに座っている。
パソコン越しで彼らと向き合いながら面談をおこなっていた。
一階のフロアは激しい戦闘があったのか破壊され散乱して使い物にならかった。
しかも壁や床に弾痕やライフル弾の薬莢がまばらに見られている。
また、あからさまに銃撃され斃された『青鬼』の遺体も転がっていた。
ここ日本だよな? 外国映画さながらの凄惨な状況じゃないか。
人の病院で、一体誰がこんな真似を……。
いや、今はそんなことを言っている場合じゃない。
一階の受付や事務室は使えず電気系統も破壊されて使えない。
したがってエレベーターも使用できない状態だ。
だが地下室は別である。
ここは本来、理事長の父を初めとする数人の部長クラスの医師や関係者しかしらない秘密の場所だ。
電気系統も別であるため、パソコンなど壊れてさえいなければ普通に使える。
ネットも最新情報は更新されないものの、過去の情報などブラウザでググるぐらいならまだ可能だ。
カイル様も自身の研究と目的のために、しばらく『発電所』は残して置かなければならないと話していたしな。
強いて言えば、それらを管理する連中がいなく放置されていることか。
だから新たな世界を創世するためにも、理性や知性のある『赤鬼』は必要不可欠らしい。
はっきり言えば、
ボクは史上初の『赤鬼』であり、仲間を増やすことと育成を任されている。
女帝こと『白鬼』のミクからね……。
彼女にだけは逆らえない。
間違いなく殺されるから。
「ぐるぅ、ぐはぁ! うごぉっ!」
ボクの足元で犬のようにしゃがんでいる潤介こと、『青鬼』の父親が興奮して吠えている。
「うるさいよ、父さん……今、大事な面談中なんだ。大人しくしてくれよ」
父の首に巻かれた首輪につけられた鎖を引っ張る。
『赤鬼』のボクには忠実なので静かになったが、「へっへっへっ」と舌を出して唾液を撒き散らし息が荒く落ち着きがない。
生前の威厳を放ち、医師として栄光を手にしていた実の父親とは思えない。
まるで猛犬だ。
そう躾たのはボクなんだけどね。
ふと、父の視線を辿ると、薄暗闇で捕食中の谷蜂の姿が見える。
そういえば、あいついたっけな。
『黄鬼』になったばかりで激しい空腹に見舞われているようだ。
「なんだ、父さん……谷蜂先生が羨ましいのか? いいよ、分けて貰うがいい」
ボクは鎖を解くと、父さんは「うぉごぉぉ!」と歓喜の声を上げて、食事中の谷蜂のところへと向かっていった。
だが谷蜂は欲深い男だ。
それは
父さんが近づくと、谷蜂は唸り声を上げ跳びかかり馬乗りになって、父さんをボコボコに殴り出した。
谷蜂は『黄鬼』とはいえ、『
他の
それに父さんに対して生前の怨みもあるのだろう。
いくら血塗れにさせようと、これでもかってくらい殴りつけている。
「谷蜂先生、好きにしていいですけど殺さないようほどほどにね」
一応、息子として言ってみる。
内心はどうでもいい。
それよりもだ。
ボクはパソコンで、面談している二人の素性を調べて見る。
天然の『
聖林工業高校をぐぐれば顔写真や記事くらいは載っているだろう。
おっ! これだな……。
「彼氏の方は
しかも主に警察や検問する自衛隊ばかりを相手にしていたらしい。
銃を持った相手に、まともに戦えるなんて相当戦闘力の高い
制服も返り血などでドス黒く汚れているが目立った損傷はない。
つまりほとんど銃弾を受けずに斃しているってことだ。
二人共、現在の捕食数は300人程度か……。
1000人達成までちと少ないが、ボクがフォローすれば二人同時の『赤鬼』誕生も容易いだろう。
「翔太さんに穂花さん……キミ達は運だけでなく実力も兼ね備えている。二人共、よほど相性がいいんだね? 仲睦まじくて羨ましいよ」
特に穂花さんは見栄えが凄くいい。
少し有栖っぽいが、完全に知性を取り戻した姿も見てみたい。
そのまま、ボクが奪っちまうのも悪くない。
いや、駄目だ……『白鬼』が監視している。
あの子がその気なら、遠隔でもボクを殺すこと可能だからな。
クソォッ!
〔――何がクソでしょうか? 潤輝さん〕
「ひぃぃぃい!」
脳内から響く声に、ボクは椅子から転げ落ちた。
〔どうしましたの? 何を怯えているのでしょうか?〕
「い、いや! なんでも……いきなりキミの声が聞こえたから、つい」
〔可笑しな方ですね。突然ですが、廻流様から命じられた指令を与えても宜しいでしょうか?〕
「カイル様から? はい、なんなりと」
〔近日中に西園寺邸に奇襲を仕掛け、屋敷ごと崩壊さしてください。そして屋敷内にいる人間達全員を食い殺すのですわ。
「西園寺邸? カイル様のご実家だね? また、どうして?」
〔……忠実な『
「なるほど、よくわかったよ。けど、ボクは『赤鬼』の育成もあるし、少しばかり時間は掛かるけど、それでもいいかい?」
〔……少しお待ちを〕
ミクは
きっと、廻流に意見を伺っているのだろう。
あのゴスロリの『白鬼』娘は奴に妄信的でありデレデレだからな。
にしても西園寺邸の奇襲に皆殺しか……。
つまり自分が「偽物の廻流」である自分の過去を消したいって腹積もりか?
今更、意味ねぇだろうが……ここまで来て何を恐れているんだ、あの糞眼鏡男め!
ミクさえいなければ、今頃ボクがボコって
「クソ野郎がぁぁぁぁぁ!!!」
〔――潤輝さん、廻流様からご返答を頂きましたわ〕
「はい。なんなりと申しつけください」
ボクは瞬時に感情を切り替えた。
〔急ぐ話ではないので問題ないとのことですの〕
「わかりました。カイル様によろしくとお伝えください」
〔ええ。まぁしかし、お兄様……いえ廻流様のご命令は絶対ですわ。潤輝さんにだらだらと延長されても困りますの。わたくしから期限をつけましょう。一ヵ月でどうでしょうか?〕
「はい、問題ありません。それとミクちゃん……これからボクが誕生させようとする『赤鬼』に訓練として一緒に参加させてもいいかな?」
〔目途があるならお好きにどうぞ。但し、わたくしとて『
「あ、ああ……勿論、十分に理解してるさ、ミクちゃん」
〔では、わたくしはこれで――――潤輝、お前……廻流様に謀反など考えていたら殺すからな!〕
ミクに恫喝されてしまい、完全に
「バ、バレていたのか……やっぱり、あの子だけはガチでヤバイ」
事実上、ボクの命を握っているような鬼娘だ。
到底、逆らえる筈はない。
ボクはチラッと、翔太と穂花の姿を見る。
二人は寄り添い、ぼーっと突っ立ったまま微動だにしない。
『
廻流の命令とミクの命令を両立させるには、この二人を『赤鬼』に進化させる必要がある。
進化条件まで残り700名余り……二人同時だと1400名の人間を食らわせなければならない。
これからは警察や自衛隊だけでなく、各区域に点在し大勢の人間がいそうな
「やってやる……仮に失敗したら、全て『翔太』のせいにすればいい。そうすれば、穂花はボクのモノだし、ミクちゃんにも責められることはない筈だ……ククク」
ある意味、ボクってプラス思考の
転んでもただでは起きないってやつさ――。
──────────────────
次回から新章へ突入します。
弥之チームが中心となるお話です!
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