第63話 混沌の戦況
残酷描写及び暴力描写が多用のため苦手な方は自己回避をお願いします。
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~姫宮 有栖side
手櫛が暴走したせいで災害的な混戦状態へと発展していた。
「た、助けてくれぇぇぇ!」
「やめろぉぉぉ! こっちに来るなよぉぉぉ!」
「痛い、痛い、痛いぁぁああぁぁ! 噛まないでぇぇぇ!」
100体以上に及ぶ
逃げ惑い騒ぎ立てている『反生徒会派』の男子達が一番の標的となっていた。
「ちくしょうぉぉぉっ! こんな筈じゃなかったのによぉぉぉ!! 全部、手櫛のせいだぁぁぁ!!!」
「ハルちゃん! こっちに来るぅ!! 奴らがこっちに来るよぉおぉぉ、うわぁぁぁぁ!!!」
渡辺くんと平塚くんの二人は、各々が手に持つ『
弾丸は数体の
あれじゃ、そのうちすぐに弾切れになるだろう。
いや、彼らに気を取られている場合じゃない――。
「あ゛あ゛あ゛……みどうせ、んせい……」
大熊先生は起き上がり、足元をふらつかせ歩いている。
ついさっき、手櫛の『
「お、大熊……先生?」
そのすぐ近くで
あれから瀕死の重傷者であった大熊先生を見捨てることができず、こうして混戦に巻き込まれてしまった。
私達は囲まれないよう陣を取り
結果、何体か撃ち漏らした者達が、大熊先生に噛みつき感染してしまい、こうして『黄鬼』となり復活を遂げてしまった。
「みどう、せ、んせぇ……だべでもい~い?」
大熊先生は餓鬼としての本能に赴くまま、恋人であった御島先生に迫っている。
「い、嫌ぁ……大熊先生……嫌ぁぁぁぁぁ!!!」
絶望と恐怖により、御島先生はパニック状態となり身動きが取れない。
「先生! 早く離れてください!」
私は右手に握る『
常人よりも身体能力や五感が強化され、自分の身はある程度守れるようになったが、誰かを庇い守るのには限界がある。
ましてや、つい先程まで身動きの取れない重傷者がいたとなれば尚のことだ。
戦闘中に、ふと久遠兄妹の会話が研ぎ澄まされた私の耳に入る。
「……大熊先生の損傷状態じゃ、仮に弥之君の血液を与えて人間に戻れたとしても助かる見込みはないわ」
巧みな刀さばきで斬撃を与える香那恵さんの近くで、兄の竜史郎さんが『
「やむを得ないか……」
竜史郎さんは腰のホルスターから『
「待ってください! 私がやります!」
西園寺会長は切れ長の双眸を赤く染め、まるで重戦車の如く突進し、次々と
そう言えば彼女は空手の有段者だった。
しかもあの身体能力は、私と彩花ちゃんと同じ状態だ。
西園寺会長は射程距離に入り、『
「大熊先生! 今までありがとうございましたぁぁぁ、ハーッハハハァ!」
ダダダダダダ――ッ!
「ぐぶおっ」
放たれた銃弾が無駄なく、大熊先生の頭部に全弾命中し、原形を残さず破壊されて飛び散る。
首なし状態となった大熊先生は、その場でどさっと倒れ伏した。
トリガーハッピーを発症させている割にはブレることのない、西園寺会長の精密な射撃技術だ。
「流石、ハワ親ッ! 超やべーっ!」
彩花ちゃんは改造シャベルを振るい、
高揚状態によるハイテンションと容赦の無さは負けていない。
「大熊先生……」
恋人の無惨な死に、御島先生は放心状態となり、呆然とその場から動けないでいる。
「ひぃぃぃい! み、御島先生、早くこっちに逃げてぇ、早く、早くぅ!」
富樫副会長がしゃがみ込み、必死で先生の腕を掴んで移動させようとしている。
彼の手には事前に竜史郎さんが渡した『
近くにいた西園寺会長も、二人を守る形で『
西園寺会長が持つ、あの銃は連射性に優れている分、対
特に頭部を破壊すれば斃せるという条件下では、一発の弾丸で十分だからだ。
あくまで拳銃を主体とする私個人の見解だけど……。
西園寺会長は打撃戦に切り替え、縦横無尽に
その身体強化された拳撃と蹴撃は、ハンマーの如く的確に頭部を破壊していった。
私も遠くから左手に持つ『
「うわぁぁぁ、もう駄目だぁ!」
富樫副会長が絶叫する。
刹那。
血飛沫は富樫副会長と御島先生の頭上に降り注ぎ、二人を深紅に染め上げていく。
「――これでお前らは『
竜史郎さんだ。
順手で握られたカラビットナイフで、
彼自身も血塗れになっていることから、自分の匂いを消して物音を立てず至近距離まで移動したと思われる。
特に『青鬼』の
富樫副会長は黙って頷き、御島先生に寄り添い彼女の口元をそっと押さえた。
喪失感のあまり、泣き声を漏らさないための配慮である。
「オ~ッマイゴッド! まさに地獄の亡者、傑作ですね~!! ヒャッハー!!!」
この騒動の主犯者である、手越は奇声を発しながら
一番露出が高い格好にもかかわらず、何故か
「手櫛先生ぃ! どうして俺達に銃を向けるんだよ――ぶほっ!」
手櫛は
「キミ達が無能だからですよ! 現に噛まれているじゃありませんか? 人間であるうちに殺してあげるんです! 感謝してくださいねぇ、オッホー!」
どうやら噛まれた生徒を中心に
おかげで『反生徒会派』の男子達は、尚のこと恐慌してパニックを起こした。
そのことで、より『青鬼』に狙われやすく襲われやすい状況を作り出している。
ダァン!
「ぐっ!?」
発砲音と共に、手櫛は顔を顰める。
弾道が頬にかすめたのか、薄っすらと横状に線を帯び、そこから血が流れていた。
「手櫛、テメェ! いい加減にしろよ!」
竜史郎さんが
手越の常軌を逸した凶行に見るに見兼ねて撃ったようだ。
いつも
おそらく初めて見る姿だと思った。
「……黒づくめか? よくも、この私の美しく端整な顔に傷をつけてくれましたね……虫けら如きがよくも! よくもぉぉぉぉ!! 殺す、殺す、ぶっ殺すぅぅぅ!!!」
「黙れぇ、クズ野郎が! テメェだけは許さねぇ!! ここで俺が始末する!!!」
混沌とした戦況の下、二人の男性が凄烈に対峙した。
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