第496話 分 離
「リズ、話がある」
俺は、あらたまってリズを別室に呼んだ。
もう、さすがに限界だ、玲子君への想いを、俺は止める事なんて出来ない。
だから、はっきりさせないといけない。
まもなく、俺と玲子君が初めて出会ってから、100年になる。
その間も、俺たちは「シンマン」との闘いを継続し続け、現在に至る。
このまま行けば、美鈴玲子は時空間管理局へ入局し、あのオペレーションに投入される、俺と玲子君は、出会ってしまうんだ。
「リズ、俺は、やはり玲子君を諦める事が出来ない、、、、こんな姿になってはいても、俺は、、、、」
「はい、だから、それでいいと思いますよ」
「、、、え?」
「だって、好きなんですよね、無理に嫌いになんてなる必要、ないじゃないですか」
相変わらず、リズはこの方面の話に無頓着に思えた。
どうして俺が別の女性の話をしても、平気なんだろう、、、、、リズは俺の事を、実は愛していないとか、、、
「いやですよ、愛しています、心から!、それは私にとって普遍的なものです。でも、私を嫌いになったんじゃないんですよね」
「もちろんだ、君たちの事を愛している、シズもリサも、大切な存在だ、、、そして玲子君も」
噛み合っていない、俺は複数の女性の話をしている、正直、最低な話だと思う。
ところが、リズは俺の予想もしない言葉を発した。
「では、美鈴を好きな雄介様を、分離させればいいじゃないですか」
、、、、はい?、
え、、、なに、それ。
どういう事?
「ですから、今の雄介様というのは、私を好きな雄介様、美鈴を好きな雄介様、その他大勢の雄介様が一人の人格を構成しているだけなんですから、その中の一つを分離させて、もう一つ雄介様を作ってしまえばいいいのです」
、、、はー?、なに言ってるんだ、そんな事、、出来る訳、、、、あれ?
無くもないな、たしかに今の俺たちのレベルは、多重人格で一人を構成している理論は確立されたものだし、、、、でも、そんな前例、聞いたことないぞ。
第一、複数の自分が別々に行動するって、どうなんだ?、それこそ銀河連邦に問い合わせが必要なレベルなんじゃないか?
銀河連邦は、今現在の文明だけの集まりではない。
過去に栄え、物質文明としては滅んだが、意識体としては継続している文明まで含まれる。
リズは、GMとして同期した時、自分の「個体」を保有している、この広大な宇宙空間には、それと同じ「ブラックキューブ」が多数存在する。
このブラックキューブ、メソポタミア文明の「ギルガメッシュ叙事詩」に出てくる方舟と同じものらしい。
考えてみれば、物質文明が滅んだ後、誰かが電脳世界の母体となる「コンピューター」を管理しなければならない。
その、膨大なデータを維持するために、宇宙をコピーすると一辺が60mのブラックキューブになるんだとか。
その一つ一つの中に、この宇宙と同じ「宇宙」が再現されているのだそうだ。
この宇宙は、そんな宇宙のコピー品で溢れているが、GMという「創造主」だけは、完全同期し、一つの概念に到達する、、、、リズって凄いんだな。
この地球上でも、既に多くの文明がそのレベルに達しては、物質文明を滅ぼしている、、、と言うより、物質文明の必要性が無くなってゆくのだ、文明の軸足を、電脳世界にシフトするのだから。
でも、物質文明が滅んだ後、コンピューターであるブラックキューブは、一体誰が維持管理しているんだろう、と思っていたのだが、、、、
そう言えば、いたよな、それを管理する人が、、、人なのかもよく解らないけど。
古代遺跡に、やたら高度な技術が用いられている遺跡が多いのは、そう言うことなんだとか。
それならば、大昔に消えた文明の先輩方に、こんな前例があるか、聞いちゃえばいいんじゃないか?、人格を分離させても、大丈夫なのかどうか。
「その心配はありません、GFとGMは、別格ですから、それは可能です」
、、、もう、相変わらず神出鬼没なんだよ、、、、管理人は!。
今の今まで、管理人の事を考えていたから、本当にびっくりだよ!。
「って、事は、俺はもう一人、別に分離出来るってことか?」
「もちろんです、一人と言わず、いくらでも」
ああ、なんだか頭がおかしくなりそうだ、、、、これは酷いな。
だが、それならば、、、とは言ったものの、今のこの姿を、玲子君に見せる訳には行かない、こんな姿、彼女も傷付く。
ところが、それはリズから意外な方法を提案されたのだった。
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