第463話 2/3の権限

「今回、議会の緊急招集を依頼したのは私だ、今、私たちレジスタンスは、敵FBと交戦中だ、だが、決定的に権限が足りない、1/3の権限では、彼らに勝てないだろう、どうか、この意見だけは聞き入れてほしい、、、妙円寺博士を「C」に推薦する」


 議会としては、意外な事のようだった。

 それならば、ほかにも候補が居るのでは?、と言った雰囲気がこちらまで流れてくる。

 そして、議長が俺に質問した。


「F、貴方はどうしてDr.妙円寺を推薦するのですか?、今だけ必用だから、という理由では、議会は納得しかねますが」


「いや、それは大きく異なる、まず、妙円寺博士と私は長いつきあいだから解るが、典型的な研究者で、政治にも軍事にも興味がない、それ故に、市民代表として「C」としての判断を誤らない、もう一つ、今現在で脳の完全スキャンに成功している現代人は、私と妙円寺博士の二人だけだ」


 すると、議員の多くは怪訝な表情となった、それは、リサの意志が伝わった後であっても、現代人の概念が伝わりにくいのだ、、つまり、ここに未来人がいる、という事実が理解出来ないのだ。


「F、私たちは、この世界で脳の完全スキャンに成功した人物が合計5名居て、内1名が行方不明、1名が反乱を起こしたリチャード・シンであると聞いていますが、、、木下氏、、貴方は?」


「はい、、、お気づきだと思いますが、私と吉井氏は、、、未来人です」


 この議会は、全世界に公開されているものだ。

 公の議会で、恐らくは初めて未来人の存在が認知された瞬間だろう。

 そして、未来人の存在は、同時に人類が将来「タイムマシン」を手に入れるという事実も。


「F、以前から噂にもなっていましたし、今回、世界中の人々がリサ様からの意志を受け取りました、その中に、私たちでは理解不能な事柄が多くあります、、、まず、タイムトラベルを、私たちは理解出来ないのです、時間を超越してしまえば、タイムパラドクスが起こります、少しでも過去に戻ってしまえば、未来は変化してしまいます、そんな事が本当に可能なのですか?」


「ああ、その話は、君たちが納得の行く理論を後日しっかり説明したい、しかし、時間が無いんだ、こうしている間にも、事態は動いている、急がないとならない」


 議場は少し困り果ててしまった、何しろ議論のしようがないのだ、全く未知の概念に触れたのだから。

 そこで、ハンス・ロンメル議員が助け船を出してくれた。


「議長、私はFの意見に賛成です、少なくとも、現在稼働中のFBが人類を脅かしている以上、私たちはFに全権をゆだね、事態の解決に勤めるべきです」


 しかし、異論も噴出した。

 なぜなら、今起こっている事態に対応するために2/3の権限が我々側に移ってしまえば、先のリチャード・シンが起こした管理者権限を悪用されかねない。

 その恐怖が、議会にブレーキをかけてしまうのである。

 

 おい、これじゃあ話が進まないじゃないか、こうしている間にも、俺の子供達は、必死に戦ってくれているんだぞ!

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