第461話 シビリアン「C」

 キル・ザ・ドールが恐ろしい犯罪集団であることは理解している。 

 しかし、創造主であるリサこと、GMの権限を越えて、AIをコントロールする事ができる犯罪組織なんて、本当に存在するんだと、俺は半ばあきれ顔だった。


「本当にそう思います、どの階層でも、必ず発生する奴らは、この世界のエラーのような存在です」


 管理人が困り果てている。

 なるほど、これはエラーサイトで管理人と俺たちが共闘したのも頷ける。

 

「お父さん、どうやら私たちは、急いでFB・ハーネスに戻った方が良さそうですよ」


 テレビには、激しく蹂躙する敵FB・ハーネスの姿が映し出されていた。

 

「妙円寺博士、新世界会議の緊急招集は出来ると思うか?」


「そうですね、権限としてではなく、意見として挙げれば皆応じるでしょう、この状況ですから」


「お父さん、今は議論の時ではありません、一体何を話し合おうと言うのです」


 珍しくアルファが語尾を強めて意見する。

 子供が虐殺されたことが、よほど響いているようだ。

 

「違う、このまま敵と戦う事は出来るが、物事の本質にメスが入っていない、この戦いに勝利するには、もう一つ、別の方法が必用となるだろう」


 そうだ、それは同時に行われるべき事項だ。

 

「みんな、聞いてくれ、これから俺たちはFB・ハーネスに乗り込み、再びキル・ザ・ドールと戦闘を展開する、本作戦を第1作戦とし、妙円寺博士と木下君による議会の説得組を第2作戦と呼称する」


「GF、、、第2作戦の内容は?、私は一体、、何をすれば良いのですか?」


「大丈夫、戦闘中でも、俺が議会に参加する、君を、妙円寺博士をシビリアン「C」として推薦し、権限の2/3を掌握する」


 それを聞いていた一同が、一斉に声を挙げた。


「なるほど、それは素晴らしい案です、私たちは賛成です、妙円寺博士、受けてくれますね?」


 アルファが、それはもう喜んでいた。

 誰だか解らない人物に「C」を任せるより、妙円寺博士に任せたいという気持ちはみんなの中にあったようだ。


「私が「C」?、、、、私がですか?、私はただの研究者で、政治の事はさっぱりですし、そんな大役」


「いや、だからなんだ、貴方は「G」には向いていない、むしろ市民の意見の代表として「C」になってほしいと思っている、大丈夫、貴方ならしっかり務まるよ」


「そうです、電脳化した人類は5人、その内未来人が3人、この時代の純粋な人類で、脳の完全スキャンに成功したのは、GFを除けば妙円寺博士しかいません、我々では、ダメなんです」


 そうだな、少なくともこの事業は、未来人の脳ではダメだと思う、それは未来人の介入になってしまうからな。

 妙円寺博士は、それでも渋々了承してくれた。

 こんな大役、申し訳ない気がするが、脳の完全スキャンが禁止となった現在、もはや妙円寺博士しか任せる事が出来ない。

 それでも、俺は妙円寺博士こそ、真に「C」に適した人物だと考えていた、それは贔屓目無しに。


「それでは各員、配置に付け!」


 そして再び、彼らは戦いに赴いたのだった。

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