第455話 女神様

 ああ、またこの光景だ。


 ん?、また?


 どうしてだ?、俺は意識がある。

 死ぬと人間は、無に帰るのだと思っていた。

 本当に、あの世って、あるんだな。


 意識は案外はっきりしている。

 俺は死んだ、、、、それは確実に。


 その証拠に、俺の今の姿は、機械人間でも、電脳体でもない、、、懐かしい、生身だった頃の俺。


 こんなだったっけ、生身の俺。


 もう少し、背が高くて、ハンサムだったような。


 俺は、死んでも俺であることに、少し可笑しくなって笑った。

 結局、GFとは、何だったのだろう。


 俺は、人類を救済することなく、死んでしまったではないか。


 なんだか、玲子君に悪い事をしたな、俺なんて、GFって呼ばれて偉い立場なんかにはなれなかった。

 残念だが、これが実際だな。


 さて、ここがあの世だとしたら、まずは地獄か天国か、ってやつかな?、、、シズは、、、、来てくれていないのか?


 死んだ後の唯一の楽しみだったのに、、な。

 そんな、ヒドいよ、、、シズ。

 やっぱり、もう会えないのか?


 玲子君は生まれてもいないから、流石にここにはいないけどさ、シズー、お前はこっち側だろ?、(どっち側?)


 しかし、こうして意識体だけになると、周りが真っ白って、ちょっと単純じゃないか?。

 もっとも、真っ暗だったら、すげー怖いけどな、、、、俺も戦場で、随分敵をやってきたからな、天国とは限らんが、、、、でも、俺は自分の為に生きてきた訳じゃないぞ!、、、、、まあ、そこんとこ、ご配慮、よろしくお願いしますね、、、なんてな。


 にしても、俺のイメージだと、死ぬと最初に川を渡ったり、先祖が迎えに来たりとかって聞くけど、そんな事は無いんだな、お袋も、来てないし。


「そんな事はありませんよ」


 うわ!!、ちょっ、、びっくりしたなあ、心臓止まるかと思ったよ。

 、、、、もうだいぶ前に止まったんだったな。


 、、、え?、、で、誰?


 すると、俺の前には、光り輝く女性のシルエットが現れた。

 いやあ、本当に現れたよ、、、、女神様が。


「これは、女神様、お初にお目にかかります」


 なに言ってんだ、俺は、、、いや、だってさ、俺だって死んだの初めてだからさ、マナーとか言葉とか、解らないじゃん!

 すると、その光り輝く女神様は、クスクスと笑い出した。


「あのー、何かおかしなことでも?」


「イヤですよ、解りませんか?」


 いや、だから、何?、わかる訳無いでしょ、初めて死んだんだから。


「私です、、、、」


 そう言うと、女神様は、自身の光量を下げてくれた、、、なんだか照明器具みたいだな、調光コントローラーみたいなものが、あったりしてな(笑)。


 どれ、噂の女神様とやらを拝ませてもらうか、なんでも相当の美人と聞く、女神様ってくらいだから、西洋の金髪美人なのかな、、、まさか、自由の女神みたいに薄緑色じゃあないよな、、、嫌だぞ、そのまんまだったら。


 ようやく光量が落ち着いて、俺の視界に入ってきたのは、、、、


「リサ?、、、、おいおい、女神様っていうから、金髪美女かと思うジャン」


 よりによって、死んでもリサを出してくるなんて、俺は随分と未練がましいんだな。


「まあ、失礼しちゃいますね、、、、私、頑張ったんですよ」


 おい、、、、ここに、リサが居るということは、、、、まさか、君も死んだのか?

 俺がどんな思いで君を守ったか、AIの未来のために犠牲になったつもりだったが、、、そうか、すまなかったな、君を守れなかった。

 そう思っていると、目の前のリサは、今まで見せたことの無いような、切ない表情になったかと思うと、俺に抱きついてきた。


「違うんです、、、」


 すると、それまで眩しくて明るいだけだと思っていた空間に、俺の子供達や妙円寺博士、木下君、吉井君、みんな勢ぞろいだった、そして後方には巨大な黒い立方体のようなものが。


「みんな、無事なのか?、あの戦いで?、誰も傷ついていないのか?」


 いや、そんな訳無いだろ、、、、敵は2000体は居たはず、無傷で全員が帰還出来るはずない。

 

 そうか、リサは気を使って、嘘を付いてくれて居るんだな、、、、相変わらず優しいな、君は。

 それにしても、全員死亡したなんて、、、、俺は本当に無能な指揮官だな、、、もう、本当にイヤになるよ。

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