第373話 そのお子様は?

「マキュウェル様、、、、、そのお子様は?」


 美鈴玲子が、久々に王宮に上がり、一番最初に驚いたのは、マキュウェルの手に抱かれた子供であった。

 まさか、、、マキュウェルの実子であるはずがない、しかし、、、、それはどう切り出せばよいか。


「マキュウェル様、お久しゅうございます、お元気そうで、、、」


 マキュウェルは、この久々の再会に、心からの喜びを笑顔で表現していた。

 

「すまないな、夫も一緒であれば、嬉しい再会となるところだが、私は一時帰国しての出産であったため、エニオガーノエガ国王とは少し離れて暮らしておるのだ、まあ、間もなくこちらに到着する予定だがな」


 やはり、この子はマキュウェルの子供、、、この世界では十月十日を待たずして、出産できるのだろうか、ミスズはそんな事を考えながら、、、それを否定した。


 そして、それは同席した一同が、同じ驚きを隠せないでいた、、、特にムスキは。

 大親友の出産、それを祝福する以前に、この事実が呑み込めないでいた。


 

 、、、、、時間がズレている。



 それは、ミスズにとっても大誤算であった。

 どうしてそれに気が付かなかったのだろう。

 確かに言われてみれば、皇帝エレーナも大分大人びた印象になっていたことに気付く。

 エド・キニーレイ少佐の妹は、初対面であったため、その変化にも気付かなかった。

 この世界、ドットスの今現在とは、自分たちがここを去ってから既に1年以上が経過した世界であった。

 どうりて、復興が早いわけであった。

 ましてや混乱の最中にあるであろうオルコ帝国を置いて、現皇帝がドットスへお忍びで来るだど、よく考えてみれば時間軸がおかしい事は想像出来たはずであるが、自分たちが戦後の横須賀で過ごした時間と、同じだけしか経過していないというバイアスは、当然と言えることだろう。

 しかし、どうしても不明であったのは、何故管理人がこのエラーサイトへ自分たちを飛ばした際に、わざわざ1年以上も経過した現時点を選択したのか、という部分であった。


 そして、美鈴玲子の中に、奇妙で不気味な符号が一致してしまう、それは、現世の崩壊が影響しない時間軸まで余裕をもって飛ばした、という事。

 それは、万が一現世が崩壊した場合、このエラーサイトにも少なからぬ影響があるためである。


 せかっくの再会であったが、美鈴玲子の表情は曇り、蒼白の表情となっていることにマキュウェルは気付いていた。


「、、、ムスキ、ちょっと来て」


 マキュウェルは、親友であるムスキを呼び寄せた。

 ムスキは開口一番に、マキュウェルの出産に祝意を表したが、当のマキュウェルは、そんな事、どうでもよいと言わんばかりに言葉を遮った。


「ムスキ、、、、正直なところ、ユウスケは、、、、どうでしょう?」


 マキュウェルにとっても、ユウスケは恩人である以上に友人であり、かつての想い人である、その安否は、美鈴玲子同様に心配である。

 それ故に、ユウスケがどのような仕組みの、どのような世界で、一体何があったのかを、正確に聞く必要がある。


 食事も喉を通らないだろうが、ここは懐かしい5人で夕食でもとりながら、詳細を聞こうと提案したのであった。

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