第372話 緊急参集

 ドットス君主であるマッシュ国王は、突然の皇帝エレーナによる提案に驚きを隠せないでいた。

 

「全軍を挙げて、、、ですか?皇帝陛下」


「ええ、全軍を挙げてです、これは旧3国同盟軍による大規模演習という形式で執り行います、どうかご賛同を」


 さすがのマッシュ国王も、この申し出には驚きを隠せないでいた。

 動乱からようやく各国は落ち着きを取り戻し、当のオルコ帝国は今現在も復興の最中であった。

 会話の中にあった3国同盟も、今や五国同盟として新たな枠組みへと進化しつつあった、それはアッガ・ウクルキによる新たな国家「ハイハープ公国」の新規加盟によるものである。


 「事情は解りました、ユウスケ殿の安否が不明であり、あの共和国動乱の首謀者「エムディ」討伐を目的とした大演習、、、でよろしいのですね」


「ええ、結果は解りませんが、、、、ユウスケがあくまでも生存している、異世界が崩壊の危機を脱したという前提ですが」


「そのような浮動状態でも、準備をされるのですか?、ユウスケ殿の安否不明なこの状態で?」


「安否不明だからこそ、なのです、聞けば、ユウスケは、一人で異世界の崩壊を賭けた勝負に出たということです、、、彼らしい勇敢な判断です、我が国の恩人でもあるユウスケに、私達が何かしてあげられることって、他に何かございまして?、国王陛下」


 確かに、遠い異世界の話、自分たちで出来る事は、軍を動かし、万全の態勢を整えておくより他ない。


「で、それはいつ頃まで実施されますか?」


「そうですね、、、ミスズレディーの話では、異世界が崩壊していれば、それほど長い期間を待たずして、結論が出る、とのことでしたが、、、」


 マッシュ国王は、最初、それは何を意味しているかが解らないでいたが、やがて、それを理解した、つまり、崩壊した世界からは、何らリアクションが起こらない、つまり、異世界からこちらに戻った4名に、何も起こらなければ、それはあちらの世界、異世界が崩壊したことを意味する。


「しかし、超科学を持つあちらの世界が、大挙して押し寄せたとして、我々で対処できるでしょうか?」


「ですからです、、、、全軍を挙げて準備するのですわ」


 マッシュ国王は、皇帝エレーナが、やはり心優しい少女であると感じていた。

 それは、ミスズレディー達4人がこの世界に来てから、既に4日が経過していたからだ。

 あちらの世界が崩壊していなければ、何らかのアクションが即時起こる事だろう、何しろ時間と空間を自由に移動できるのだから、このタイムラグは不可解以外の何物でもなかった。

 、、、考えたくはないが、それはあちらの世界、つまり異世界が崩壊している証拠と有り得るのだ。


「わかりました皇帝陛下、ドットスは全力を挙げて帝国と行動を共にします、我が国から、この5国同盟軍に優秀な軍師を派遣します、よろしいですな」


「まあ、ベナル大将を?、それは有り難いですわ、久しぶりの同盟軍になりますわね」


 皇帝エレーナは、交渉のテーブルに着いて、初めて少女らしい笑顔になった。


 ベナル・アイラベル王立軍大将


 先の戦いで、エレーナ軍の総司令官を務め、戦勝に導いた功績により、大将へと昇進、いよいよ元帥の椅子も射程に入って来たと、専らの噂である。

 ベナルは、「軍師長府」を新設させ、ここに旧3国同盟の維持を目的とした連絡所を開設し、あの戦いで得た強力な軍事力を維持向上させようと考えていた。

 その矢先の、エレーナ皇女の申し出であり、これはベナルにとっても、非常に有り難い申し出となったのである。


「では、早速、かのメンバーを集めねばなりませんな」


 そう言うマッシュ国王の表情は、少し笑を堪えているように見えた。

 それは嬉しさと言った方が良いかもしれない。


 こうして、ドットス王国には、フキアエズ国王、エフライム公王、ハイハープ公王、、そしてオルコ皇帝の5人が一同に会することとなる。

 そこには、もちろん、独立した軍として挙兵した、現フキアエズ王妃、マキュウェルも参集範囲であった。

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