第374話 語りたくない部分
ムスキは、マキュウェルに、事の詳細を語り始めた。
それは、この世界を旅立った時点から、横須賀という地域の事、この世界の何倍もの兵力をぶつけ合う世界大戦という概念を。
更には、爆発物を抱えて、自ら体当たり攻撃を仕掛け、自爆する戦い方など、ムスキとしても思い出したくないトラウマな戦いの世界、それが異世界であると。
そんな異世界にあって、ユウスケは果敢に挑んで行き、遂にエムディを追い詰めるが、その正体はミスズの仲間の一人であった事、、、そして、ユウスケが世界の崩壊を覚悟して、エムディとの一騎打ちに臨んだこと、、、など。
「では、ユウスケは、、、、いや、異世界自体が崩壊している可能性があると言う事か?」
「はい、、、時間の異なる世界の者同士が殺し合うと、世界は崩壊してしまうのだそうです、私達異世界人が殺人を犯しても、それは崩壊には繋がりませんが、ユウスケの場合は未来人でも過去人でもありません、私達と世界は別ですが、同世代の人間なんです」
時間と空間、そして異世界と現世の関係が、今一つ呑み込めないマキュウェルであったが、ユウスケが勇敢に戦い、この世界をも救ってくれたという事実だけは理解出来た。
そして、マキュウェルがもう一つ気になっていることがあった。
「ムスキ、あなたが言うタイムマシーンという乗り物があったとして、どうしてこの世界に飛ばされてきた貴方達やミスズを、未来の世界から迎えにはこないのだろうか?、、、、タイムマシーンなんでしょ、時間も世界線も自由に往来できるのであれば、この世界の未来に来るより、貴方達が飛ばされた時間にお迎えが来てもいいんじゃない?」
そして、その一番核心を突いたマキュウェルの言葉に、ムスキは沈黙で答えるしかなかった。
「、、、、、まさか、ユウスケがエムディを殺害したことで、あちらの世界が崩壊してしまったという事?」
それは、ムスキが一番結論として語りたくない部分であった。
多分、その結論はミスズも、他のみんなも同じことを考えながら、恐ろしすぎて口に出せないでいた結論であたった。
異世界人のムスキですら、それを言葉にしたマキュウェルを前に、ただ沈黙し、おかしな汗をかきながら、俯くしかないというのに、当人であるミスズがそれを聞いたならば、恐らくは立っても居られないだろう。
なぜなら、この世界に戻ってきてから救助隊が来てないという事は、即ち、、、そう言う事を示しているのだから。
「ユウスケ、、」と漏らし、ムスキもその場にしゃがみこんでしまった。
マキュウェルは知っている、自分同様、ムスキもユウスケの事が好きなのだ、、いや愛していると言ったレベルで。
自分は既に結婚し家庭を持った身であるため、ユウスケの存在は過去の憧れとして考える事が出来るが、ムスキにとって、ユウスケはほんの1週間程度前まで共に戦ってきた同士であり想い人であるのだから。
マキュウェルは、ドアの隙間からミスズを見る。
その平然を装った陰に、悲壮な感情を隠し持っているのは明白だった。
そんな健気な彼女に対し、何かしてあげる事は無いものかと、必死に考えるマキュウェルであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます