第361話 そして、、、シズ
ここはどこだ?。
いつもの白い部屋、、、、、
俺は、何かとても大切な事を忘れているような気がする。
「どうなさったんですか?、心ここに在らずですよ、旦那様」
シズが、心配そうに俺をのぞき込む。
シズは本当に可愛い。
俺は、こんなに美人で良くできた妻を
「、、、どうした?」
妻が、切ない瞳で俺を見つめる。
そして、そっと抱きつくと、いつもより強い力で抱きしめた。
「旦那様、どうか、今だけ、今だけこうさせてください、、、すぐにいつもの私に戻ります、、、」
泣いている?、どうして?
俺たちは、こんなに幸福な新婚生活を送っているのに。
俺たちの時間は、これから沢山あると言うのに。
「ありがとうございました、しっかり充電できましたよ。」
「なんだよ充電って、スマホじゃないんだから、、、、、、ん?、スマホ?、俺は今、スマホって言ったか?、、、、スマホ、、、何だっけ、スマホって?」
シズは、もうたまらない顔をしながら俺を見つめる。
何だよ、充電、出来てないじゃん。
すると、俺の膝の上にいたシズの姿に、何故か一瞬だけ、デジタルノイズが走った。
デジタルノイズ?、、、、、
どうして妻に、デジタルノイズが?、、、と言うか、デジタルノイズを、どうして俺が知っている?、、、、、
「もう、早いですよ、、、、もう気付いちゃったんですか?」
シズがそう言うと、それまで戦後まもなくの住宅に居た俺たちは、再び真っ白い部屋に居た。
あれ?、、、、シズ、シズだよな、また新婚ごっこに引き込んだな、、、、おい、シズ、、、シズ?、大丈夫なのか?、、!!、お前さっき米軍機の機銃をモロに喰らって、、、おい、シズ?
「GF、、、私、GFの事、本当に愛しています、心から。それは誰にも犯されない事、これだけは真実、、、GF、私も、GFのこと、雄介様って呼んでもいいですか?」
「何言ってるんだ、当たり前じゃないか、シズは、俺の奥さんなんだろ、名前で呼び合うなんて、当たり前の事じゃないか!」
するとシズは目に涙を一杯に溜めて、それはもう、本当に嬉しそうな表情を浮かべた。
「、、、嬉しい!、憧れだったんです、私、雄介様と、、、、二人で新婚生活を送るの、、、、でも、残念です、、、もう、お別れのようです」
「どうしたんだよ、、、、なんだか、もう会えないみたいじゃないか、俺たちの時代では、それって、フラグって言うんだぞ、、、縁起でもない、、、、、おい、シズ、嫌だよ、そんな事、言うなよ!」
涙を振り払うように、シズは満面の笑みで俺に微笑みかけた。
こんなに幸せそうなのに、こんなに切ない笑顔なんて、俺は初めて見た。
そして、俺はこの笑顔を、生涯忘れる事が出来ないとさえ、思った。
「雄介様、、、、私、雄介様の子供、欲しかったな、、、、」
そして、もう一度、一番の笑顔を俺にすると、シズの姿が白く眩しい光の中へ吸い込まれていった。
俺の体には急激に寒さと海水の匂い、戦場の風が俺を甘い夢から覚めさせた。
見上げると、米軍機P-51と空中戦をしているシズの姿があったが、シズの武装は無効化されている。
既に黒い煙を濛々と吹き上げ、機体は炎に包まれた。
「シズ!、おい、シズ!、ダメだ、逃げろ、、、もう何も考えるな、頼む、シズ、とにかく生きてくれ!」
俺がそう叫ぶ中、シズの機体は俺の目の前をゆっくりと横切り、一度大きく上昇して、力尽くように、、、爆発した。
それは、もの凄い爆発だった。
巨大な火柱が吹き上がり、シズを撃墜した米軍機が巻き込まれそうになりながら、機体をかすめて行った。
俺は、一体何が起こっているのかが理解出来なくなっていた。
シズが、、、、死んだ?
AIだよな、シズは。
どこかにバックアップが取ってあって、またひょっこりと「GF、!」って平気な感じで声をかける、、、そうだよな、そうに決まっている。
「、、、、玲子君、シズは、死んでなんかいないよな、彼女は、AIだもんな、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、何で泣くんだよ玲子君!、シズは、、シズは死んでないよな!」
全てを察したムスキが、しゃがみこんで泣いている。
、、、なんだよ、なんなんだよこれは、、、これじゃあ、本当にシズが死んでしまったみたいじゃないか!
俺は、全身から血の気が引いて行くのを感じた。
※ シズ、最後の戦い ↓
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